◆書評01 鵜野日出男の独善的週刊書評への記事リンク100~176

  自分用資料
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 鵜野日出男の独善的週刊書評
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
● リ14書評01 鵜野日出男の独善的週刊書評への記事リンク 題名リスト100~176・176感想  
● リ21書評02 鵜野日出男の独善的週刊書評への記事リンク 題名リスト177~ 
● リ22書評03 鵜野日出男の独善的週刊書評への記事リンク
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 書評を読んでの感想 176

176☆ 「森林の崩壊  国土をめぐる負の連鎖」 白井裕子著(新潮新書680円)の 書評を読んで 

 … この著書の前半は面白い。補助金まみれになっている日本の林業政策に対する厳しい指摘には心から拍手を送りたい。… しかし、建築で日本の木材が使われなくなったのは、建築基準法で伝統的な木造住宅を禁止しているからだと言う説は、大きく事実を歪めている。…



 なぜ、鵜野日出男さんは、この指摘点で、木造の家づくりの昭和の教科書となっていく本をお書かきにならないのだろうか? 
 なんとしても書いていただきたいと思う。

 これまでの30年40年間の木造建築の流れを、ツーバイフォーから見た視点で誰かが歴史の真実を本に書かないと、出版されている本の勉強に頼る学識者の官僚やジャーナリストや教授たちの間違い本や間違い論が続いてしまうと思う。

 もしも、鵜野日出男さんがこの書評にある指摘点で本を書いたとしたなら、
今週の本音を継続して読んでいる工務店や建築士や愛読する一般の人々は、たくさん買って、自分の地元の町とその周辺の町の図書館に寄贈しましょう!
 私はそうします。

 「白井裕子の「国土をめぐる負の連鎖」に反論。 あなたは、日本の木造の家づくりの流れをよく理解していない」 (仮の題名)とかの題で、鵜野日出男さんに書いていただけたらなぁと思います。

 工務店一軒につき10冊は買って、自分のところの社員教育用に、そして図書館寄贈用に、そして縁のある工務店へ、あるいは面識のある市の建築主事や中央官庁の役人に、あるいは大学の関係者や研究所の所員へ、と、家づくり関係で自分に縁のある仕事している人へ贈る本としていくことで、日本の木造の家づくりの正しい知識や情報を知っている人の数を担保できます。

 だって、
早稲田の建築学科を卒業し、
ドイツのバウハウス大学に学び、
早稲田大学の客員准教授をつとめる白井裕子さんが知らないんですよ。
一級建築士でありながら日本の民家建築に対する知識の無さと木質構造に対する理解の乏しさに呆れられてしまう、白井裕子さんであるなら
一般人の理解度は推して知るべし です。

だから、家づくり業界ででも、RC造りならまだしも、外断熱を木造の家への狂信的に叫ぶ人たちがいる始末なのだと思います。
(外断熱の家自体は、温暖地なら悪くないです。問題は、木造の家の特性を無理解で外断熱の家以外はダメだと主張してやまない人たちです。 先進地のドイツや北欧のヨーロッパで、その主張をしてみなさいっていうの。理に適わない異端としてはなにもひっかけられない。)

地盤がゆるかったなら、大きい建物は建ちません。
日本のこれからの木造の家づくりがますます発展し、「21世紀は木造の家の時代だよ」 という杉山先生のお言葉が本当に実るために、啓蒙活動は欠かせないと考えます。
 木造の家づくりで糧を得て生活を営んでいる職業人は、木造の家づくりの業界がさらに発展し続けるように願うだけでなく、したたかにそして、地道に手をうっていかねばならないものと思います。

鵜野先生の木造の家づくりの本が出たら、50冊とか贈るのに使うところもでてくるしょう。
 それでも、たかが5万円6万円です。
一般の読書家の一個人の数ヶ月分程度の書籍代ていどの金額です。

構造用合板を打つときに大工さんが、規定のN釘ではなく、もっと細いNC釘を使って浮かせれるお金が数万円です。数万円を惜しんでウワモノの耐震性の30%ダウンするのはオロカなことです。
それに似て、木造の家づくりへの確かな基礎づくりへの50冊分の5万円を惜しんで、業界の知識や情報の地盤がぬかるんだままにしておくのは、将来の発展や利益をふいにすることです。
木造の家づくりの業界の発展があってこそ、個々の工務店の仕事もますますにぎわうものです。
パイを大きくするには、パイの生地を強い正しい材料にすることからです。
それでこそ、パイの一角をより多く食べる資格があるというものです。

そもそも、工務店さんは、自分のところのHPに、「鵜野日出男の今週の本音」へのリンクがないとし たなら、マズイです。自分の所のHPを見に来ていただいているお客さまが、今週の本音を読むことで、ますます理論武装や情報武装時点で、口コミが強くなりますのに…。
 そういう視野にたって HPの中にリンクを作ることが、ここぞという家づくり業界を発展させる可能性のある良書を多量に買って、図書館に、知人に、顧客に献本していく行動につながります。
 正しい知識が知られていないと、正しい知識で家づくりしていても栄えません。
情報や知識は、田畑の土です。 土壌を肥沃にしてこそ 発展はあると思います。

 早稲田の建築学科を卒業し、ドイツのバウハウス大学に学び、早稲田大学の客員准教授をつとめる筆者のこの著書は、一級建築士でありながら日本の民家建築に対する知識の無さと木質構造に対する理解の乏しさに呆れられてしまう、白井裕子さん。
 であるなら、一般人の理解度は推して知るべし です。

まずは、白井裕子さんが手にとって読める 教科書的な本が必要です。
鵜野日出男さんが、木造の家づくりの昭和の歴史をお書きになることだと思います。
また、その本を工務店の有志でたくさん買って、自分の地元の図書館と、市や県の建築関係のお役人にプレゼントし、顧客に配ることで、正しい知識の土壌をまず作ることからだと思います。
 以下引用

  2009年03月06日(金)
  第176回「森林の崩壊  国土をめぐる負の連鎖」 白井裕子著(新潮新書 680円) 

  2週続けて森林関係の本で、いささか気がひける。
丸の内の丸善で2時間ばかり粘ったが建築関係で面白い本がなく、農業関係1冊と林業関係2冊しか買う気がしなかった。その中で、先週取り上げた「森林と人間」と別の場所で取り上げた「農業が日本を救う」の2冊が飛び抜けて面白かった。
それに比べて、早稲田の建築学科を卒業し、ドイツのバウハウス大学に学び、早稲田大学の客員准教授をつとめる筆者のこの著書は、一級建築士でありながら日本の民家建築に対する知識の無さと木質構造に対する理解の乏しさに呆れてしまった。
無視しようと思ったが、もし故杉山英男先生がご健在であったならこんな間違を黙って許される訳がない。先生に変わって天誅を下す必要があると感じた。その能力も無いくせに…。


この著書の前半は面白い。補助金まみれになっている日本の林業政策に対する厳しい指摘には心から拍手を送りたい。山林に関する公共事業は、造林、林道、治山、砂防で2003年で1兆2000億円。しかし日本の山林675万ヘクタールは251万の山林地主に細分化されており、山が荒れていても所有者の同意がなければ倒木一本たりとも手をつけるわけにはゆかない。
これに対して、オーストリアの森林法では、誰でも他人の森に立ち入って散策し、きのこ狩りをしてよい。木は伐ってはならないが森は皆のものという考え。また2/3が賛同すれば全員の負担で林道事業が出来、斜面が崩壊した場合には、所有面積の比率に応じて復旧費を負担しなければならないという。日本の不在地主の我が儘は絶対に許されないという指摘には大賛同。

しかし、建築で日本の木材が使われなくなったのは、建築基準法で伝統的な木造住宅を禁止しているからだと言う説は、大きく事実を歪めている。
増田彰久氏が「写真な建築」の中でいみじくも指摘したように、建築には「神や仏のための建築」と「人間のための建築」の2つしかない。日本では神社仏閣建築を担当する宮大工を偶像視する考えが今でも横行しているが、杉山先生は権力者のための建築を崇めることが木質構造の本質であってはならないと諫められている。そして、町屋建築にしろ農家建築にしろ、民衆のための民家に用いられてきた伝統工法は「大貫工法」であると喝破されている。
だが、この大貫工法は、1930年のマグネチュード7、震度6の北伊豆地震で4337戸のうち159戸が全壊したという菅氏の調査記録を報告されている。そして、倒壊した原因は小黒柱のほぞ孔部分で小黒柱がおれ、これが大黒柱を折らせて倒壊に到っている。(地震と木造住宅)

震度7、2400ガルという常軌を逸する中越地震の震源地・川口町で、太いケヤキで造られていたセイガイ建築という名の大貫工法の民家住宅が倒壊している現場を何ヶ所か見た。大貫工法だけでなく、筋違い入りの木軸工法は、田麦町などでは90%が倒壊していた。その中にあって、構造用合板で耐震補強をしたスーパーウォール13棟は、1棟も倒壊していなかった。それよりも被害が微少で済んだのがツーバィフォー工法。これは、阪神淡路地震の折の住宅金融公庫の調査や各種研究機関の調査でも明らかにされている。

戦後、建設省や建築学会は軽量鉄骨造に加担し、木質構造の研究から手を引いた。その時、孤塁を守ったのが杉山先生。その杉山先生が、日本の木質構造を科学するために北米のツーバィフォー工法導入に大変な努力を注いでいただいた。それまでの羽子板ボルトと筋違いによる木軸工法は大工の経験と勘に頼っていた。それを、徹底的に科学して木材の樹種や節などによってグレーデングし、スパン表で横架材のスパンが誰にでも分かるようにし、日本の木質構造の耐震性を飛躍的にアップしていただいた。今日、木軸工法が耐震性だけではなく、防火性、耐久性で格段の進歩をみせたのは、ツーバィフォー工法をヒントに大改善されたからである。
そういった身近な木質構造の歴史も知らずしての空論は、ナンセンス以外の何物でもない。




 工事中



 記事の題名リスト 1~176

176 「森林の崩壊  国土をめぐる負の連鎖」 白井裕子著(新潮新書680円)

175 「森林と人間  ある都市近郊林の物語」 石城謙吉著(岩波新書700円)

174 「医学のたまご」                海堂 尊著(理論社1300円)

173 「霞が関の逆襲」         江田憲司・高橋洋一著(講談社1500円)

172 「一食一会 フードマインドをたずねて」   向笠千恵子著 (小学館新書740円)

171 「数字でみるニッポンの医療」 読売新聞医療情報部著(現代新書720円)

170 「大丈夫だよ、がんばろう!」         山田邦子著(主婦と生活社1200円)

169 「勃発! エネルギー資源争奪戦」     ダイヤモンド社・編 (1600円)

168 「この街は、なぜ元気なのか?」       桐山秀樹著(かんき出版1500円)

  「北の湘南」というイメージで、伊達市はすっかり名物都市になってしまった。
島田晴雄氏やNTTデータの著書で、すでに伊達市で何が行われたかを知っている人も多いと思う。私もほとんど知っているつもりになっていた。しかし、この本を読んで、改めて知らされたことが多かった。




167 「自然な建築」  隈 研吾著 (岩波新書 700円)

166 三輪太郎著「政事小説 マリアの選挙」(徳間書店 1700円+税)

165 佐伯剛正著「日本で最も美しい村」(岩波書店 2200円+税)

164 増井光子著 「動物の赤ちゃんは、なぜかわいい」(集英社 1600円+税)

163 楡周平著 「プラチナタウン」(詳伝社 1800円+税)

162 玉村豊男著「里山ビジネス」(集英社新書680円+税)

161 平野虎丸著「日本政府の森林偽装」(中央公論事業出版 1300円+税)

160 蓮見太郎著「たった一人の大きな力」(宝島社 848円+税)

159 尾崎 零著 「自立農力」(家の光協会 1400円+税)

158 JAMSTEC Blue Earth編集委員会編 「海から見た地球温暖化」(光文社 1600円+税)

157 大野明子著、宮崎雅子写真 「いのちを産む」(学習研究社 2600円+税)

156 NHK取材班&佐々木とく子「愛なき國・介護の人材が逃げていく」(阪急コミュニケーションズ1500円+税)

155 森美智代著「たべること、やめました」(マキノ出版 1300円+税)

154 東大デザイン研究室編「建築家は住宅で何を考えているのか」(PHP新書 1400+税)

153 米山公啓著 「医療格差の時代」(ちくま新書 680円+税)

152 武田邦彦著 「偽善エコロジー」(幻冬舎新書 740円+税)

151 奥野修司著「花粉症は環境問題である」(文春新書 710+税)

150 中野雅至著「公務員クビ!論」(朝日新書 740円+税)

149 服部真澄著「ポジ・スパイラル」(光文社 1700円+税)

148 河岸宏和著 「食の安全はどこまで信用できるのか」(アスキー新書 724円+税)

147 鈴木伸子著 「TOKYO建築50の謎」(中公新書ラクレ 740円+税)

146 大高未貴著「アフリカに緑の革命を! ニッポンNPO戦記」(徳間書店 1500円+税)

145 増田彰久著 「写真な建築」(白揚社 2200円+税)

144 黒木 要著「床屋も間違える驚異の毛髪術」(日東書院 1200円+税)

143 内澤旬子著 「世界屠畜紀行」(解放出版 2200円+税)

142 対談 山中伸弥・畑中正一「ips細胞ができた!」(集英社 1100円+税)

141 魚柄仁之助著「冷蔵庫で食品を腐らせない日本人」(大和書房 1400円+税)

140 大泰司紀之・本間浩昭著「知床・北方四島 流氷が育む自然遺産」(岩波新書 1000円+税)

139 椎名 玲著 「中国危険産物取り扱い読本」(ベストセラーズ 1300円+税)

138 山下惣一著  「直売所だより」(創森社 1600円+税)

137 樋渡啓祐著 「力強い地方づくりのための、あえて力弱い戦略論」(ベネッセ 1200円+税)

136 中山茂大著「脱・偽装食品紀行」(平凡社ペーパーバックス 1000円)

135 小松沢陽一著「ゆうばり映画祭物語」(平凡社 1600円+税)

134 林 壮一著「アメリカの下層教育現場」(光文社新書 740円+税)

133 山本孝史著 「救えるいのちのために 日本のがん医療への提言」(朝日新聞社 1400円+税)

132 岩井三四二著 「南大門の墨壺」(講談社 1700円+税)

131 永田 宏著「貧乏人は医者にかかるな!」(集英社新書 660円+税)

130 甲地由美恵著「聴こえなくても私は負けない」(角川書店 1400円+税)

   2008年04月11日(金)
129 ビーパル地域活性研究所著「葉っぱで2億円稼ぐおばあちゃんたち」(小学館 1200円+税)

128 村沢義久著 「手にとるように地球温暖化がわかる本」(かんき出版 1400円+税)

127 星野 希著 「大学2年で社長になるということ」(ダイヤモンド社 1300円+税)

126 加藤登紀子著「土にいのちの花咲かそ」(サンマーク出版 1500+税)

125 石川結貴著「モンスター マザー」(光文社1300円+税)

124 瀬戸山 玄著「丹精で繁盛」(筑摩新書 720円+税) 2008年03月07日(金)
  
123 湯浅次郎著 「新薬、ください!」(新潮社 1400円+税)

122 月刊ベルダ編集部著 「コンビニ 不都合な真実」(KKベストブック 1500円+税)

121 三田村蕗子著「お届けにあがりました!」(ポプラ社 1300+税)

   2008年02月08日(金)
120 猪瀬直樹著「東京からはじめよう」(ダイヤモンド社 1500円+税)

119 陳 惠運著「中国食材調査」(飛鳥新社 1300円+税)

118 安保 徹著「まじめをやめれば病気にならない」(PHP新書 720円+税)

117 石川勝敏著 「コンビニでは、なぜ8月におでんを売りはじめたのか」(扶桑社新書 680円+税)

116 溝上憲文著 「日本一の村を超優良会社に変えた男」(講談社 1500円+税)

115 小宮山 宏著 「課題先進国 日本」(中央公論新社 1600円+税) 2008年01月04日(金)

114 中野有紀子著「ナース裏物語 白衣の天使たちの素顔」(バジリコ社 1200円+税)

113 丸谷金保著「赤字で町はつぶれない  頑張ろう 地域社会」(現代企画室 1524円+税)

112 鎌田由美子他著「ecute(エキュート)物語  私たちのエキナカプロジェクト」(かんき出版 1400円+税)

111 赤祖父俊一著 「北極圏のサイエンス」(誠文堂新光社 1800円+税) 

 木造に関係している人間として絶対に許し難い発言がある。
「アラスカには樹齢200年から300年の老齢化した黒杉が多い。CO2を吸収しない樹齢数百年の森林は何の役にも立たない。落雷による森林火災で焼けた方がいい。そこに新しい草が生え、動物が集まり、10年たつと白樺が生え、100年後には黒杉の森になる」
アラスカで40年も学者をやっていて「黒杉」とは情けない。アラスカの東南部では6割が米ツガで、のこりが米トウヒ。これが温暖化による木喰い虫の大発生で、貴重な資源が損なわれていることすらご存じない。



110 応用地質(株)著 「それでもピサの斜塔は倒れない」(幻冬舎 1300円+税)  

    日本列島は4つのプレートが交差するとところに位置しているということは知っている。
…このように4つのプレートが絡み合い、複雑な動きを見せている地域は、地球上には日本以外にはない。極めて珍しい例で、このため世界で発生する震度6以上の地震の1割が日本で発生しているという。日本列島は大陸から分かれて出来、それに南の島がくっついたり、海底の堆積物が隆起したり、火山による噴火があったり、地震で断層が出来たりして、日本列島の地盤は世界に類のないほど複雑だといわれている。



109 畑川剛毅著 「線路にバスを走らせろ 北の車両屋奮闘記」(朝日新書 724円+税)

108 末広美津代著「泣いて笑ってスリランカ  体当たり紅茶修行」(ダイヤモンド 1500円+税)

107 新井 裕著「赤とんぼの謎」(どうぶつ社 1500円+税)

106 ワンガリ・マータイ著「へこたれない-ワンガリ・マータイ自伝」(小学館 2200円+税)

105 戸田忠雄著「学校は誰のものか  学習者主権をめざして」(講談社現代新書 740円+税)


104 小松正之著「これから食えなくなる魚」(幻冬舎新書740円+税)


103 住田昌二著「21世紀のハウジング 居住政策の構図」(ドメス出版 2200円+税)

102 疋田 智著「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」(朝日新聞社1600円+税)

101 中崎隆司著「なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか」(彰国社1600円+税)

  人工林のほとんどが画一的。一部を除いて高い品質や特徴のあるものがない。戦後復興と高度成長期で木材が不足。国の推奨があったので全国で針葉樹の植林が行われた。山林所有者の欲の皮のツッパリが、甘い見通しに走った。
画一化は国の施策の間違いで、現在の山林はその被害者かもしれない。いずれにしろ、質より量を求めたので市場競争力を失ってしまった。



100 富坂 聰著「中国という大難」(新潮社 1500円+税) 2007年09月21日(金)

99 吉岡秀子著「セブン-イレブンおでん部会  ヒット商品開発の裏側」(朝日新書740円+税)

98 五島朋幸著「愛は自転車に乗って  歯医者とスルメと情熱と」(一橋出版1600円+税)


97 鈴木博之著「建築の遺伝子」(王国社 1900円+税)
     美しいファサード 来客主体から住人主体の基本プラン 機械設備の充実

96 佐滝剛弘著「郵便局を訪ねて1万局」(光文社新書 840円+税)

95 瀧井宏臣著「農のある人生」(中公新書800円+税) 

  しかし、いつまでも農地法を不可侵の教典として掲げ、誰もこのことに触れようとしないのが不思議でしょうがない。
休耕田で田圃を遊ばせているのなら、都市の人々に安く貸せばいいではないか。
山林を間伐もせずに放置しておくなら、国なり地方が買い上げて、都市生活者に解放し、人々を山へ呼び寄せるようにしたらいいではないか。それをやらずに迎合的な補助金政策しかとってこなかった
6章からなっており、大都市の体験農園、クラインガルデン、週末農民、半農半X、団塊帰農、市民皆農の時代、に分けてそれぞれ具体例を挙げてくれている。 クライガルデンとはドイツ語で「小さい庭」のこと。
日本では長期滞在も可能な滞在型市民農園と定義付けられている。松本市の四賀、兵庫の八千代、宮城の丸森、山梨の甲斐・高根、千葉の栗源、岡山の牧山、群馬の倉渕などが有名。
昨年ドイツへ視察に行った時、ベルリンの市内から空港までの短い時間の中で2ヶ所もクライガルデンを目撃した。
ドイツには1区画300m2のクライガルデンが100万区画以上あると言われている。都市生活者のほとんどが都市の中で農作業を行ってリフレッシュしている。
しかも都市計画の中の一つとしてクライガルデンがきちんと位置づけられていて、半永久的に使える。しかも管理は市民の自主的な管理。
これに対して日本は区画面積が1/10と小さく、農地は農家の私有地で、管理はJAとか農家。
ここにも市民不在の農政と農地法が幅を利かせている。





94 林田正光著「NOは言わない! ナンバー1ホテルの感動サービス革命」(講談社α新書800円+税)

93 金子 勝著「食から立て直す旅」(岩波書店1500円+税)

上伊那の飯島町。農家の平均経営規模は90アールと零細。
にもかかわらず農業機械を調べたら町の農地規模の10倍の能力を持っていることが分かった。そこで営農センターを立ち上げ、農民全員参加の下に「町ぐるみの農地の利用調整」を行ってきている。
農地の賃貸借はJAが一旦借り受けて貸す形式をとっている。このため全国的に農地の規模拡大が進まないなかにあって、農地の流動化率は20%にもなってきている。
そして、連作障害を避けるために地域毎にコメ、ムギ、ソバのブロックローテーションが行われ、作物のロットも確保されてきている。
さらに大型機械を地区営農組合が持ち、地域全体の賃貸借関係や作付けなどが一目で分かるコンピューターソフトを開発してきている。
「補助金をもらう員数合わせ」ではない、真の「農地の流動化」が進んでいるという。
秋田の里山の集落・羽川に住む佐藤さん。
県内でまともに林業を続けている10人の山持ちの1人。秋田スギは乾燥すると変形する。乾燥に時間のかかるスギがマーケットを失ってきた。
それと間伐材が売れず、下草刈りにも費用と手間がかかる。このため山は荒れたまま放置。
20年前、佐藤さんは「巣植え」という造林法を考え出した。スギだけでなく広葉樹も含めて3本まとめて植える。広葉樹の葉は夏日光を遮るので下草の生長を抑え、下草刈りの必要がなくなった。冬は落ちた落ち葉が肥料になる。間伐が不要な「巣植え」でスギは立派に育つ。
そして放置された田畑を借りて、町の人に「自給自足」の生活を楽しんでもらうように工夫。つまり「森へ新鮮な空気を吸いにいらっしゃい」ではなく、動物除けの防護ネットを張り、キノコ、山菜採りのほかに無農薬によるコメ、野菜つくりや炭焼き、ブルーベリー採りという「自給自足」の生活を楽しんでもらっている。町の人をボランタリーでこき使うという発想ではなく、その実りを共有して楽しんでもらう。林業家から経営者へ佐藤さんは見事に脱皮中。


92 鈴木 隆著「自販機の時代」(日本経済新聞 1800円+税)

91 ロジャー・ペイン著「オデッセイ号航海記」(角川学芸出版1400円+税)

90 田中淳夫著「森林からのニッポン再生」(平凡社新書780円+税)

それなのに、日本では「安い外材に押されて国産材が見捨てられてきた」とか「日本の山は急峻だからコスト的に諸外国に太刀打ちできない」との口伝が、林業関係者からまことしやかに伝えられ、幾多の補助金が山林所有者にバラ撒かれてきた。
筆者は、この林業関係者の挙げる2つの理由は「真っ赤なウソ」であると主張している。
外材は決して安くなかったし、ヨーロッパも北米にも峻険な山が多い。
日本が遅れているのは育林方法と出材コストにある。日本の山道が貧弱。そして、欧米では伐採から枝落とし、玉切り、トラック積みまで行える高性能林業機が普及している。GPSも搭載して本部と相談しながら伐採量を決める。しかも乗用タイプだから雨天でも仕事が出来、生産効率が全く違う。それに、日本では国産材のほとんどが乾燥されず、精度や強度などの性能面で欠陥があった。だから消費者やビルダーは国産材を忌避してきた。
日本はヨーロッパ、中でもドイツを見習うべきと筆者は強調する。人工林面積は同じなのに木材の生産量は日本の3倍。13兆円を売り上げる巨大産業に成長している。環境のために国産材を育成するという論点には、バラ撒き予算をもくろむ者の悪臭を、賢明な筆者は感じている。


    2007年07月06日(金)
89 日本ホリスティック教育協会著「学校に森をつくろう!」(せせらぎ出版 1714円+税)

88 鷲田小弥太著「夕張問題」(詳伝社新書740円+税)

「過疎化と高齢化をおそれるな」という発言には、思わず拍手をしたくなった。
そして1978年から30年間も「類似の市の2倍の職員を抱え、高い給料を払い続けてよくぞこれまで長持ちしたものだ」というのが著者の率直な感想だという。


87 広瀬立成著「物理学者、ゴミと闘う」(現代新書 720円+税)

人間や生物の活動は、ほとんどが地表面で行われている。したがって、そこで発生した熱を宇宙に廃棄するには、熱を宇宙まで運び上げるシステムが必要。その大役を担ってくれているのが「水の循環」。もし、発生する余分なエントロピー(熱)を運び上げて廃棄する水の循環がなかったら、地球は金星と同様に熱死する。


86 大棟耕介著「ホスピタルクラウン」(サンクチュアリ出版 1400円+税) 

  子供と遊んだあと、こんなことをいう母親が病院にはいっぱいいる。
  「自分の子がこんなに笑うってこと、すっかり忘れていました」
  病院にいるお母さんはひどく疲れている。



85 NHK経済羅針盤制作班編「社長が語る勝利の方程式」(NHK出版1500円+税)

ヤマダ電機社長 山田昇  脱サラで始めた前橋市の小さな電機店が、大手量販店の空隙をついて北関東を中心に年商1兆円を超す大企業に。どこまでもお客の目線で、お客の質問に答えるのではなく、お客が必要としているモノ選びのお手伝いこそが本当のプロの仕事という。


84 森まゆみ著「自主独立農民という仕事」(バジリコ社 1500円+税)

83 エリザベス・コルバート著「地球温暖化の現場から」(オープンナレッジ1600円+税)

82 小林 光著「エコハウス私論」(ソトコト新書 762円+税)

81 鈴木直樹著「マンモスを科学する」(角川学芸出版1500円+税)

80 レイ・モイニハン、アラン・カッセルズ共著「怖くて飲めない! 薬を売るために病気はつくられる」
(ヴィレッジブックス1700円+税)

79 ビートたけし著「達人に訊け!」(新潮社1200円+税)

78 加藤直邦著「僕は見習いナチュラリスト・アフリカ野生王国編」(情報センター出版局 1600円+税)

77 R.C.バルガバ著「スズキのインド戦略」(中経出版 1500円+税)

経営者も労働者もカーストも関係なく同じ制服を着て、同じ食堂で食事をし、同じトイレを使い、個室のない開放型のオフィスで仕事をする。そして、消費者志向という概念を共有し、労使協調態勢を築いてゆく。社員教育、中堅や幹部社員教育、デーラー教育、部品メーカーの育成と教育。日本への研修旅行を含めて大抵抗を克服してゆく過程が泣かせる。
そして悪しき制度と習慣を克服して、マルチは乗用車のシェア55.1%というインドを代表する企業に躍進した。インドという社会をこれほど身近に感じさせてくれる本はない。


76 涌井 徹著「農業は有望ビジネスである!」(東洋経済 1500円+税)

「これからの農業に求められるのは単なる《コメ作り》ではない。消費者が求めているのは生産から流通、販売にいたる《美味しくて安心なシステム》である」と著者は断言する。
われわれビルダーがこの著者から学ぶべきことがあまりにも多い。必読の書。


75 ヘンリー・フォード著、竹村建一訳「藁のハンドル」(詳伝社 税込1020円、中公文庫 税込800円)

この自伝が書かれた1926年頃の世界はどんな状態であったかノ。
9年前の1917にロシア革命が起こった。そして、ヨーロッパの労働者は疲弊し、社会は不信と不安で揺れていた。資本VS労働という敵対した固定概念。資本家=搾取という図式。
この時、ヘンリー・フォードがやったのはこうした固定概念に対する挑戦。
自動車の価格をそれまでの半値にし、労賃を2$から5$へと2.5倍もアップした。
労働者はマルクス主義者の言うような搾取の対象ではなく「労働者は消費者である」と喝破した。そして、余暇の創造こそ産業の使命であり、カネをサービスに優先させている銀行家の考えは本末転倒であると厳しく指弾。さらに、企業は資本家のものでも労働者のものでもなく社会的な存在であり、道義心と研ぎ澄ました経営感覚こそが肝要と説く天才的な先見性。
「1世紀前は1のチャンスに1000人がひしめき集まった。現在は1人に1000のチャンスがある。このチャンスを拡大するのが企業家の使命」として、生産性の大改革を断行。
現在のトヨタがあるのはヘンリー・フォード一世のおかげ。すごい自伝があったのです!


74 茂木健一郎他著「プロフェッショナル仕事の流儀 8」(NHK出版 1000円+税)

●お金  活動を支える潤滑油。多すぎる潤滑油は機械によくない。企業が適正な利益を出せないと社会貢献をしていないことになる。目的は社会貢献。社会に認められることこそ。


73 島田晴雄+NTT経営研著「成功する、地方発ビジネスの進め方」(かんき出版 1600円+税)

地域を活性化させるのは「生活産業」
生活産業で伸びるのは (1) 地域に密着した時間制タクシーなど交通サービス (2) 高度なさまざまな要望に応えてあげるコンシェルジュサービス (3) 地域密着のレストランなどのコミュニティサービス (4) 地域の資源を活用した健康ツアー (5) 商業のプロを育成しての商店街 (6) 地域ブランドによる町おこし (7) 地域ならではの伝統のある家屋を活かすとともに住み替えサービス、などを挙げている。
 そして、代表的な成功例として北海道の伊達市を上げている。
人口3万6000人の市に、この5年間で本州から1200もが移住してきた。気温が「北の湘南」と言われることもあるが、高齢者に「安心ハウス」を提供したり、トヨタの協力を得て時間料金制交通システムを確立したりした。今年度からは郊外型の「優良田園住宅」を展開する。
日本一住みたくなる魅力づくりで、唯一住宅地の地価が上昇している市だという。


72 米原万里著 「マイナス50℃の世界」 (清流出版 1500円+税) 2007年03月09日(金)
ヤクーツクのマイナス50℃の世界は、われわれには想像がつかない。


71 アル・ゴア著「不都合な真実」(ランダムハウス講談社 2800円+税)

この高気密高断熱住宅を人々に買ってもらう仕事は、誰にでも出来ない。
消費者のために本気で考え、細部にいたるまで徹底的にこだわって情熱を注ぎ込み、消費者の視点でそのメリットを立証しない限り、絶対に人々は共感してくれない。進んで購買者となり永遠のファンになってはくれない。
つまり、誰もが高気密高断熱住宅の優れたプレゼンテーターにはなれない。宣教師になれない。だから高気密高断熱住宅を売ることが出来ない。


70 石原結實著 「病気は自分で見つけ、自分で治す」(ベストセラーズ720円+税)

満腹だと血液中の栄養状態が良くなって白血球も満腹に。
このため、外からバイ菌やアレルゲン(花粉、ハウスダスト、食物アレルゲン)が侵入し、あるいはガン細胞が発生しても、満腹の白血球はそれを食べようとしない。
逆に空腹になると血液中の白血球も空腹になり、バイ菌、アレルゲン、ガン細胞などの有害物をむさぼり食うようになる。


69 NHKためしてガッテン編集班「食の知恵袋事典」(アスコム 1048円+税)

68 中村 元著「恋いに導かれた観光再生」(長崎出版 1400円+税)

本の内容は「バリアフリーの街づくりで、再生に成功した観光地伊勢志摩」。
副題は「障害者のお客から徹底的に学んだ民間NPO法人の勝利」
この言葉を契機になって「身体障害者の視点でつくる伊勢志摩ガイドブック」の構想が生まれ、著者を中心とする「伊勢志摩再生プロジェクト」が生まれてゆく。誕生した改革派の北川三重知事がそのプロジェクトの背中を押してくれた。


67 日下公人著「よく考えてみると、日本の未来はこうなります」(WAC 1400円+税)
今年も、はっとする多くの文章にぶつかった。


66 小泉武夫著「怪食対談 あれも食ったこれも食った」(小学館文庫514円+税)

まず、イタリアのスローフードを日本へ紹介した島村菜津さんとの対談。
島村 私はファストフードの成長期に一緒に成長した。ところがイタリアには地元料理がいっぱいあり、素材などをききだすと1時間も2時間も話が尽きない。地元の食が豊かなところは郷土愛も家族愛も豊かだということを実感しました。
小泉 女優の沢村貞子さん。関東大震災の時隣の乾物屋のオヤジさんが「これをもってゆけ」とかつお節二本をもたせてくれた。このかつお節で二週間命を永らえることが出来たといっていました。かつお節は偉いんです。カンパンなどよりはるかに優れた非常食です。


65 井沢元彦・呉善花著「やっかいな隣人 韓国の正体」(祥伝社1600円+税) 

64 塚本 潔著「ハリウッドスターはなぜプリウスに乗るのか」(朝日新聞社1200円+税)

当時、大企業病に犯されていたトヨタ。それを打開するために「何も変えないことが最も悪いことだ」と登場した奥田社長。その危機意識がトップダウンの形でハイブリッド車の開発に走らせたと考えて良かろう。


63 山根一眞著「メタルカラー烈伝・温暖化クライシス」(小学館2300円+税) 2007年01月05日(金)

62 街風隆雄構成  御手洗冨士夫「強いニッポン」(朝日新書 740円+税)

ともかく、御手洗氏の現場主義と改革好きは有名。
いちはやくベルトコンベアを追放し、セル方式を採用するとともに、徹底した機械化を図って労務費を10%以下に抑え、工場の海外移転の必要性をなくしてきた。このためリストラを行わず、毎月の中央労使協議会に必ず出席して組合役員と目的意識と価値感を共有するとともに、定年延長もいち早く実施してきている。
 次は道州制。私の出身の九州には各県に同じような特徴のない国立大学がある。これを大九州大学に統一し、各県毎に法学部とか、理学部、医学部、農学部などに特化してゆくという選択と集中を行えば蘇生する。高校は県立から市町村立にすれば小中からの一貫教育も可能になる。
そして、最大のメリットとして「農業の再生」に期待がかけられる。何軒かの農家が現物出資をして営農会社をつくるなどすれば、農地の荒廃はふせげるのではなかろうか・・・。
各論としては甘すぎるが、大胆に踏み込んでいる点は評価すべきであろう。


61 杉山経昌著「農! 黄金のスモールビジネス」(築地書館 1600円+税)

「農で起業する! 脱サラ農業のススメ」の続編。
50才で会社をやめ、ズブの素人が宮崎県綾町に畑地60アール、金柑畑20アール、ブドウハウス35アールの農地付の農家を買って移住して農業を始めた。
ともかくサラリーマン時代の経営テクニックを最大限に駆使し、パソコンですべてを管理するシステムを作り上げ、5年目にして夫婦の年間延べ労働時間3000時間、週休4日制を勝ちとった。前回の話はここまで。
 今回は、就業10年目の記録。
農地は果樹園100アール、畑作30アールで初期の頃と耕作面積はほとんど変わらない。そして米づくりと畜産だけは絶対にやらないというのが信念。収入の80%がブドウに依存する専業農家。家も改造し、作業場もつくり、地下貯蔵所も持っている。車は3台ある。
なにしろ悠々自適、週休4日制が目的だから、講演の依頼がきても断っている。その講演の変わりに書いたのがこの本。今回も、前回にも増してオリジナルな発想が目立つ。
稲作が中心の人には参考にならないが、農業こそ黄金のスモールビジネスであると高らかに叫ぶ元気印から、地場ビルダーも学べる点が多い。
なぜ米づくりを行わないのか。


60 藤倉 良著「環境問題の杞憂」(新潮新書700円+税)

日本人を死にいたらしめるリスク(年間10万人当たり)の最大は喫煙で74人、自殺25人、受動喫煙12人、入浴10人、交通事故6人、火事2人、原子力発電事故0.1人だという。そして、環境汚染物質によるリスクはホルムアルデヒドでも原発事故並という低い数値。
環境汚染はガンを引き起こすと言われているが、すべてのガン死に対する割合の推定値は次の通り(R.Doll&R.peto 1981)
食品35%、タバコ30%、出産と性行為7%、職業4%、アルコール3%、地球物理的な要因3%、環境汚染2%、医薬品と医療1%、食品添加物1%以下、工業製品1%以下、感知症10%?
なんと環境汚染と食品添加物を加えても3%でしかない。
 ガンの最大の原因は食べ物。脂肪が多いものや塩辛いものや焦げたもの。焙煎されたコーヒー一杯に含まれる発ガン物質の量は、普通の人が一年間に摂取する発ガン性のある殺虫剤の残留物よりも多いという。


59 末吉竹二郎・井田徹治著「カーボンリスク」(北星堂1700円+税)

まず、水没のおそれのない基礎高。風速50mでも飛ばない屋根構造と屋根葺き材料。
そして、より高気密で遮熱性能の高い住宅を造り、強力な除湿機能を持ったCOPの高い空調システムと熱回収効率の高い換気システムの開発と採用。
それが関東地域だけではなく、東北から北海道の住宅造りにも波及してゆくであろう。


58 中村 園著「もの作り ひと作り」(講談社1500円+税)

「プロとはクライアントの意向を踏まえた上で、クライアントが想像してもいなかったプラスアルファのアイディアを提供する人」など、ズドンと胸に響く言葉に溢れている。気軽に読めて面白く、発想面で大いに役に立つ一品。


57 瀧口範子著「にほんの建築家 伊東豊雄・観察記」(TOTO出版 1800円+税)

56 南條 武著「ベンチャ → 便利屋」(出版芸術社1400円+税)

以来、便利屋という仕事の内容と料金表、支払い条件を明示するとともに、必ず下見をして見積もりを行い絶対の信用を得るとともに、一件の未収金もなく着実に事業を伸ばしてきた。チェーン化も図ってきている。企業が目を付けない隙間を探し、お客の視線で判断してゆく。「自営業は自衛業だ」という団塊世代のリベンジに、若者にないすがすがしさを覚える。


55 共同通信社編「地球最新報告・未来への選択」(つげ書房2000円+税)

54 端田 晶著「小心者の大ジョッキ」(講談社1200円+税)

こうしたパブでは、仲の悪いイングランド人、スコットランド人、ウェールズ人、アイルランド人がしょっちゅうお国自慢で喧嘩をし、パブの雰囲気を壊していた。


53 四十万靖・渡邉朗子著「頭のよい子が育つ家」(日経BP社1300円+税)

最初に行ったのが「有名中学に合格した子供達の家」の実態調査。数年間で200以上の家庭を調査したという。フィールドワークに基づいた著作だから説得力がある。
仮説は根本的に間違っていたことに気づく。
ほとんどの家庭が「中学受験まっしぐら」という張りつめた雰囲気とは無縁。それどころか、一般の家以上に受験生が両親や兄弟と仲良くコミュニケーションをとっている。
そして、興味深い事実が浮き彫りに。それは「子供たちが子供部屋で勉強しておらず、お母さんのいるリビングやダイニングのテーブルやちゃぶ台で勉強している」ということ。


52 シーニックバイウェイ支援センター編著「シーニック・バイウェイ 北海道」(ぎょうせい 1905円+税)

1989年に「シーニックバイウェイ法」が連邦議会に上程された。
法案の目的は以下。●道路沿線の①景観 ②歴史 ③自然 ④文化 ⑤レクリェーション ⑥考古学の視点から傑出した価値を保存することで景観を長期的に維持充実させる。●国内外の旅行者の増加を図り、州や地方の経済効果を生む。●全ての旅行者に体験学習の場を提供し、教育の機会を充実させる。 シーニックは「景色」で、バイウェイは「寄り道」。つまり、やたらな看板広告やゴミの散乱などがなく、つい寄り道したくなる美しい景観のルートを長期的に保存し、旅行者を呼び込んで地場を活性化しましょうという法律。
 この目的に合致した沿線道路をシーニックバイウェイとして認定しており、2005年現在で126ルートが認定を受けているという。指定を受けたルートは連邦政府から支援が得られる。しかし、支援を受けるのは地方の市や町などの自治体ではない。NPOなど地域で組織した民間団体に限られているという。つまり、市の予算で看板を外したり、花を植えたり、ゴミ掃除をするのではない。民間の自発的な活動で道路と街と景観の美化を図ってゆく。
そういう民間主導の美化運動が十数年前からアメリカで始まった。CO2削減では世界のビリを走っているアメリカだが、美しいルートづくりでは世界のトップランナーというわけ。


51 日下公人・伊藤洋一著「上品で美しい国家」(ビジネス社1500円+税)

少子化で一番困るのは年金と保険だけ。この2つは20~30年先まで役人と政治家のバカどもが売り込んでしまった。だから対応が困難。それ以外はいくらでも対応が可能で、少子化で困ることはない。
そして、少子化を防ぐには結婚を増やすしかない。それには、魅力的な男性を増やすこと。


50 前田智幸・川井龍介著「身体にいい家、悪い家」(新潮社1300円+税) 2006年10月06日(金)
情けないと思う。
こんな本が、新潮社という出版社から出版されたことが、嘆かわしい。
こうしたイノベーション を知らない人間が書いた本は、その意図とは関係なく人々を誤った方向へ導く毒書となる。プロは謙虚に世界の歴史と技術に着目し、責任感を強く持つべき。


49 広野道子著「ダイエーを私に売ってください」(徳間書店1300円+税)

ダイエーもそうだが、プロの消費者である優秀なパートの意見を1つも採り入れていない。パートやバイトが喜んで自社商品買うようにならないかぎり、企業の再生はあり得ない。


48 高関義博・坂東忠明「北海道 わが心の木造校舎」(北海道新聞社1800円+税)

道でも木造校舎が次第に鉄筋コンクリート構造に変わってきた。
しかし、ツーバィフォー工法のオープン化に伴い木質構造が再認識され、道内の20数校が新しい木構造になってきているという。その温熱関係や空調換気に関しても新しい動きや試みが知りたい。


47 佐藤 学著「学校の挑戦・・・学びの共同体を創る」(小学館1500円+税)

46 イ・ヨンソク+キム・ヨンハン著「ぼくらの八百屋チョンガンネ」(NHK出版1300円+税)

この八百屋への入社条件は熱意を持ったチョンガーであること。学歴は関係ない。
肝心なことは良い野菜や果物の見分け方。可楽洞水産市場の卸商人に聞くとうるさがられ、ひどい時には殴られる始末。しかし、鬼ばかりではなく、親切に教えてくれる先生もいた。
こうした経験の上で店を出した。そして主人公は「ナイフ男」と呼ばれるようになった。必ずナイフで果物を切って食べ、味を確認しないかぎり仕入れないという徹底したこだわり。このため市場で殴られ、暴力団に脅されもした。しかし、味の悪い品物は絶対に仕入れないという方針を堅持したため消費者から信頼され、売り場面積当たりでは韓国でトップという凄いベンチャーに成長した。


45 稲本正(文) 姉崎一馬(写真)「森の旅 森の人」(世界文化社1800円+税) 2006年09月01日(金)

この本は、1月から12月まで、毎月一ヶ所の森を旅して執筆されている。そして、日本の代表的な森林12ヶ所が網羅されている。
現在原生に近い形で照葉樹林が残されているのは宮崎県綾渓谷一体の2500ヘクタールが最大という。1966年伐採計画が持ち上がった時、郷田実町長を筆頭にして「照葉樹林都市宣言」をして照葉樹林を守り、日本の遺産として活かしている。猟師那須さんに案内されて渓谷に入った著者は「海のように葉がキラキラと輝き、波打っていた」と書いている。そして照葉樹林帯では20年サイクルで焼き畑農業が可能という。


44 関野吉晴著「グレートジャーニー 地球を這う ① ②」(ちくま新書各950円+税)

アマゾンでは単一作物栽培や牧場は砂漠化する。しかし焼き畑は数十年で完全に回復する。彼等は熱帯林を破壊させない生態学を熟知している。Etc・・・ 


43 坂口和彦著「農業をやろうよ」(東洋出版1500円税込み) 2006年08月18日(金)

この高松さんの農業経営コンセプトがすごい。
「輸入食料に負けない低価格で、高品質で、持続的経営力を持った農家であること」


42 野村誠他著「老人ホームに音楽がひびく」(晶文社1900円+税)

41 西川栄明・晴子著「北海道 アクティブ移住」(北海道新聞1200円+税)

東京というのはヒコーキに乗るまで結構時間がかかる。車で駆けつけるというわけにはゆかない。とくにアウトドア感覚の郊外生活となってくると、電車とかバスを乗り継いで2時間くらいはかけないとヒコーキにも新幹線にも乗れない。 これに対して、弟子屈町は車で1時間の範囲に釧路、女満別、中標津と3つも空港がある。3つの空港を合わせれば、東京へは毎日12便から13便はとんでいる。仕事で全国へ行くのは不便ではない。


特-1 杉山英男著「杉山英男の語り伝え」(追悼記念出版実行委員会、非売品)
 460ページにもおよぶ
こうした木造蔑視に終止符を打ったのがツーバィフォー工法のオープンな形での導入。これには杉山先生も主体的に参加され、指導をいただいた。このため、初期の木質プレハブの語りは10回で終わっているのにツーバィフォー物語は13回にもおよんでいる。そのほかにも、興味深い記述が続く。いずれにしろ、木質構造の複権は杉山先生を抜きには語れない。非売品だが下記へ電話されるのも一考かも・・・。 03-5841-5253 Email:jte@a.fp.a.u-tokyo.ac.jp


40 遠山正道著「スープで、いきます 商社マンSoup Stock Tokyoを作る」(新潮社1200円+税)

そして、一年半後にお台場のヴィーナスフォート内に第1号店がオープン。レジから30人ぐらいの長い行列が続く店として一ヶ月間の売上げは目標額700万円を倍増する1500万5000円を達成した。しかし出向期限が切れ、三菱商事へ復帰することになり事態は急変。
KFCの事業から商事の社内ベンチャー1号ビジネスに変更、認可された。そしてチェーン展開を図ってゆくのだが、途中で当然のことながら2回も血の小便の出るような存亡の危機に見舞われるノ。ホリエモン物語とは比較にならない志のしっかりした楽しい起業家物語。


39 杉山経昌著「農で起業する! 脱サラ農業のススメ」(築地書館1800円+税) 2006年07月14日(金)

 「わかりました。今夜百姓の先生を呼んで一杯やりながら話しましょう」その百姓の先生曰く「3反歩のハウスがあれば何を作っても一千万円になる。トマトなどを選べば箱詰めに作業に眠い眠いを我慢して一千万円。イチゴを選べば腰が痛い痛いを我慢して一千万円。キュウリなどを選べば農薬怖い、怖いを我慢して一千万円。何を我慢するかだ」と言われ、スーッと肩の荷が降りた。何かを我慢すれば百姓でやってゆけることが分かった。 手に入れたのは3.4反のブドウ園ハウスと金柑畑が2反歩、耕作農地60アール。農協が町で作っている全ての作物情報を送ってくれたので、自分のコンピューターでシミュレーションプログラムをつくり、夫婦で年間3500時間働くといくらの収入になるかをシミュレーションしてみた。そしたら650万円と出た。なんと純資本回収率が8%というすごいビジネス。


38 バーニー・マーカス他著「ホーム・デポ・・・驚異の成長物語」(ダイヤモンド社1800円+税) 2006年07月07日(金)  
  
 著作は創業者のバーニー・マーカスとアーサー・ブランクの2人が話したことを、ボブ・アンデルマンがまとめたもの。数あるホームセンターの中で、なぜホーム・デポだけが急成長できたのかという疑問に答を出していて読ませる。
 例えば、(1) マニュアル運営のチェーンとは異なり、地域・店毎に権限を持たせた (2) 将来の成長を考えて最高の能力のある人材を揃えた (3) DIY教室を徹底し、新しいマーケットを創造した (4) プロに売る値段と同じ値段で消費者に売った (5) カスタマーサービスに徹するとともに、社員のニーズにも徹底的にこだわった・・・


37 宮脇 昭著 「いのちの森を生む」(NHK出版1200円+税) 2006年06月30日(金)

かつての日本の本物の樹林は大部分が冬も緑の常緑広葉樹林だという。
関東以西の海抜800mまではタブノキ、シロダモ、ヤブツバキ、マサキなどが自生。本州の海抜800~1600mから北海道の黒松内低地ではブナが主木。また黒松内低地以北と本州の山地ではミズナラ。太平洋岸側ではイヌブナが混生し、北海道ではカシワが生育している。このような木が日本の土地本来の森の主木だということが分かってきた。
 こうした木を植えると火事や地震の災害から地域を守ってくれることが分かってきた。
著者の優れている点は、これらの学問的な成果を実際に応用したこと。
大分の製鉄所では塩分を含んだ地下水のため公害に強いと言われるニセアカシア、カイヅカイブキも枯れていた。そこで近くの神社へいったらシラカシ、イチイカシ、アラカシ、スダジイがあった。そのドングリを集めて植林し、見事な森をつくり上げたのを手始めに、海外を含めると1500ヶ所で3000万本の苗木を植えてきている。単に建築用材として森を見るのではなく、災害という視点からの着想に感激させられる。


36 増田悦佐著 「国家破綻はありえない」 (PHP研究所1400円+税) 2006年06月23日(金)

そのためには不要不急の公共事業をどんどん削減し、国民の大部分が安心してそこそこの金利を稼げるような金融商品を開発する。そして、国債を持っている個人や企業や金融機関がきちんとした金利を稼げる金融商品に乗り換えられる経済運営をしてゆけばいいだけのこと。改革路線を堅持すれば日本国は決して破綻しない。
 先進5ヶ国の国債所有者を見てみると、30から40%も海外が占めている。これに対して日本は海外の占める比率がたったの5%。日本を乗っ取ろうとしている外資系機関投資家がいるわけではない。また、日本は貿易依存度が非常に低い。輸出入とも諸外国は20%を超えている日本は10%以下。日本経済の強さは広大で底の深い内需市場にある。日本ほど世界の貿易の動向に左右されない国はない。そして、世界のマーケットが豊かになればなるほど自動的に日本の輸出が増えてゆく。

 
35 陳桂棣・春桃著「中国農民調査」(文芸春秋2762円+税)

34 佐山和夫著「大リーグが危ない」(新潮社1200円+税)

33 本川達雄著「長生きが地球を滅ぼす」(阪急コミュニケーションズ1600円+税)

これからはもの造りにも「生き物の時間やデザインを持ち込むべし」と説く。ともかく衝撃的で迫力に満ちた著書。


32 矢田部隆志編著「図解・ヒートポンプ」(オーム社1900円+税)

6年ぐらい前だったと思う。高気密住宅の施主である三菱総研の吉田部長に、築7年の新しい冷暖房機を全部取り替えたいと言われてびっくりした。COP (エネルギー効率のこと。COP3とは1kWの電気で3kWの熱エネルギーを、COP6とは6kWのエネルギーが得られるという効率を示す) が3から6と能力が倍になったので、機械を全部取り替えても数年で元がとれると言う。


31 溝口 敦著「パチンコ『30兆円』の闇」(小学館1400円+税) 2006年05月19日(金)

中央競馬会の売上げは3兆円。競輪は1兆円。宝くじも1兆円。
ゲームセンターが6千億円。
テレビゲームとゲームソフトを合わせても5千億円に満たない。
これに対してパチンコは、なんと30兆円。
桁が違う。この数字が如何に大きいものであるか....。
今をときめく日本の自動車産業が41兆円。
医療関係が31兆円。
全国の医療関係に匹敵するのですぞ!!  そういえば、地方へ行くと小さな診療所しかないところでも、大きくて立派なパチンコビルが建っている。
全国のホールの数は1万6000軒。従業員は33万人。関連を含めると40万人。
アメリカのカジノ産業の従業員が35万人というから、人口比で見れば日本のパチンコ産業はとっくにアメリカのカジノ産業を凌駕している。
そして、業界トップの荒川区のダイナムや京都のマルハンの売上げは1兆円近くにも及んでいるという。それなのに上場企業が1社もない。何故か・・・。


30 山田 勇著 「世界森林報告」(岩波新書780円+税)

森林の伐採や消滅を一方的に嘆くのではなく、問題を指摘しながらも、そこで生きる原住民の支援活動を積極的に続けている実践家。その原住民の生活までを包含したエコツーリズムのあり方を世界的な規模で説く。読み物としても大変に面白い。


29 ケンジ・ステファン・スズキ著「デンマークという自然エネルギー先進国」(合同出版1500円+税)

極論すると「北海道は独立国家として存在することが可能か」どうか。
その場合に一番参考になるのがデンマーク。
人口は北海道が566万人に対しデンマークは535万人とほぼ同じ。面積は北海道の83000km2に対してデンマークは九州なみの43000km2。この両者を比較することによって北海道が抱えている問題点が浮び上がるのではないかと著者は意図的に取り上げている。それが面白い。
その結果、北海道は輸出2400億円に対して輸入が何と7480億円と3倍になっている。その輸入の42%以上が石油などのエネルギー。道民1人当たり10万円の貿易収支赤字。
なにしろ歳出が3兆円に対して歳入が5000億円しかない。地方交付税と道債でまかなっているが、累積債務は7兆8000億円という。これでは、いくら形だけを道州政府にしたところで、全く機能しない。道産子は自尊心が強いが依存心も強くならざるを得ない。このままでは永久に自立出来ない。北海道をどこから「改革」してゆくか。

まず、北海道を食料自給率の基地として位置付ける。北海道の耕地面積は120万haで日本の耕地面積の25%を占めている。また国有林など林業面積も広く山林資源にも恵まれている。水産資源も豊富。
こうした農林水産業を発展させるためには、なんといっても安価な電力の供給がポイントになってくる。デンマークでは3相400Vの電力代が8円/KWhで供給されているという。これに対して北電の電力料金は17円/KWhと2倍以上。日本の他の電力会社に比べて特別に高いわけではないが、国際的比較で見るとこのままでは道の産業界を活性化させることは出来ない。



28 柘植久慶著 「首都直下地震〈震度7〉」(PHP文庫619円+税)

27 エレン・ロスマン著「ハーバード医学校」(西村書店1600円+税)

日本の医学界でも問診の大切さが理解され、臨床研修が取り上げられるようになったと聞く。
どのようにして顧客対応の勉強、つまり問診の勉強をするのか...。

住宅業界は基本的にはサービス産業。
医学界で行われようとしていることが参考になるなら、是非ともしたい。
「良い参考書があるよ」と施主であるお医者さんにすすめられたのがこの本。
アメリカでは4年制の大学を卒業した後、4年間のメディカルスクールと呼ばれる大学院教育でプロの医師としての教育を受け、難しい医師免許試験第1部と第2部に合格してはじめて医師になれる。
著者はハーバード医学校生としての4年間の勉強の内容、出来事と心の葛藤を丹念に記している。医学生の生活を記したものを読んだことがなかったので大変に新鮮。そして、アメリカの医学界の実態がよく分かる。


26 青木 慧著「山猿流 自給自足」(創元社1700円+税)

ところが、作物をつくり始めたら野生動物との格闘が始まった。それまでは、タヌキやイタチが姿を見せてはいたが、人畜無害だった。だが、休耕田はすでにイノシシやシカなどの餌場となっていた。山そのものが間伐をやらないから荒れ、山裾は休耕田で崩壊寸前。
作物だけでなく、鶏や兎を飼うとマムシをはじめとしてヘビが次々に襲ってくる。ヤマメや鯉を飼うとサギが襲ってくる。そういった中で自給自足を達成してきた貴重な記録。
今、必要なことは間伐材をタダでくれ、休耕田をタダで貸して、都会から人を山へ招くこと。山林農家と行政の意識の切り替えこそが何よりも大切だということがよく分かる好著。

25 岩山健一著「さらば、欠陥マンション」(情報センター出版局1200円+税)

24 蓮実香佑著「植物という不思議な生き方」(PHP研究所1300円+税)

この「植物という不思議な生き方」がまさにそれ。私がものを知らなさすぎるのかもしれないが、新しい発見が30ヶ所以上もあった。それに語り口が洒脱。
なんとも粋な本。その語り口のほんの一部を紹介すると...
この昆虫の中で最強の王者はほかでもないアリ。あのアシナガハチやスズメハチでさえアリにはかなわない。アリは集団で襲ってくるからたまらない。
植物の中の多くはこのアリをボディガードとして雇っている。
アリを雇った植物は、葉の付け根など花以外の場所に「花外密腺」と呼ばれる密腺を持っている。この密をアリの餌として与える。ソラマメ、サクラ、アカメガシワ、イタドリ、サツマイモなどがそれ。このほかカタクリはアリに種子を守らせているし、アリに住みかを与えているアリノトリデなどもある。一方アブラムシはアリに密を与えてアリに植物への裏切り行為をさせるなど、植物と昆虫・病原菌との戦いは、はてしなく「進化」という形で続いている...。


23 安部 司著 「食品の裏側」(東洋経済新報社1400円+税)

添加物はすごい。現代の魔法だ。天職の粉にめぐりあえた。「よし、日本一の添加物屋になってやろう」と新入社員は意気に燃えた。


22 島田洋七著 「笑顔で生きんしゃい!」(徳間文庫514円+税)

洋七の父は原爆症で死去。
母親は細々と広島で居酒屋をやって洋七と兄を育てていた。だが洋七をもてあまして8才の時、佐賀に住む母親の「おサノ」婆ちゃんに預けてしまった。
このお婆ちゃんは良家の子女として育ち、一回り年上のおじいちゃんに嫁ぎ七人の子供が授かった。しかし、お婆ちゃんが42才の時おじいちゃんは他界。長女が洋七の母親で17才。末っ子が三才児の五女二男。
この七人の子供を毎朝4時起きして学校の掃除婦をしながら育てあげた。6人が立派に巣立ち、末っ子だけが残っていた。この末っ子のアラタ君は三才の時に事故で脳の成長がとまった知的障害児。それでもやれやれと一息ついたところへ孫を押しつけられた。苦労している寡婦の長女の申し出が断れなかったのだろう。
 婆ちゃんは「学校はどうだ」とか「勉強は分かるか」などとは言わなかった。
「笑顔できちんと挨拶しろ。貧乏人に一番簡単にできることは笑顔だ」とだけは、口やかましかった。「笑っておれば、周りも楽しくなる」が口癖。
その通りで、転校してきた新参者だが元気に挨拶すれば、みんな笑顔でこたえてくれた。
「おサノさんちのノ昭広くん。挨拶できて偉かね!」と。
それだけではない。片親で、貧しいお婆ちゃんへ預けられているが明るいのが取り得と分かって「いただきものだけど、おまんじゅう食べる?」と言ってくれる。笑顔は宝でもある。
 お婆ちゃんの長男は当時福岡大学の出来る学生さん。これに対して小学生の洋七の成績表は1とか2ばっかり。「ごめんなさい」と小さい声で言うと、お婆ちゃんはきっぱり言った。
「なに言うとる。大丈夫、大丈夫。足したら5になる。人生は総合力」と。


21 義家弘介著 「ヤンキー 母校に生きる」(文芸春秋1400円+税)

この高校のクラス担当の教師の最初の仕事は (1) 誤った力関係による序列を徹底的に「破壊」すること (2) イジメは絶対に許さないことを全員に徹底させること。
これは口で言うのは簡単。しかし、過去を引きずり、安易な方へ流されてきた生徒ばかりが集まっている集団。授業中に私語を禁じても、携帯の着信音を注意しても、医務室へかけこんで遊んでいる生徒に説教をしても、全く効果がない。間違いなく日本一の「学級崩壊」の見事なサンプルが出現する。日本の教育現場の問題点が凝結して出現する。
 こんなありさまだから一学期が終了する時には、クラスの停学処分事件が30件にもおよぶ。普通の学校でさえ教師がくたくたになっているのだから、この高校の担任教授は文字通りヘトヘト。しかし、こうした生徒が秋の学園祭を契機に目覚めて立派に立ち直ってゆく。そして学校と勉強の楽しさを覚え、大学などへの進学率は80%にも及ぶ。そのポイントは教師が生徒の魂に向けて投げる剛速球ではないけれど真心こめた緩い直球。変化球ではないという。
 この本は、ビルダーのトップ全員に読んで頂きたい。社員や下職を教育するのはトップのポリシーと情熱だということをあますところなく教えてくれる。最高の人材教育読本。


20 杉本 允著「じんじくのニッポンてくてく縦断記」(星雲社1500円+税) 2006年03月03日(金)

 著者の調べによると、日本を3000キロ歩いて縦断した人は分かっている範囲でも十数人いるという。それどころか6000キロから8000キロ歩いて日本を一周した人が2人もいるという。
これに驚いていてはいけない。走って、つまりマラソンで日本を縦断した人が2人の外国人を含めて5人もいるという。極め付きは1997年の東京の米井さん(43才)の日本一周マラソン。なんと1万1025キロを183日で走破しているという。
これは分かっている範囲の記録で、無名の徒歩による日本縦断者は100人を越すのかも知れない。何が魅力でこんな馬鹿げたトライがくりかえされるのか。
その疑問が、この本を読んでいるうちになんとなくわかってくる。


19 藤田紘一郎著 「えっへん」 (講談社1700円+税)

その研究で分かったことは、腸の中に乳酸菌やビフィズス菌を増やし、腸内フローラのバランスをうまくとればガンやアレルギー病が防げるということ。免疫機構のうちTh1はガンの発生を抑制するもので、Th2はアレルギー反応に関与。ちょうどシーソーの両極端にあってバランスをとっている。このバランスが崩れるとガンになりアレルギー病を発症する。
 それには、オリゴ糖の多い大豆、ゴボウ、タマネギなどを摂取するとともに植物繊維を多く摂る必要がある。肉中心の食事を見直し、日本食の再認識と過剰な清潔主義と決別していろんな微生物と共存してゆくことこそが肝心。
また「過剰なダイエットは駄目。一番長生きするのは小太りのおじさん。SARSがこわいとイソジンでうがいしていると喉の炎症守る菌を殺し、貴家の命も殺す」と著者は忠告している。


18 勝見 明著「鈴木敏文の『本当のようなウソを見抜く』」(プレジデント社1238円+税)

そして、新しい事業を始めるとき、ほとんどの人は「勉強」から始める。この勉強というのは過去の経験の積み重ねをなぞる作業にすぎない。勉強しようとするのは答が見つかると思うからだ。最初から答がわかっているならそれは「作業」にすぎない。作業でベンチャーなどの新事業が興せるわけが絶対にない。最初に必要なのはどこまでも「仮説」。


17 小泉武夫著 「発酵は錬金術である」 (新潮選書1000円+税)

著者は全国の市町村からその発酵および醸造の技術をもとに村おこし、町おこし、会社おこしを依頼され、大きな成果を挙げてきている。単なる空理空論ではない。その20数件の経験談をまとめたのがこの本。中に北海道の例が2つ紹介されている。
 もう1つは旭川市の酒造会社の男山の「復古酒」。
元禄時代に書かれた酒造りの「本朝食鑑」という本がある。現在では米を100とした場合に麹が30で水が150の割合。ところが本朝食鑑によると米100、麹70、水110と麹が多くて水が少ない。こんな比率では米は溶けにくいから酒はあまり出来ないだろうと考えていた。ところが男山での試作では固いもろみの下で発酵が進み、10日間でアルコール度17%の酒ができた。そしてこの酒は糖分と酸度が今の酒の4倍もあり濃度が高い。そのまま飲むと重いが水で割ってもボディーの濃度が高いので水っぽくない。つまり、ウイスキーや焼酎と同じようにオンザロックや水割、お湯割として飲める新しい酒が誕生した。


16 唐津 一著「現場主義」(中央公論新社1300円+税)

たとえば農業。民力という数字がある。1人当たりの民力の水準、全国平均を100として示している。100以上の村を探したら結構あった。
 トップは秋田の大潟村の151.9だが、北海道の留寿都村125、洞爺村122、音威子府村と茅室町が121.6と北海道がとび抜けている。とくに道東の民力は平均値より高い。
 日本では農業についていわれない先入観が支配的。しかし、原点に立って考えると日本は温帯だから太陽の光は十分でヨーロッパより有利。水は豊富。土地は富んでいる。
 これだけ条件に恵まれている日本の農業の競争力がないとしたらそれは明らかに人災。政治家とか農林省の間違えた過保護政策が裏目に出たとしか考えられない。ともかく日本の農業はまともにやれば世界一のレベルに絶対になれるはず。
 日本では相続税が過酷で、3代相続すると遺産はゼロになるという。しかし農地は相続税も税金も優遇を受けている。視点を変えて見ると最大のビジネスチャンス。
 住宅も唐津流に視点を変えて「絶対に手抜きの無いクオリティ」を証明出来れば、ビジネスチャンスに満ちていると言えよう。


15 大森昌也著 「自給自足の山里から」 (北斗出版1600円+税)

14 山下 亨著「トイレが大変!」(近代消防社1600円+税)
ところが、阪神淡路大震災や新潟中越地震の経験で分かったことは「食事よりもトイレが大事」という事実。


13 野原由香利著「牛乳の未来」(講談社1680円税込み)
「乳牛の年中放牧という北海道の新しい酪農」
題名を「放牧とミミズが育てた 美味しい牧草と美味しい牛乳」とすれば一目だったのに

12 ハナ・ホーム著/梶山あゆみ訳「小さな塵の大きな不思議」(紀伊国屋書店2800円+税)
・ 塵がないと水蒸気が水滴に変わるには湿度が300%近くにならないと不可。
・ よく歩く習慣のある村では喘息患者が少ない。

11 堺屋太一著「エキスペリエンツ 7(団塊の7人)」(日経新聞社1900円+税)

この4人と坂本、蕎麦屋の女主人と地元商店街の元運転手の7人が中心になって、衰退している商店街復活作戦が開始される。
まず、松景さんのボランタリーが蕎麦屋の開き部屋へ事務所を引っ越してきて、人の流れを作り出す。坂本はエコマネーを発行してこれを軌道に乗せる。清川がいろんなイベントを計画して次第に商店街を活性化させ、売上げが次第に増えはじめる。
しかし、銀行は不良債権を一気に処理するために地


10 坂井洲二著 「ドイツ人の家屋」(法政大学出版局 3600円+税) 2005年12月23日(金)

ところがこの本を読んでびっくりした。
 ドイツのボーデン湖をはじめとして数ヶ所の湖底の泥の中から紀元前2200年前の住宅群がそっくり掘り出され、再現されてボーデン湖畔のウンターウールディンゲン村に杭上家屋博物館として展示されているという。
あの吉野ヶ里遺跡にしたって紀元前200年でしかない。


9 桂 望実著 「県庁の星」(小学館1300円+税) 
この本は、直接住宅業には結びつかない。
しかし接客、商品開発・マーケティングのあり方について参考になる点が多い。役人の生態もよく分かり、ともかく徹底的に面白い読み物。


8 竹間忠夫著 「サッポロビール ドラフトワン革命」(実業之日本社1200円+税)

ビールでも発泡酒でもない雑酒のエンドウ酒。たしかにサッパリ味だがあまりにもビールの味と違いすぎる。これを商品化するには社内のコンセンサスを得るのが容易ではない。


7 李文彦著「警察通訳が明かす・中国人犯罪驚愕の手口」 双葉社刊(1500円+税)

6  対談 小松成美・阿部聡「日本人は150グラム大きい脳で考える」 (PHP出版1300円+税)

 白人のコーカソイドは狩猟民族。1頭獲物を仕留めれば10人家族が1週間暮らせるという計算だけで生きてゆける。
 ところが黄色のモンゴロイドは農耕民族。半年間耕作すれば100~1000人が1年間食ってゆける。それだけに多彩な知恵が必要だったし、共同作業が必要だった。
 農耕民族というのは「考える人」だった。このため日本人の脳の大きさはヨーロッパの白人に比べて150グラム程度大きくならざるをえなかった。
 150グラム脳が大きい農耕民族の利点は、あうんの呼吸で会話が出来、他を思いやる能力が強くなり富を分配出来る。豊かな自然が全てに神が宿る多神教崇拝を生み出した。
 これに対して白人や砂漠の民は自分中心の個人主義とキリストやアラーなどの絶対神を生み、イエスorノーという世界を造ってきた。
 今、もの造り日本の素晴らしさが再認識されてきている。注文住宅の世界はもの造りの世界。150グラム大きな脳の日本人は世界一厳しいクオリティを求める。それに対処できてこそ地場ビルダーだという根拠をこの本が教えてくれている。
ただし、脳が大きいことの最大のネックは脳が成熟するまでの教育期間が長くかかることだという。


5 ヌケ






4 伊藤正裕著 「YAPPA(ヤッパ)十七歳」 (講談社1200円+税)

 信じられない本。
 筆者は、大阪インターナショナルスクールの在学中の16才の時に顧客情報管理(CRM)システムの手法を考案し特許を出願。17才の時に(2001年5月)に株式会社ヤッパを設立した。今年の5月で丸4年となるが、その間の経営者としての波瀾万丈の経験談を自分の手で客観的に記述している。
それが、とても21才の青二才が書いたとは思えない教訓と示唆に富んでいるだけではなく、これからの3Dソフトによって変化する近未来社会を見事に透視していて参考になる。


3 日本木材学会編 「木のびっくり話 100」 講談社(1470円税込み)

しかし、一般人が知らなかったいろんな情報が集約されていてなかなか参考になった。
木造住宅は都市の中の森林で、100m2の住宅には約5トンのCO2が固定されている。
南ドイツでは300年前からウッドサッシが使われていた。
木が藻類と異なり陸上で直立して生きてゆけるようになったのはリグニンのおかげである。
重い木材は丈夫そうに見えるが、乾燥させた方がヤング係数、曲げ、圧縮強度が増す。
木材の-140℃の時の強度は、含水率0%だと-20℃の1.5倍。含水率28.5%だと約5.5倍。
合板のルーツは古代エジプト王朝に。日本では正倉院の宝物に。etc.
 「木は古い資材ではなく、新しい未来素材である」ということを力説
 木は炭素(C)50% 水素(H)6% 酸素44%(O) から出来ており、CO2を固定し酸素を造る。
遺伝子の組み換えによってオーダーメイドの新樹木の誕生も考えられる。
250℃の高温高圧下で木を溶解させてプラスチック化させ新しい用途を開発中。
木とフェノール樹脂を組み合わせて炭化したウッドセラミックは融雪システムに実用化。
リグニンの少ない木を遺伝子組み替えで造ると、パルプの製造が容易になるし、キノコパワーでダイオキシンを分解が出来る。
超臨界氷(374℃、218気圧) で木からガソリンが造れる。
高温乾燥で木材の割れを防ぐ。
おがくずとマトリックス担体として用いた水を使わないドライトイレの開発。etc.


2 平安寿子著 「くうねるところ すむところ」 文芸春秋刊(1667円+税)

ところが、現場管理というのはそんなに甘いものではない。
 職人はよく仕事が分かる人に見られていると自然に性根が入る。ところが相手が図面も読めない素人だと手を抜かないまでも自己流でこなす。
 職人を自在に動かすには仕事というエサだけではダメ。あらゆる質問に答えられるだけの知識と技術、資材や廃材を自ら片付けられる体力や腕力、それと意欲と迫力が不可欠。
 それと、現場で一番大切なものは施主との対話。
「施主というのは無理を言う生き物」 その無理難題を納得の上即解決出来る能力がないと現場は絶対に円滑に進まない。


1 「住宅・健康関連本」の独善的週評 2005年10月23日(日)
                        高気密健康住宅研究所・鵜野日出男 

「このままでは日本の木造住宅はダメになる!!」
 大変な危機感をもって当会の高倉常務理事らと立ち上がったのが35年前の1970年。
 とりあえずツーバィフォー工法をオープンな形で日本への導入に成功し、なんとか「木造を科学する」基礎を築いた。
 20年前にはカナダからR-2000という超高気密高断熱住宅も導入した。

 そして、10年前の阪神淡路大震災で旧来の羽子板ボルト、すじかい、きずりによる「捻れる在来木造の弱点」が白日のもとに曝され、捻れない剛金物の開発が急ピッチで進んできた。
 さらに耐震性の強い面材を床、壁、屋根に採用することで日本の木構造は「剛構造」に一変した。

 次になさねばならない仕事は、国内の製材産業の育成に力を貸し、国産材で安価なツーバィフォー工法と剛木軸工法の安定的な普及促進を、地場の消費者とビルダー、設計事務所が一緒になって図ってゆくこと。
 地場の材料を消費者に押し売りするような単なる「地産地消」が目的ではなく「安価で、丈夫で、長寿で、健康で快適な住宅を未来永劫に供給してゆけるシステム造り」が求められている。
「北海道住宅の会」の設立目的はまさしくそれ。
 しかし、東京在住の私にお手伝い出来ることは応援歌を歌うこととホームページを賑わすことぐらい。
 幸い、文教地域なので7つの図書館を巡れば、週に15冊ぐらいの興味のある本に遭遇できる。その中でこれはという面白本は1~2冊にも満たないが、住宅や林業、新技術の住宅関連ならびに医療や食などの健康関連の中でこれはという著作を発見し、紹介してゆきたい。
 唐津一氏は「農耕民族日本人のDNAはもの造り。もの造りの極意は謙虚さと旺盛な好奇心。駆け引きに長じた中国人は基本的に商人」と強調。
 分譲住宅は優れた商才を持った商人の世界だが、注文住宅はどこまでももの造りの世界。
 強い好奇心を満たしてくれる書籍を探し出し、少しでも地場のもの造りの皆さんのお役にたてたらいいなぁ… そんな軽いノリでスタートさせていただきます。









  2009年02月27日(金)
  第175回「森林と人間  ある都市近郊林の物語」 石城謙吉著 (岩波新書 700円)

   苫小牧市は、今から50年前は人口6万人そこそこの王子製紙の城下町と呼ばれた地方都市。
それが、最近では17万人を越える北海道の代表的な都市の一つに。
その苫小牧駅から北に約2キロ余離れた地点から北西にかけて約2700ヘクタールの北海道大学の演習林がある。北海道大学は山持ちで、延べ6万5000ヘクタールもの演習林を持っている。その中では苫小牧演習林は小さな方で、今から26年前は、長年の過酷な伐採とその跡地への人工造林の失敗で荒廃していた。
もはや伐る木が底を尽き、財産林としての価値を失った「お荷物」と見られていた。
著者は演習林に入った経験が2年間あるとはいえ、林学部出身でなくて農学部卒でイワナの研究者。それが、唐突にも苫小牧演習林の林長に候補者として名乗りを上げた。
しかし、お荷物の苫小牧ということで対立候補が現れなかったために1973年、37才の時に林長になってしまった。

苫小牧の演習林に引っ越したゴールデンウイークの時に、大勢の人声がするので林内を流れる幌内川のほとりへきてみた。そしたら、そこには多くの家族連れの市民が集まっている。森はまだ緑を装っておらず、地面は枯れ草に覆われている。遊びの施設は何一つない。ただ、空が良く晴れ渡り、明るい春の陽射しに川面が輝いているだけ。
通りかかった職員に聞くと「あれは無断入林です」という。昔から黙認しているのだという。
新林長は、苫小牧演習林を総合的な自然研究の拠点にしようと考えて林長になった。市民の憩いの場という発想はこれっぽっちもなかった。
「そうだ。総合的な自然研究拠点としての森と、市民の憩いの場としての森の2兎を追う“都市林”としての再生を目指そう」と若い林長は決断した。

日本の「林学」は明治維新後にドイツかもたらされたものだという。
製鉄や建築などの工業の発展で林木の需要が増え、ゲルマニアの森が著しく衰退。その時、森林育成の基本とされたのが人工造林だった。ナラやブナが主体だって広葉樹の森を、育成効率の良いヨーロッパトウヒの植栽による人工林に変え、持続性を維持するため計画的に輪番で収穫してゆく「法制林」システム。このシステムが風土の違いを無視して日本へ導入された。
しかし、ヨーロッパではトウヒを植える一方、市民の憩いを重視した都市林の開発も19世紀後半から20世紀にかけて都市の周辺で始まっていた。

北海道には北大ほど広くはないが、富良野に約2万2000ヘクタールの東大演習林がある。
長い間この林長を務め、独自の「林分施業法」による森づくり行ってきて「どろ亀さん」というあだ名で親しまれた著名人が高橋延清さん。そのどろ亀さんから78年に一緒にヨーロッパ視察に行かないかと誘われ、著者は二つ返事で参加し、スイスやドイツ、スウェーデンの都市林を見て回った。
私も昨年、4200ヘクタールのフランクフルとの都市林を見て圧倒されたが、うち900ヘクタールはリクレーション専用とされているが、残りは計画的に育成と伐採が行われ、その木材を売ることで都市林として黒字を計上。伐採が森林育成の重要な手段となっているのを目撃。

この視察も踏まえて、いよいよ本格的な森林再生事業が始まった。
まず、森林を大きく4つの区画に区分した。(1)都市林地域 (2)原生保存林地域 (3)エゾマツ復元地域 (4)水源林地域。そして、全体の森林を8つの区画にわけ、毎年1施業区画に手を入れ、8年周期で森林施業を繰り返してゆくことを決めた。
それに先行して行ったのが林道網づくり、幅3メートルの林道が森の動脈として延べ164kmにも亘って整備された。そして23年間で、総合自然研究と市民の憩いの森として演習林は見事に蘇生。大きな成功例として輝いている。この著作は非常に示唆に富む、大感動物語。




2009年02月20日(金)
第174回「医学のたまご」 [独善的週評]
海堂 尊著 「医学のたまご」(理論社 1300円+税) 

  これは小説。小説として、特別面白かったというわけではない。こんな変なストリーが生み出されてきたという現象と、その背景が面白かった。

主人公の曾根崎薫君は14才の中学一年生。
父親の曾根崎伸一郎は、帝華大学の教授兼マサチューセッツ大学教授。世界的なゲーム理論の第一人者として有名。しかし、家庭的には必ずしも恵まれていない。薫と忍という双子が生まれて間もなく、母親は忍を連れて家を出ていってしまった。
したがって薫は父子家庭。そして、薫が喘息持ちだったので東京を離れ、桜宮市に住まいを移した。もっとも父親は一年の大半をマサチューセッツ大学で暮らしているのだから、日本での住まいはどこでも良かった。
そして、薫をアメリカへ連れて行こうとはせず、一切の面倒をシッターの山咲さんに任せっきり。しかし、薫はその生活には不満がなく、平凡な中学生活を送っている。毎朝、父親から送られてくるメールを楽しみにしながら、父親を中学生なりの尺度で尊敬していた。

ある日、薫は校長室へ来るように言われた。
校長先生はでっぷり太った禿頭で、僕たちは蔭で「ボイルド・エッグ」と呼んでいた。
その校長先生が「この子が曾根崎薫君です」と見知らぬおじさんに僕を紹介した。
その見知らぬおじさんがいきなり言った。
「曾根崎君、大学で医学の研究をしてみる気はないかい?」
見知らぬおじさんが僕に差し出した名刺には「東城大学医学部総合解剖学教室教授・藤田要」
とあった。
いきなりのことで目を白黒させていると、校長先生が説明してくれた。
「この前行われた全国の中学生を対象にした潜在能力試験で、君は全国1位だった。この試験の上位5人に対して特別教育プログラム、つまり飛び級システムの特別バージョンをやるという提案が、文部科学省から各大学へ公募という形での勧誘があった。そのうちの1つとして近くの東城大学が名乗りを上げて下さったというわけ。中学校へ通いながら週に2日だけ、東城大学で研究できるということだ。やってみるかね?」

僕は学者の子供ではあったが、アメリカで育ったわけではないから英語が出来ない。また、父親もシッターの山咲さんもそれほど勉強のことをとやかく言わないので塾にも通っておらず、成績は普通。唯一の得意は歴史程度。平凡な中学生にすぎない。その僕が潜在能力試験で良い成績が残せたのには訳がある。父親の伸一郎が文部科学省から「中学生の潜在能力試験」の問題作成を依頼された。「あっと驚く問題で、全国平均で30点しかとれない問題であってほしい」というのが注文。
「まったく、文部科学省の女キャリアは何を考えているのだろう・・・」と父親はメールでつぶやいていた。したがって、父の作った超難問題に関しては、メールを通じて学習していた。しかし、いくらなんでも全国1位になるとは・・・。

そんなわけで「日本一の天才少年」となり、東城大学医学部で医学の研究をすることに。
これには大学が国立大学法人に変わり、研究費を稼がねばならない裏事情が・・・。文部科学省のプロジェクトに総額10億円の予算が付いていたから藤田教授が飛びついたというわけ。
出来ない中学生の医学生としての生活は冷や汗と緊張の連続。分からない点は医学オタクの三田村君や秀才の美智子ちゃんに教えてもらいながら、なんとか落ちこぼれないように・・・。
それなのに、しょっぱなから、何やら凄い発見をしてしまったらしい。教授は大興奮し、研究室は大騒ぎ。外国の研究者を巻き込んでのてんやわんや物語が始まる・・・。





2009年02月13日(金)
第173回「霞が関の逆襲」 [独善的週評]
江田憲司・高橋洋一著「霞が関の逆襲」(講談社1500円+税)


いまから30年前、当時の日経連桜田武会長が「日本の政治家は三流だけれども、民間と官僚が一流だから日本は持っている」と言った有名な言葉がある。
そのころ、私はツーバィフォー工法のオープン化のために頻繁に建設省や金融公庫の技官と付き合っていた。その時は、節度と意欲のある多くの役人と出会うことが出来た。
すでにツーバィフォー工法で建設大臣の特認を得ていたメーカーが数社あり、既得権が発生していた。そうした中にあって、メーカーの既得権を反古にしてオープン化を進めてくれたのは、意欲的な役人が頑張ってくれたからという側面が非常に強かった。

しかし、高度成長期の中で、各省庁の縄張り争い、天下り先の確保競争が急速に熱を帯びてきはじめていた。
民間会社では、中小の家族企業は別にして、業績のある企業に対する貢献度の高い者をトップに選んでいる。低成長時代に入り、グローバル化する中では派閥とか毛並みなどと言ってはおれない。成果とリーダーシップを持ち、経営者としての資質と実力で選ばれる。
これに対して、役人は「公僕」。どれだけ国民のためになる仕事をしたかで選ぶべき。
ところが、いつの間にか「国民のため」ではなく、「所属する省庁のためになる人」を選ぶようになった。民間企業と根本的に異なる公正な組織であるべきということが完全に忘れてしまった。公僕だから解雇もされず身分が保障されているのに・・・。
だが事実は、どれだけ多くの公団、財団、社団、機構などの法人を作り、また産業界にも渡りをつけて多くの天下り先を用意したか、あるいは用意する力を持っているかで選ばれるようになった。文字通り「省庁あって国民無し」という毒草が、この30年間に役所に大きな根を張りめぐらせ、霞ヶ関を既得権と利権の巣にしてしまった。

この官僚制度にメスを入れるべく、最初に手を付けたのが橋本内閣であり、その後を引き継いだのが小泉内閣。その橋本氏の通産大臣秘書官、首相秘書官として4年余勤め上げたのが江田憲司氏。一方、高橋洋一氏は大蔵官僚から内閣府参事官を経て小泉内閣、安倍内閣で改革の司令塔として働き、民営化や公務員制度改革をはじめ埋蔵金の発掘など、役人らしからぬ大活躍をしたことは記憶に新しい。この2人を中心に「脱藩官僚の会」が発足し、未だに「省」を守ろうと画策する役人の実態を告発しているのがこの著。

この著書は8章からなっている。
そして、取り上げられている役人の悪質な言動の実例は70例以上にもおよぶ。本来だったら、その中の代表的ないくつかを紹介するところだが、あまりに多すぎて紙数が足りない。読んでいてほとほと嫌気がさしてくる。普通の人間だったらこんなあくどいことはしないと思うのだが、その考えは厚顔無恥の霞ヶ関エリートには通用しない。
一般国民は、市役所や町役場の役人とは直接面接することはあっても、霞ヶ関の役人と付き合うことはない。雲の上の存在。そして、霞ヶ関の役人に接することが出来るのは、各地域から選ばれた国会議員。この国会議員のほとんどが、霞ヶ関の役人にかかると軽くあしらわれてしまう。与党であれ野党であれ、国会議員で霞ヶ関の役人をコントロール出来るのは一握り。
役人が仕掛ける罠は巧妙。この著は、公務員改革の中心にいて、役人の手練手管に精通している2人だからこそ初めて明らかに出来た内容ばかりだと言ってよい。

アメリカの金融不安で、世界中にリストラの嵐が吹き荒れている。日本も例外ではない。
その嵐の中で、消費税の増税を言う前に、やって貰わなければならないのは国会議員と役人の定員削減。 「国会議員と役人のリストラなくして増税なし!」
そしてこの本には、現在の霞ヶ関の改革の方向が細部まで書き込まれている。
自民党、民主党などの党派は関係ない。いま問われているのは「国会議員と霞ヶ関のリストラを完遂出来る議員」を選び、真の改革連立内閣を発足させるしかないことがよくわかる。


2009年02月06日(金)
第172回「一食一会 フードマインドをたずねて」 [独善的週評]
向笠千恵子著 「一食一会 フードマインドをたずねて」(小学館新書 740円+税)


筆者は食文化研究を中心とするエッセイストであり、俳人協の会員でもある。
小学館のウェブサイトの「おとなのたまり場・ボンビバナン」という50才以上の読者を対象にしたブログに連載されていた旅(食べ)歩る記。
ただ、うまいもの紹介誌と違って、どこそこの店の何がうまいとか、味とか料理方法を主体にしていない。作り手の人生とかその土地の歴史的な背景やライフスタイルに焦点が当たっている。そんな話題が30数編、地域別に掲載されている。その中のいくつかを紹介したい。

◆松前漬けの美味しい朝食を終わったあと、資料館や漁港めぐりなど松前には見所がありすぎて江差行きのバスに乗り遅れてしまった。タクシーを頼もうと町役場へ走ったら、ちょうど江差へゆくというOさんに出会い、同乗させてもらった。Oさんは洒脱な人で、内地にはない「くじら餅の粉」などの話をしてくれた。
Oさんは水土里庵(みどりあん)という蕎麦屋で車を止めてくれた。若い店主は一茶庵系の蕎麦屋で修行してUターン。石挽きのざるソバと身欠きニシンの煮物がセットになった冷製ソバは、しなやかで、舌をピチピチくすぐるソバ。甘辛が互角に主張する濃いめのつゆ。身欠きニシン特有の渋みをいい塩梅に残した煮物。どれもが素朴な味のはずが不思議に洗練されていて、それでいながら京都のニシンソバにないおおらかさを持っていた。北前船で京へ運ばれて逸品になったものが、地産地消の新郷土料理に、みごとに変身をとげていた。

◆飯ずしは函館が有名だが、小樽の堀内食品も一方の旗頭と知り、新春早々に女性オーナーを訪ねた。同社の飯ずしはキュウリの輪切りを入れるのが決まり。魚は紅鮭、ニシン、ホッケなど豊富。工場では、家庭に桶のまま販売できるように小さな桶に白衣白帽の女性がせっせと漬け込みを行っていた。
その夜の食卓は、ぬか漬けニシンをニンジン、ジャガイモで煮込んだ三平汁。塩漬け鯨を里芋、淡竹、ワラビ、フキ、ニンジンと煮た鯨汁。それに秋鮭の麹漬け。ぬか漬けニシンの旨味を吸い込んだほくほくのジャガイモの三平汁。海の滋味いっぱいの鯨汁。しっとりとした鮭の麹漬けのどちらもお代わりをしたいほど。ハイライトはニシンの飯ずし。純白のごはんの粒々がニシンの切り身にしなだれかかり、唐辛子の紅とニンジンの朱がよき彩り。桶から出たばかりなので、舌に乗せるとシャーベットのようにひゃっとし、発酵してとろけたご飯のねっとり感がきわだつ。冷たさもごちそうのうちなのだ。

◆私は旅に出ると必ず地場の食品スーパーを覗く。観光ズレした朝市や土産物よりも右脳を刺激してくれるワンダーランド。かといってスーパーならどこでも良いというわけではない。ピンからキリまである。ピンは八百屋か魚屋がスーパーに衣替えした店。その代表的な店が高崎市箕郷町の「まるおか」。店主の丸岡さんは「健康は医食同源にあり」をひたすらに追求。店で売る食材は地場でとれた無農薬で伝統製法でつくった本物ばかり。自家製の無添加の洋風惣菜にも力を入れている。売っている牛乳は低温殺菌牛乳か無殺菌牛乳のみ。この牛乳でつくったソフトクリームまで売っている。
このため、「あそこへ行けばいいもの、美味しいもの、安全なものが買える」という評判が評判を呼び、高崎近郊はもちろん、遠くから車で来客する人気店になっている。
http://www.e-maruoka.jp/data.html

◆農家レストランの先駆者は大分県日田市大山町の木の花ガルテン。100人は軽く座れる大型店舗で、中央テーブルには大皿、大鉢盛りの料理。メニューは常時70~80種。農家のおかあさんが「私はこれが得意」「私のこれを試してみて」と言い合ってメニューが増えたという。たとえば煮物だけでもゼンマイ、フキ、ダイコン、肉じゃが、里芋、ジャガイモ、花豆という具合。バイキングで大人1360円(シルバー1260円)小学生840円、幼児420円。3才以下無料。


2009年01月30日(金)
第171回「数字でみるニッポンの医療」 [独善的週評]
読売新聞医療情報部著「数字でみるニッポンの医療」(現代新書 720円+税)


この著書は9章から成っている。しかし、医療費などを扱った最初の6章まではそれほど面白い話がない。しかし7章以降の医師の姿、検査大国、薬をめぐる問題になると、途端に面白い話が連発する。それらを無秩序にピックアップして紹介したい。

◆喫煙者は「多額の税金を払って国庫に協力しているのだから、嗜好品のことでとやかく言われる覚えはない」という。タバコの販売金額は4兆円でタバコ税が2.3兆円。これに対して本人や受動喫煙者の医療費が1.3兆円。病気休業や死亡による労働損失が5.8兆円。そのほか火災による被害を加えると7.4兆円。差し引きタバコ税の2倍以上が国家的なマイナスに。

◆世界の中で精神科のベッド数がもっとも多いのが日本。35万床と全体の2割も占めている。
そして平均入院日もフランス・アメリカの7日、イタリアの15日、ドイツの23日、イギリスの53日に対してなんと327日。これは、先進国では入院治療から地域生活での支援に変わってきているのに、日本では偏見から患者を閉じこめるためにベッド数を増やしてきた。

◆日本の赤ちゃんの出生児の体重が次第に小さくなってきている。2500グラム未満の低出生体重児の割合も男8.5%、女10.7%に増えてきている。この原因の一つは、今まで妊娠中は体重を増やしてはいけないという指導があり、一方若い女性のいたずらなやせ願望が加わって妊娠前から食生活が偏っていることの影響が大きい。

◆一般診療所全体の診療科別の収支を見ると、最も高かったのが精神科の256万円。次いで皮膚科246万円、眼科233万円、整形外科190万円、耳鼻咽喉科186万円。これらの分野で開業医の人気が高いのを裏付けている。少ない方では内科174万円、産婦人科167万円、外科129万円、最も少ない小児科が88万円。手間がかかるのに検査や薬を多く使えないから。

◆診療指針の基準を決める委員会の医師へ製薬会社から膨大な寄付金が払われている。メタボリック基準の11人の医師全員に3年間で14億円。高血圧ガイドラインの9人の医師に3年間で8.2億円。動脈硬化ガイドラインの4人には3年間で6億円が製薬会社から支払われている。
製薬会社からカネをもらった医師が、製薬会社のために厳しい基準を設けている。

◆日本はCT大国。人口100万人当たりのCT台数はイギリス7.1台、フランス9.7台、ドイツ14.2台、多いといわれる韓国で31.0台。これに対して日本はなんと92.6台。世界のCTの1/3
が日本に集まっているという。CTだけではなくMRIの台数でも日本が飛び抜けて多い。国内で稼働するCT1.3万台に対して放射線科の専門医は3400人。

◆昨年から始まったメタボ健診。大櫛東海大教授が5万人の対象とした日本総健の健診データを基に試算したところ男性の94%、女性の83%が何らかの異常を指摘されることになり、そのうち男性の6割、女性の5割が医療機関での受診を推奨されるという。日本の男性の復囲の平均は84cm。これをもって基準とするのはおかしい。BMI(体重指数)の標準が22で、25以上が肥満とされている。しかし10年間にわたって4万人を調査したところ、最も死亡率が低かったのは23~25で、次が25~27。そして死亡率が高かったのが21~23。今のメタボの基準はデタラメ。小太りの方が実際の寿命が長いという事実を委員会の医師がねじ曲げた。

◆心臓病の多いアメリカのコレステロールの基準値は240。これに対して心臓病が少ない日本の基準値が220。八尾市で1.2万人を対象に10年間調査したらコレステロール値240~279の人が最も死亡の危険が少なかった。また、最高血圧は140~160だったものが140に引き下げられた。このため医療費が嵩み副作用が出ており従来のままでよい。など面白い数字が盛り沢山。


2009年01月23日(金)
第170回「大丈夫だよ、がんばろう!」 [独善的週評]
山田邦子著「大丈夫だよ、がんばろう!」(主婦と生活社 1200円+税)


山田邦子というと、お笑いタレントというイメージが強い。
しかし、図書館で「成田空港物語」を借りてきて期待ゼロで読み始めたら、結構面白かった。そのほかにも「レシート」とか「オバサンレディ」など数冊を読んだが、いずれも水準以上。なかなかの文才家。「わたし」のことしか書けない芥川賞の女流作家よりも、いろんな女性の人生を描いてくれているので、私的には大変に好印象を持っている。

2年前に、筆者はテレビ番組の「たけしの本当は怖い家庭の医学」に出演した。
テーマは「自分で乳ガンをみつけよう」だった。
スペシャル番組で、10人の女性タレントの一人として呼ばれた。
指導をする先生は、国立病院横浜医療センターの乳腺外科の土井卓子。その先生がタレント全員に配ったのが梅干しのタネを入れた肉まん。
「乳ガンを触診して見つけるコツは、やわらかい肉まんを指のハラで押して、コツッと硬い梅干しのタネに触る感じ。まさにこの感触なんですよ。よく覚えてくださいね」
言われて、肉まんを指のハラで触り、全員が自分の胸を指のハラで押さえはじめた。

「私、しこりがある!」
一人の女優さんが手を挙げた。
会場がざわつき、先生が女優の横にきて一緒に触診を始めた。
「違うわね…」
なぁんだ、という声とともに、ほっとした笑いがスタジオを包んだ。いかにもバラエティらしい展開。私も一緒に笑ったが、心底は笑えない自分がいた。なぜなら、自分の指のハラに
梅干しのタネのような硬さを触感していたから…。

その日の夜は眠れなかった。
翌日、土井先生に予約をいれ、緑の多いのどかな風景の中にある「横浜医療センター」を訪ねた。自分では乳ガンだと確信していたので、「ほら先生、ここです。タネがあるでしょう」と話しかけた。
先生は、「それじゃこのまま細胞診もしましょう」と、有無を言わさずストローぐらいの太い針を、いきなり患部へブスッと刺した。
「痛! なぜ麻酔をしてくれないんですか」と痛みに耐えかねて言うと、
「麻酔の針も痛いの。痛い思いを二度するより、一度の方がいいでしょう。ここの細胞を吸い取るのよ。うまくいったわ。バッチリよ。痛かったでしょうが、私の勘ではガンでないと思うわ」と言われ、痛みも不安も吹き飛んでしまった。
しかし、翌日携帯に電話が入り、「残念だけどガンが見つかった」と言われた。

そして、横浜では簡単に通うことが出来ないからと聖路加病院の中村先生を紹介された。
何回かの検査が行われ、3個のガンが見つかった。非常に早く見つかったのでリスクは少なく、完全に治ると言われた。しかし、手術の途中にセンチネルリンパ節へのガンの移転があったら、脇の下のリンパ節を大きく切除することになるかもしれない。その場合腕が上がりにくくなる場合もあると言われた。そこで、入院までの間、腕が上がらなくても大丈夫なようにもっぱら掃除と不要品など家の中の片付け作業で過ごした。そして、病気のことも入院のことも誰にも言わず、仕事を続けた。だが、手術は一度では済まず、二度も行うことになった。

そして、3ヶ月振りに「たけしの本当に怖い家庭の医学」に出演した時、「この番組のおかげで乳ガンが早期発見出来、無事治ることが出来ました」とお礼の言葉を述べた。それがスポーツ新聞の記者の耳に入り、翌朝の一面トップにスクープで取上げられ、大騒動に…。


2009年01月16日(金)
第169回「勃発! エネルギー資源争奪戦」 [独善的週評]
ダイヤモンド社・編 「勃発! エネルギー資源争奪戦」(ダイヤモンド 1600円+税)


昨年180円台という高値をつけたガソリン価格が、今年に入って安売り店には100円を切る看板が。昨年の急騰の折には、このような半値の事態を予想した者は誰一人として居なかった。
世界的な金融不安が自動車の販売に急ブレーキをかけ、冷え込んだ消費者心理は車での外出を控えてきている。そして、あぶく銭の流入が止まったフアンドなどの投機マネーが先物取引から手を引き、石油をはじめとしたほとんどの資源需要が一時的な小康状態を保っている。
幸か不幸かは分からないが、地球にとっては大変に喜ばしい現象。

しかしこの小康状態はいつまでも続くわけがない。21世紀の戦争は「国境をめぐるものではなく資源の奪い合い」だと言われている。エネルギー資源を巡る「仁義なき戦い」の時代。この著は、商社マンや大学教授の教示を得ながら、ダイヤモンド社が記述し、編集したもの。
資源戦争については、世界のエネルギーをがぶ飲みする中国と、豊富な天然ガスを持つロシアを中心に展開してゆくことは間違いない。
それを記した多くの著作出版されている。この著書でもその点について詳しくふれているが割愛させていただき、他であまり紹介されていない原子力ルネサンスに絞って紹介したい。

電気事業連合会は、下記の主要各国の電源別発電量の構成比(2005年)を発表している。
http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/shuyoukoku/sw_index_03/index.html
これを見れば一目のように、石炭の比率が高いのは中国の79%、インドの69%が群を抜いており、アメリカとドイツが各50%前後と高い。これがCO2と酸性雨で大問題を惹起。
一方、原子力の比率がダントツに高いのがフランスで79%。韓国の38%を別にすれば、次ぎに多いのが日本の28%。ついでドイツの27%、イギリスの21%、アメリカの19%、ロシアの16%と続く。この中で、アメリカが30年前にスリーマイル島で原発事故を起こし、以来新設は途絶えてきていた。そして23年前にロシアがチェルノブイリで大事故を起こし、ロシアの技術に対する信頼を大きく損なってきた。
こうした原発事故が契機となって、世界的に原発反対の動きが顕著になってきた。
とりわけヨーロッパ各国では、反原発が国家的な目的と位置づけられ、順次原発が廃止されるか、寿命がきた時点で破棄それる方向が確認されてきた。

ところがここにきて、ドイツ以外は大きく方向転換を図ろうとしている。
その理由は2つ。1つは温暖化が叫ばれ出して、CO2の削減がより問題視されてきたこと。グリーン・ピース創設者の一人であるムーア氏は「化石燃料に変わる唯一の非温暖化ガスエネルギーが原子力である」と語っている。CO2問題から原子力を見直そうという動き。
もう1つはロシアの露骨なエネルギー政策に対する反発。とくにEU各国はロシアに対する依存度が石油では26%、天然ガスでは29%にも及んでいる。自国の安全政策という面からプーチンのロシアに依存していることは危険。それだったら、原子力の方がまだマシだという認識が広まってきてイギリス、スウェーデン、イタリア、オランダなどで見直しが進められている。

アメリカも、国家の安全保障という面から中東の石油依存から脱皮しようとしている。そのために原発の建設再開とバイオ・ガソリンへの方向転換を行った。しかし、トウモロコシからガソリンを造るのはバカげている。トウモロコシの生産に膨大な石油を使い、トウモロコシからガソリンを精製するのにこれまた膨大な石油を使う。それだったら石油から直接ガソリンを精製した方が良い。したがって、現在のバイオ・ガソリンブームは早晩行き詰まると編者。
そして、先進国の中で、一貫して原子力の技術開発に取り組んできたのがフランスと日本。
日本は、地震で大きなダメージを受けたが、これはより安全なものへと変えてゆくことが出来る。そして、次世代の核燃料リサイクルと小型原子炉の開発でも日本は最先端の技術を持っており、世界各国に大きく寄与してゆくことが出来ると編者は確言している。


2009年01月09日(金)
第168回「この街は、なぜ元気なのか?」 [独善的週評]
桐山秀樹著「この街は、なぜ元気なのか?」(かんき出版1500円+税)


「北の湘南」というイメージで、伊達市はすっかり名物都市になってしまった。
島田晴雄氏やNTTデータの著書で、すでに伊達市で何が行われたかを知っている人も多いと思う。私もほとんど知っているつもりになっていた。しかし、この本を読んで、改めて知らされたことが多かった。

現市長の菊谷氏が市長に当選したのは1999年。それまでは公共工事の設計会社(株)道建コンサルタントを経営していた。兄が地元ゼネコンの勝田組の社長。全国どこでも見られる箱もの依存の土建屋グループ。
市長に当選した翌年有珠山が突如爆発した。菊谷市長は「運がないな」と感じたという。
しかし、一時的に噴火特需で地元のゼネコンは潤った。あくまで一時的に・・・。
市長として初登庁した時「当市の財政状況は非常に厳しく、予算が組める状況ではありません」といきなり言われた。
歳入を増やすには、人口を増加させるしかない。
そのために3大誘致策と呼ばれていたのが「企業誘致」「大学誘致」「自衛隊誘致」。
そして、最後の頼みの綱としていた「看護大学誘致」は北見市にとられた。
新しい産業を興そうにも予算がない。このままでは夕張市と同様になってしまう。

当時、NTTデータ研究所内に慶応大の島田晴雄教授を座長とする「生活産業情報懇話会」が組織されており、「生活産業の創出によって530万人の雇用を創出しよう」という計画が進められていた。そして、小泉内閣によって、これが政策として取り上げられた。
このプロジェクトに伊達市が乗っかろうと菊谷市長は考えた。
たしかに、いままでもいくつかの提案がいろんなシンクタンクから出されている。しかし、経営的な視点から見るとピンとくるものが少ない。観念的で納得出来ない。
「生活産業創出」という言葉からは、そこいらあたりのシンクタンクの提案と変わらないように見える。ところが、内容は「サービス産業をどのように創出してゆくか」という点に絞って、実に具体的に書かれていた。
市行政は、まさにサービス産業。
島田先生の優れたアイディアに乗り、伊達市の未来を賭けてみようと菊谷市長は決断した。 

だが、市長がいくら決断しても、それだけで世の中が動くものではない。
市議会がその気になり、市役所の職員が本気になり、その上で市民が自発的に動いてくれないと、ものごとは成就しない。
幸いなことに2002年が、伊達市施行30周年に当たっていた。
その30周年を記念して、市を挙げての一大イベント「生活産業創出シンポジウム」を開催することを決めた。
島田教授が基調講演を行い、市長以下の何人かでパネルデスカッションを行うというもの。
この種のシンポジウムの参加者は、東京の都心で、無料開催してもせいぜい100人から200人も集まれば御の字。まして人口3万7000人の田舎の市。100人も集まれば大成功。ところがなんと1000人も集まったのである。この1000人を集めた裏側には大変な努力が隠されているのだが、いずれにしろ1000人が集まったということで、市長の決断は市民の決断としてオーソライズされることになった。

このようにして、最先端の規制改革が伊達市で実行に移されてゆく。
その手足となって動いたのは民間の若き経営者軍団。そして、過去5年間で50才以上の中高年層の人口が1000人以上も増加している。その細部はこの本を読んでもらいたい。ただ、地元ゼネコンが中心になったので、優良田園住宅として建てられているのがOMソーラーというのが情けない。地場ビルダーによって本格的な北方型住宅が建てられることを祈念したい。


2009年01月02日(金)
第167回「自然な建築」 [独善的週評]
隈 研吾著 「自然な建築」(岩波新書 700円+税)


明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申しあげます。

日本の建築家の中で、最も忙しい1人が隈研吾氏。
世界中からの引き合いで、常に40件の物件を抱えて現場を飛び回っている。徹底した現場主義者。依頼された物件の歴史と環境を徹底的に調査してから発想する。
1年前に読んだ「プロフェッショナル・仕事の流儀(15)」(NHK出版1000円+税)の中で、隈氏の「負ける建築家」というポリシーに触れ、痺れるほど強く打たれた。
安藤忠雄氏をはじめとしてやたら自己主張ばかりを繰り返す建築家の中にあって、建物は自己主張するのではなく周囲に溶け込み、環境に「負ける」ことを目指すと明言していた。また、予算や敷地などの制約にも「負ける」のが本当の建築だという。
そして、建築家に一番大切な能力は、先入観を持たずに素直な気持ちで現場に立つことと、そして依頼主や専門家とのコミュニケーション能力だという。そして、技術的に繰り返しになる仕事は出来るだけ避け、常に新しい仕事にトライするようにしているという。

この言葉を聞いて、私は大変な感動を覚えた。
そして、何とかして隈理論を勉強しようと資料を漁ったが、適切な本が見当たらなかった。
大きな宿題を抱え、常に追われているような気持ちでいた。
そこへ、タイミングよくこの著書が出版された。
「自然な…」と謳っているとおり、水、石、木、竹、土、紙などの自然素材と建築との関係を自分の体験をもとに興味深く展開してくれている。
そして、「自然素材」と言っても、一部のエコロジー論者のように、やたらと自然素材だけにこだわっているわけではない。プラスチックの素材だって、もとを質せば生物の死骸。自然と人工の間にはっきり線を引いて片方を善者、片方を悪者とするような、二項対立的なヨーロッパ的思想の持ち主ではない。
実に柔軟で、それでいて新規性に富む。

しかし、この著書を読む時は、第1章から読まない方がいい。
木造住宅関係者だと、いきなり第4章の「広重美術館」から読まれることをお奨めする。
そして、次は5章の「竹」、6章の「土壁」、8章の「和紙」と読んでいって、それから1章の水、2章や3章の石、7章の「外観のない建築物」と読み進んだ方が隈氏を身近に感じて共感することが出来る。
氏は、20世紀はコンクリートの時代だったという。コンクリートという素材が建築の分野でグローバリゼーションを達成させたと説く。コンクリート造は、設計士にとってもっとも易しい建築。そして豪華に仕上げたい時は表面に大理石を張り、未来っぽく仕上げたい時は銀色のアルミの板を、エロコジーっぽく気取りたい時は木の板を張り、珪藻土を薄く塗ればいい。

しかし、一番難しいのは木や竹で、それだけやり甲斐があるという。
その木の章の中で特筆したいのは、栃木県の林野行政に携わってきた安藤実氏が、退職後に取り組んだ不燃化されたスギで広重美術館を完成させた話。スギの導管は壁孔壁という弁で仕切られ、不燃材の薬品を注入しても液体が奥へ浸透しない。その弁を遠赤外線で焼いて破壊する方法を発明した。それを試験センターに持ち込み、タイムリミットすれすれで間に合わせた。

また、旧盆過ぎた頃の太い竹を熱湯で油抜きをし、節をくり抜き、中に1辺が5センチのL型の鋼材2本を入れ、コンクリートを流し込む。CFTという新しい建築技法を取り入れて竹の柱を作った。つまり竹を初めて構造材として利用した。この技法が中国の万里の長城プロジェクトに採用された。このような興味深い話題が延々と続く。仕事の流儀(15)との併読がお奨め。


2008年12月26日(金)
第166回「政事小説 マリアの選挙」 [独善的週評]
三輪太郎著「政事小説 マリアの選挙」(徳間書店 1700円+税)


大学を出て大手広告代理店へ入社した主人公。
しかし、研修が終わって配置されたのが電算処理室というバックオフィス。
そこから抜け出したく「新規事業案」を作って配置転換を求めたが、受け付けてもらえなかった。しかし「地方選挙のコンサルタント事業」という案を作成して再度チャレンジしたら採用になった。地方選挙に限ったのは、全国選挙ではすでに選挙広報営業部という部が存在していたから。

このベンチャー事業を立ち上げるに当たって、いろいろ試行錯誤の結果「3&1」というルールを決めた。
(1) 国政選挙にはタッチせず、クライアントは与党候補に限る。
(2) クライアントが落選した場合は一切の報酬を辞退する。
(3) そのため、候補者の瀬踏みを徹底する。地元へ赴いて丹念に聴取を行い、後援会や候補者の資質を調査。そして独自の「ロジスティック回帰分析計算式」にかけて当落をはじき出す。0.5が分岐点で、これを上回った時だけ引き受ける。下回る時は断る。
それと「&1」だが、これは口外不可の暗黙のルール。
その中身は、女性候補は門前払いで絶対に受け付けないというもの。
これは、選挙の神様と言われるほとんどの人が異口同音に「選挙の大敵は女。候補であれ、運動員であれ、女は扱いにくく、一度関係がこじれると修復不可能。疫病神だから近づいてはならない」という言葉にすなおに従っただけ。

ともかくこの「3&1」を守った結果、ほぼ100戦100勝。もちろん、都度綿密に作戦を練り、運動員全員をその気にさせてきたという努力があってのこと。
そして次第にクライアントが増え、現在は5つのチームが常にそれぞれのクライアントごとに活動を続けている。
主人公が担当していた今度の選挙は、苦戦が伝えられていた選挙だったが、早い時間に地元の新聞記者から「当確」の報を受け、2週間振りに東京のマンションへ帰ってきた。
その時、電話が鳴って女性の声が響いた。
「あんたのところは、何故門前払いをするの! 連戦連勝という噂を聞いてお願いしたら、結局は勝てる選挙しか受付けないのね。選挙はあんたたちを儲けさせるためのものじゃないのよ。利益誘導型の社会を変え、自分たちで地域を再生させてゆかなければならないの。その応援が出来ないというのはどういうことか分かっているの。出来レースに加担して、世の中を変えようとする力を抑えこもうと言うことなのよ!」
ヒステリックに言うだけ言うと、電話が切れた。
かかってきたのは元首相の地元で、参議院補欠選挙に立候補しようとするバツイチの女性。
分析計算機では0.112という低い数字。国政選挙でしかも女性。最初からクライアントの対象にならない相手。

ところがあるいきさつから、この泡沫とも言える女性候補の応援をすることになる。
この女性候補は農園と低温殺菌処理のミルク、チーズ、アイスクリームの工場を持っており、女性のための駆け込み寺ともいえる施設を持っていた。
駆け込み寺へ逃げこんだ女性は、工場などで働き、立ち直ったあとはキャリアを積み、大学教授、予備校の教師、同時通訳者、ライター、プランナー、会計士、プログラマー、デザイナー、弁護士などとして多士済々な活動をしている。それらが力を合わせ「チーマリサイト」というホームページを立ち上げ「ふる里再生100プラン」という精密な計画を発表し、地元だけでなく全国的な反響を呼びはじめていた。
そのグループの応援を得て、主人公等が考え出した奇策と言える選挙戦が展開してゆく…。


2008年12月19日(金)
第165回「日本で最も美しい村」 [独善的週評]
佐伯剛正著「日本で最も美しい村」(岩波書店 2200円+税)


今から26年も前の1982年に、フランスで64の村が集まって「フランスで最も美しい村協会」が発足した。それがイタリアやベルギーなどにも波及し、2003年には「世界で最も美しい村連合」が設立されてきているという。
日本はまだ参加していないが、筆者は日本の参加準備員の一人らしい。

この著書では11の村を取り上げている。
その中には、最近とみに有名になってきた葉っぱビジネスでお馴染みの徳島・上勝町や広葉樹で黒川温泉を再興させた後藤哲也さんの熊本・南小国町などがある。高い値段に見合うだけのカラー写真をふんだんに使った本なので、目の保養になる。
そして、11の村のうち、なんと北海道の村が3つも取り上げられている。
美瑛町、赤井川村、標津町がそれ。
この3つに限らず、内地のこせこせした風景から見ると、北海道の村はいずれも美しい。
札幌をはじめとした大都市では、無落雪の面白味のない住宅が多くなり、景色が著しく破壊されてきている。もちろん中には素晴らしいシンプルモダンもあるが、正直言って勘弁してくれと言いたくなるものが林立している。それだけに、広大な田舎の風景には、3つの村に限らずいつもほっとさせられる。
しかし、著作にしたがって3つの村(町)を紹介することにする。

美瑛町を「丘のまち」として全国的に有名にしたのは、前田真三という写真家。
氏は40才を過ぎて総合商社を辞めて写真をはじめた。全国を撮影して回っている時に出会ったのが美瑛の丘だった。
われわれが知っている普通の風景写真というのは山や川、あるいは海や木など、自然の風景そのものの写真。真っ赤な夕日に描き出される山のシルエットとか、雪に埋もれた広大なパノラマに映える高い青空と流れ雲とか・・・。
ところが前田氏が撮ったのは、幾何学模様のジャガイモ畑とか延々と続く麦畑の美しさ。
つまり、単なる自然ではなく、人々が手塩にかけて育てた恵の大地。
そこに、人と自然の素晴らしいハーモニーを発見し、それを撮り続けた。
さまざまな畑が、時々の空気や風によって変化する。雨や雷、光と影でいろんな姿を見せてくれる。とくに梅雨のない6月から7月にかけては、その美しさが一入で、多くの観光客を吸引している。
名物のカレーうどんや手作りハムやソーセージをはじめとした食文化もしっかり根付いており、散策するところも多い。美しい村の筆頭に挙げられているだけのことはある。

赤井川村の名の由来は、アイヌ語の赤い川を意味するフレベツだという。
ここは大きなカルデラ盆地で、その面積は洞爺湖や支笏湖よりも広いという。
盆地特有の寒暖の差を活かした野菜作りや果物畑が拡がる村。ジャムやジュースなどで独自のブラインドを誇っている。
しかし、この村を有名にしたのはニューカマーと呼ばれる藤門弘、宇土巻子夫妻。アリスファームという農場のブルーベリーやホテルなどのカントリーライフとその事業は、私のような部外者でもよく知らされている。そのほか有名な「おつけものバイキング」とか大きな蕗のあるコロポックルの森など、訪れる先にはこと欠かない。

標津の語源はアイヌ語の「鮭のいるところ」。町には鮭が戻る5本の川を含めて7本の川が流れている。文字通り大自然と鮭の町。旅の楽しみは秘湯と北の食文化。春は山菜や草花が楽しめて渓流の魚とも出会える。秋は鮭はもとより白樺と紅葉とミヤマザサのコントラスが絶品。冬はグルメが楽しめる。独自の体験プログラムが用意されており、美しさと楽しみが満載。


2008年12月12日(金)
第164回「動物の赤ちゃんは、なぜかわいい」 [独善的週評]
増井光子著 「動物の赤ちゃんは、なぜかわいい」(集英社 1600円+税)


旭山動物園は、すっかり日本一の名所になった。
今年の冬に旭川を訪れた時、足を伸ばそうと考えたが時間がなかった。
しかし本は2冊読んだし、テレビの特集番組はNHKをはじめとして4、5本は観ている。
したがって、見学はしていないが、すっかり分かったような気になっている。
旭山動物園のイノベーションは、動物の見せ方の革命にあった。
その動物の持つ最大の特徴を如何に見せるか。そして、感動をどのようにして呼ぶか。

そういった見える部分ではなく、私ども部外者には全く見えない部分の、動物の生から死に至るまでの数々のエピソードを綴ったのがこの書。
著者は麻布獣医大を卒業して半世紀前に上野動物園に勤務。上野動物園長、多摩動物公園園長を経て母校の教授となり、現在はよこはま動物園ズーラシア園長とコウノトリの郷公園長を兼務している。長年、動物と関わり合ってきているので、この著には私どもが知らないことが次から次へと出てきて飽きない。
本当に心休まる著書で、読んでいてウキウキし、楽しくなってくる。
その数多いエピソードの中から、紙数の許す範囲内でいくつかを紹介したい。

◆動物のミルクの濃度は、その暮らしぶりと深い関係が。サルやゾウのようにいつも親子が一緒にいる場合は薄く、生まれてしばらく子供を巣穴に残して狩に出かける肉食獣や、子供を物陰に隠して親が時折授乳に訪れるシカ、ウサギ類は、腹持ちがよいようにミルクは高濃度。

◆赤ちゃんの性別は染色体によって決まるが、カメやワニは温度によって性が決まります。
例えばアカウミガメは砂の温度が30℃だと性比は1対1ですが、32℃だとメスになり28℃だとオスになります。このことが分かっていないと人工孵化の時、性の片寄りが生じます。地球温暖化で性の片寄りが進み、種が絶滅の危険もあります。

◆アシカは赤ちゃんが生まれる時、身体を曲げて苦しそうに鳴きます。これは苦しくて鳴いているのではなく、赤ちゃんが産道を通っている時に鳴き声を聞かせて覚えさせているのです。したがって、アシカにしてもペンギンにしても、赤ちゃんの大集団の中にあっても親子は鳴き声を聞き分け、間違えることがないのです。

◆ゾウの妊娠期間は22ヶ月。生まれてくる赤ちゃんはすぐ立ち上がって歩けるくらい育っており、体重は100~130キロ。したがってゾウのお産はそれほど安産ではありません。このため、年長のメスが側にいて、生まれた子の世話をします。仲間も皆協力的です。

◆コアラの赤ちゃんは母親の袋の中で半年間はお乳だけで育ちますが、袋を出る前にお母さんの総排出腔から出されるパップを数回食べます。このパップにはユーカリの植物繊維の消化を助ける微生物が一杯入っています。その微生物をもらって初めてユーカリを食べられるのです。

◆草食動物は日に何度も排便します。消化の良い肉を食べている動物は糞の量は少ないのですが、それでも日に一度は排便します。ところが、ナマケモノは一週間に1度しか排便しません。動物園で飼っていたナマケモノで三週間も排便しなかった例があります。

◆動物は自分の縄張りを示すために糞、尿、分泌物、齧り跡、角研ぎ、爪研ぎなどでマーキングします。困るのがカバの雄の糞掛け。大きなカバの背は150cmから165cmあります。このカバが動物舎の壁に向かって糞掛けをすると、そのしぶきは天井にまで届き、室内を汚して掃除が大変。またプールの中でも糞をしますので、強力な濾過装置が必要になります。


2008年12月05日(金)
第163回「プラチナタウン」 [独善的週評]
楡周平著 「プラチナタウン」(詳伝社 1800円+税)


著者は多彩な才能を持っていて、テーマは広範囲。このため、新刊本はよほど注意してテーマを確かめた上で買わないと、裏切られることがある。
私は著者の企業小説の大ファン。「異端の大義」「再生巨流」「ラストワンマイル」「クレージーボーイズ」などは読み応えがあり面白かった。銀行マン出身の作家群よりはるかに上。
しかし表記の著書は、表紙がマンガチックで企業小説ではないから裏切られると考え、書店では手にすらしなかった。ところが偶然入った都心の図書館でこの本を見付けて読み始めたら止まらない。3時間で一気に読み終えた。大きな感動が残った。

主人公山崎鉄平は、四井商事食料事業部穀物取引部の部長。
世界を相手に先物取引をしているから夜中でも電話で叩き起こされ、真夜中に部下に指示を出すことは日常茶飯事。このため、奥さんは別の部屋で寝るようになり、夫婦の中は冷えていた。しかし仕事は面白く成果が上がっており、将来は役員になれる可能性もあると考えていた。
ところが、上司の無能な息子とも知らず採用に×印をつけたため、関連子会社へ左遷を命じられる。
その前に、仙台から2時間もかかる生まれ故郷の宮城県緑原町役場に勤める中学時代の同窓生、通称クマケンから「上京するから是非相談にのって欲しい」との電話があり、会った。
用件は「市町村合併で東西の松岡町と一緒に緑原町も宮川市に合併されるはずだった。ところが9期36年間も続いた前町長が、箱物建設で150億円もの大赤字を出して四苦八苦。このため3町1市で合併するはずが2町1市の合併となり、取り残された緑原町は財政破綻に陥ろうとしている。なんとか町へ戻って町長になり、町を再建して欲しい」という町役場こぞっての嘆願書を携えていた。即座にダメと断った。
ところが。左遷を命じられた夜に深酔いして、クマケンから掛かってきた電話に無意識の中でOKと言ったらしい。

そして、無投票で町長に選ばれ、生まれ故郷へ戻ることになるのだが、普通の小説だとここで夫婦の葛藤が微細に描写される。でないと、人間山崎鉄平が描けず、小説として内容が薄いものになってしまうから・・・。
ところが著者は、あえて夫婦間の葛藤を省略している。奥さんがどのような経緯をたどって田舎町への移住に同意したのかが分からない。小説として一番盛り上がる部分を省いて、もっぱら如何にして財政破綻の町を救ったかに話を絞っている。
これは、小説家としては無謀と言える大冒険。それをあえてやっているところに、高齢者社会に対応する企業の在り方を模索したこの企業小説の、高い存在価値がある。

新町長が町内の施設を調査して回ると、あまりの非効率さに呆れてしまう。町議員の歳費をはじめとして徹底的に人件費と事業削減を図るのは当然。どんなに議会が反対しようが債権団体に転落するよりはまし。しかし、町を活性化させるには、絞るだけではダメ。町に人が集まってくる仕掛けが必要。どこか活路を見いだせるところはないか・・・。
そして、新町長が目をつけたのが3万坪に及ぶ工業団地。バブルがはじけた後で、1区画も売れていない。これをそっくり高齢者の施設用に転用出来ないか。

そこで、四井商事に働きかける。四井商事では都会からの退職者をターゲットにしたアミューズメント街づくりという新しいプロジェクトが動こうとしていた。新町長はそのプロジェクトへ食い込んでゆく。そして、このプロジェクトのソフトの細部を、鮮度の高いセンスで描き切った四井商事の主役が京大法学部卒の若手の渡辺女史。利権まみれの町議の大ボスを見事にこらしめる大活躍に思わず拍手をした。 ともかく、私などの想像をはるかに超える企画力と実行力で、人口8000人の新しい街を創りだしてしまう物語。住宅関係者にとって必読の好書。


2008年11月28日(金)
第162回「里山ビジネス」 [独善的週評]
玉村豊男著「里山ビジネス」(集英社新書680円+税)


著者は東大仏文科卒。在学中にパリへ留学。食を中心とした執筆活動に入る。
1983年、東京での生活に体調を壊して軽井沢へ移転。ここで、夫妻で野菜づくりの楽しさに目覚める。
そして、もう少し本格的に野菜づくりをはじめたいという考えと、老後の隠遁の場として選んだのが現東御市。佐久平から上田盆地にいたる千曲川沿いの丘陵地帯。その北側に位置する標高850メートルの山の上に家を建てたのが1991年。

その翌年、趣味でブドウ畑をつくった。
この辺りは放棄畑地が多くて、比較的簡単に農地を借りることが出来た。
昔は養蚕で栄えたが、今はメインの農産物がない。高齢化で放棄畑地が増加している。
そこで600坪の土地に500本のブドウの苗木を植えた。これが、ことの始まり。
著者は、いままでに約60冊近くの本を著している。このほかに8冊の画集も出している。
私はそのうちの1/4程度しか読んでいないが、それらの本には野菜作りからブドウ栽培を始めるにいたった経緯。そして、やがてワイナリーづくりへと決意を固めていった経緯が、こと細かに書かれている。
したがって、この本のかなりの部分は二番煎じ、三番煎じ。

ワイナリーと併行してレストランを開設したのか2003年。
イタリアなどでは、ほとんどの農家が自宅の納屋で簡単に自家用のワインをつくっている。
ワインづくりの工程は、いたって単純なもの。
収穫したブドウを潰して、果汁を搾る。それをタンクに入れて発酵させる。
発酵が終わったら、静かな暗い場所で貯蔵する。それだけの話。
したがって、どの農家も納屋に簡単な道具をしまっておいて、収穫の時期がきたらブドウを搾って貯蔵しておく。
農家の納屋や倉庫を意味するワイナリーという言葉は、そこから出ている。
そして、ヨーロッパでもアメリカでも、ワインの生産に対する量的な規制がないので、IT産業がガレージから始まったように、いまでもガレージワインが存在する。

ところが、日本でワインをつくるためには税務署の酒造免許を得なければならない。
ワインをつくりたいと思う者は、何はさておき果実酒製造免許を申請しなければならない。
どぶろくに関しては特区が出来ていて、その特区だったらそれほど量的な規制に縛られなくどぶろくをつくることが出来る。
ところが、ワインには特区がない。
ワイナリーをつくろうと申請すると、税務署の担当者はにこやかに笑って「結構ですね。大いに頑張って下さい。ところで、年間6000リットル以上の生産が可能な設備と施設をつくるだけの資金が用意出来ていますか。なければ、どのように調達される考えですか」と親切ていねいに聞いてくれる。6000リットルといえば、ワインボトルに換算して8000本。
これでは、農家が片手間に出来る規模ではない。つまり税務署が生産規制をしている。

8000本のワインを製造出来る能力のある機械は、3万本も5万本も製造出来る機械。場合によっては10万本も製造も出来る。その機械一式を揃えると4500万円もかかる。しかもこの機械が稼働するのは年に1ヶ月だけ。それにブドウ畑に対する投資もバカにはならない。
とてもじゃないが、日本では里山の丘陵地を利用してのワイナリーは、採算に合わない。
しかし、筆者が成功したのは、30年近い著作活動を通して全国にファンを持っていたから。
ワイナリーと併行して発足させた辺鄙なレストランへ、毎年5万人もの人がおしかけてくる。
里山のある丘陵地では、少品種大量生産は不可能。土地の高低を利用して多品種少量生産の野菜をつくり、それを地産地消する産業形態の起業の必要性を、著者は熱く語っている。


2008年11月21日(金)
第161回「日本政府の森林偽装」 [独善的週評]
平野虎丸著「日本政府の森林偽装」(中央公論事業出版 1300円+税)


すごい題名と中公という出版社名を信用してメールでこの本を買った。著者は林業関係の研究家かジャーナリストだろうと想像して…。
ところが、林業関係者ではあるのだが「野鳥密猟Gメン」を結成するなど、正体がはっきりしない。しかも、書き下ろしではなく、ブログをかき集めただけのもの。まがいものを捕まえさせられた、と思った。

しかし、読んでゆくうちに、少しはまともなことも言っていることがわかった。
著者がブログの中で繰り返し強調していることは「林野庁は必要ない。林野庁こそが自分達のために日本の国土の中でも最も大切な山奥の自然林を伐採し、環境を破壊している張本人。それなのに緑を守るとか環境を守ると言っているのは完全なペテン。これは赤福や白い恋人などとは比較にならない大偽装だ」というもの。
このことだけを繰り返しているので、読んでいるうちに嫌になってくる。出版する以上は、ブログの丸写しではなく、読者に分かり易くきちんと論点を整理すべき。そういう意味で出版社の責任は大きい。なぜ全面的に書き直しを要求しなかったのか…。
そこで「はた」と気が付いた。中公を名乗っているが、事業出版というのは自費出版を担当している部署? 仮にそうだとしても、これでは中公の名が泣くというもの。
そこで、中公に変わって、私が著者の言わんとすることを簡潔に整理してみたら、以下のようになった。

猪瀬直樹氏の「日本国の研究」の中に、林野庁問題として次のような記述がある。
山形県と新潟県にまたがる朝日連峰。標高600メートル以上ではスギは育たない。にもかかわらず、稜線の1000メートルまでスギを植林。大規模林道は土石流が多い。1台の車も通らない道なのに補修工事が必要。総事業費282億円。
花崗岩の深層風化地帯であり、いくら巧妙に林道設計しても山腹崩壊を伴い、修復工事は永久に。流れた土砂は下流で災害の元凶となる……。

山奥は日本国土の中心であり、大切な宝。その大切な山奥の国有の自然林を皆伐しているのが林野庁。こうした標高の高いところにある自然林は、酸素や水源の生産地であるだけでなく、野生生物や植物の生息地としても重要な役割を果たしている。また、台風や大雨による土砂崩れから国土を守っている。それなのに、自然林を伐採し、スギやヒノキの挿し木苗を植えても根が育たず、地下水の涵養能力は低い。そして、こうした針葉樹の密植林地は野生動物の生息地に不適で、彼等を山から人里へ追いやって、野生動物と人間の共生関係が崩れ、ともに大きな被害を受けている。

林野庁が、職員と高給官僚の給料を支払うために、山奥の国有林の中の樹齢数百年のブナやナラなどの広葉樹を皆伐しているだけならまだ許せる。
皆伐した後へ森林破壊を誘発するスギ、ヒノキを植え続け、花粉をまき散らしている。これは自分らの仕事が切れないようにすることだけが目的。そのために膨大な赤字を膨らませ、国土を守るという名目で間伐や植林や林道工事に税金を投入し続けている。これは、日本国土に対する犯罪行為であり、偽装以外の何ものでもない。
木材生産が不要だと言っているのではない。標高の高い国有林での針葉樹の生産をやめ、林野庁を解散して木材の生産は低地の民間に任せる。そして、集約化のためにある程度の税金は投じる。しかし、国有林の高山には人間の手を入れなくても、根の弱い針葉樹は自然に倒れ、その跡に広葉樹が生えてきて日本の山は自然に森林になる。植林をしなくても山は生きる。その自然力を、大量の税金を投入して殺しているのが林野行政。国有林の森林整備と温暖化対策には費用が一切不要だと著者は力説する。


2008年11月14日(金)
第160回「たった一人の大きな力」 [独善的週評]
蓮見太郎著「たった一人の大きな力」(宝島社 848円+税)


この本は不思議な本である。
われわれが眼にする建造物や自然は、多くの人々の共同作業で造られてきたもの。
あの巨大なピラミッドをはじめとして、歴史上の神殿の数々、宗教的な建造物、公共的な道路や水路、築堤、あるいは桜並木ひとつにしても、個人の力で出来たものではない。
多くの人々の血と汗の結晶の結果である。

ところが世の中には、一人の力で、それこそ天文学的な時間をかけて、奇想天外ないことをやってのけることがある。
そのとてつもない事例を、世界各国から30例を集め、美しいカラー写真で紹介しているのがこの本。

中には、リヤカーを引いて44,000kmも地球上を旅して回った人とか、一人でインドの貧しい人々のために一日100人から500人の患者を無料で診て回ったイギリス人とか、カンボジアで一人で地雷を撤去して回った日本人とかというふうに、形に残らない「一人の力」もとりあげられている。
しかし圧倒的な多くは、その一人の人間が造った建造物が、時間を経た上で社会的な評価を得てきているものが多い。
その中で、私の心に残った3つの建築物の事例を紹介することにしょう。ただし、カラー写真がないのでその凄さや美しさは、想像力をたくましくしていただくしかないのだが…。

ドイツ人のユンカーさんは、木工職人と独立するだけでは物足りなくて、建築家になるためにミュンヘンとイタリアで古代ギリシャ、ローマ、ルネッサンス建築などを学んだ。そして、31才の時故郷のレムゴに戻り、建築家としてスタートしようとした時、祖父が亡くなり、膨大な遺産が手に入った。そこでユンカーさんは、それからの一生をかけて外観も内観も、芸術的なセンスと彫刻で飾られた素晴らしい住宅と家具を一人で造り上げた。
ドイツの住宅には地下室がある。その上に三階建ての木骨土壁造。ピカソを連想させる近代的なタッチだが、しっかりとしたシンメトリーで立体的な美しさを備えた外観が特に良い。内観は彫刻のオンパレード。没後80年たって州政府は芸術作品として保護し、一般公開している。
是非、一度訪ねてみたいという魅力にそそられる住宅。

アメリカコロラド州に暮らすジムさん。ひょんな動機から15才の時両親を説得して森の中に広大な土地を購入して、一人で石のコテージをつくりはじめた。
やがてコテージの壁が出来あがりつつある時に、多くの友達がやってきて「何をつくっているのだ。これは城なのか?」と異口同音に聞いた。そこでジムさんは28才の時「私の造っているのは大きな石の城なのだ」と言ってしまった。言ってしまったが城をつくるに必要な知識もなければノウハウもない。にわか勉強でイラストを描き、設計図のないまま城造りが始まった。使った石は1000トン以上。塔の高さは50メートルという規模。すでに30年以上かかっているが、完成にはいたっていない。最終的には濠を巡らし、橋を架け、オーケストラの演奏が出来る大きなバルコニーを持つ城になるはずだが…。

今から135年も前にフランスの片田舎に生まれたシュバルさん。31才の時に郵便局員の職を得てアルプスの麓を毎日30キロも歩き続けた。そして、ある日美しい奇石を発見し、その石を集めて積み上げ、理想宮を建てようと決心した。しかし村人は芸術家でもない単なる郵便局員にすぎないシュバルさんを気狂い扱い。しかし、30年をかけてこの著書の表紙に印刷されている立派な宮殿を造り上げた。政府から文化遺産として認められ、訪問者はひきもきらないという。


2008年11月07日(金)
第159回「自立農力」 [独善的週評]
尾崎 零著 「自立農力」(家の光協会 1400円+税)


この本は不親切。
著者の生い立ちとか、有機農業運動にかかわった動機などが書かれていない。
1973年に有機農業運動にかかわったとプロフィルに書いてあるだけ。
そして、運動に加わって間もなくサラリーマン生活をやめ、有機農業運動で知り合った仲間がいた大阪府能勢町に古い農家を借り、一山超えたところに2反(600坪)の農地を借りてサラリーマンを卒業、百姓に転向した。

つまり、サラリーマンという管理社会に嫌気がさしたとか、融通のきかない上役などとの人間関係のストレスに悩まされたとか、仕事に面白さと生き甲斐を感じなくなったから脱サラしたというのではない。
最初から「有機農業運動」をやろうという目的があり、その目的に奥さんも同意したから、簡単にサラリーマンをやめ、有機農業運動の友人を頼って能勢町に赴き、イロハのイの字からの有機野菜づくりをはじめたというのが本当の経緯らしい。

ともかく、この著者は最初から「運動」や政治に高い関心を持っている。
その自分の関心で本を書いているから、あまり面白くない。
政治に高い関心を持ち、やがて有機野菜運動に転向した代表的な人物としては、歌手・加藤登紀子の旦那さんだった故藤本敏夫氏がいる。
「大地を守る会」を組織して、オーガニック野菜の直販システムをいち早く確立し、現在でも「鴨川自然王国」は、若い人が農業へ参入するための道場として立派に機能している。
そして、藤本敏夫伝の中で面白いのは、政治的な側面ではない。
新しい有機農業という「事業」にどう立ち向かい、どのようにして消費者に直結し、事業を軌道に乗せていったかというイノベーションにある。

ところが、この著者は各地で講演を行い、2007年4月に制定された「有機農業推進法」に大きく関わったほどの有名人らしいのだが、そういった政治談議が先行して有機農業づくりのイノベーションがあまり語られていない。しかし、その中で1、2面白い意見が開陳されている。
まず、「やたらと規模を大きくせず、小さな畑で多品目少量生産をする」という点。
農業で自立するということは、「自分が食べる野菜はすべて自分でつくる」ことがまずスタート台。現在では奥さんと次男がレストランをやっているが、そこに必要な野菜を含めてすべて自給自足が根本思想。したがって、どうしても多品種にならざるを得ない。
最初は失敗を見込んで大量に作付けした。そうすると草刈りなどの管理作業が大変。少量で失敗せずに育てるというノウハウが出来、収穫したものすべてを消費者に届けることが出来れば、ムリをして大量生産をする必要がない。やたら儲けようとさえ考えなければ、この方がいい。
農業に新規参入するには「1町 (3000坪)以上でないと農業では生活できない」ということであれば、高い参入壁で誰も参入出来ない。また、広い農地を貸してくれるところがない。
しかし、2から3反ぐらいの農地なら見つかるし、それほどリスクを覚悟しなくて新規参入出来る。大規模農業とは別に、個人企業では小規模多品種少量生産の方が、メリットが大。

農業は作ることもさることながらお客を見付けて売ることが肝心。
仲間と直売所を設けたり、チラシを作成してボステングや新聞に投稿などを繰り返し、有機野菜の良さを宣伝した。そうした中で地元新聞が取り上げてくれ、スーパーから店頭販売の話が持ち込まれた。その時「定められたマージンは払うから、価格は私の方で決めさせて欲しい」と懇望した。交渉が決裂しようとした時「その代わり売れ残って野菜は全部私の方で引き取ります」との一言で契約が設立した。そして、年に1から2人、今までに40人近い商社マンからエンジニア、学生など多彩な研修生を受け入れ、就農支援や各方面での活躍を応援している。


2008年10月31日(金)
第158回「海から見た地球温暖化」 [独善的週評]
JAMSTEC Blue Earth編集委員会編 「海から見た地球温暖化」(光文社 1600円+税)


この著は海洋開発研究機構の隔月刊「Blue Earth」を再編集したもの。
昨年発表されたIPECの第4次評価報告書。この報告書に対する懐疑論者がいるのは事実。懐疑論者の意見は2つに集約される。
(1) CO2の増大が、人間の活動に由来するという原因が十分に証明されていない。
(2) 気候変動は自然現象。現在の温暖化もその一環で、周期的なもの。とりたてて警戒する必要がない。

たしかに、地球が誕生してから様々な原因で地球は温暖化したり寒冷化したりしてきた。気候の変動は地球の活動そのもの。その原因には周期的な地軸の傾きや太陽の黒点などもある。
そういったいろんな原因研究をウォッチし、IPECは評価してきた。
20年間にわたって地道な調査活動も行ってきている。
そうした膨大なデータは、今まで正しく解析することが出来なかった。
しかし、日本が開発した世界最速のスーパーコンピュータで、今までの周期的な自然現象では説明出来ないところを抽出した。つまり、自然現象とは別な「長期的な傾向というかトレンドが現れている」と指摘したのである。

これに対して、懐疑派からは、このスーパーコンピュータのデータを否定するに値するほどのデータが、何一つ提示されていない。
そして、何が目的なのかは分からないが、私のホームページなどにもわけの分からない内容が送付されてきたり、中傷的な書き込みがあったりする。
つまらない「北極圏のサイエンス」などを送付して、スーパーコンピュータに太刀打ち出来ると考えているのだろうか。60数年も前に、竹槍でB29に対抗しようとした愚かすぎる発想に酷似している点が情けない。

原子力船「むつ」の原子炉部分を船体ごと撤去して、1997年より「海洋地球研究船」として大活躍している「みらい」。
北極海の海氷の減少の調査をはじめとしてエルニーニョ発生予測の調査まで、実に地道な調査を積み重ねてきている。
インド洋の熱帯域で日本人が発見した海水温の異常現象の「ダイポルモード」。
エルニーニョ現象を発生させる原因と言われているインドネシアに現れる不思議な雲MJO(マッデン・ジュリアン振動)を追う定点観測。
世界の海に3000個ものアルゴフロートという測定器を配置し、10日周期で海深2000メートルまでの温度と塩分を測定し続ける国際協力による「アルゴ計画」。
さらには「深層循環」の海水温度の調査。
あるいは北太平洋における自動採水装置によって得られる海水を分析して植物プラントとCO2との関係、並びに海洋と大気の相関関係の調査。
海底堆積物の調査、etc。

このうちの、どの要因がどのようにからまって気候変動が起こるのかが分からない。
残念ながら基礎データがあまりにも少ないので、数百年から千年の周期を持つ気象変動を、現在の海水調査程度ではコンピュータにシミュレーションさせるに至らない。
一番大きな要素は「雲」。雲は太陽光を跳ね返したり、地球からの赤外線をため込んだりしている。雲の発生状態によって地球全体の温度も決まってくる。
それに劣らないくらいに大きな影響をもたらすのが海。とくに大気の冷却や風で海がどれくらいかき混ぜられるかが分からないと、海による熱やCO2の吸収量が分からないという。
懐疑論者の机上論とは別に、日本の科学者は「海」という現場で貴重な調査を続行している。


2008年10月24日(金)
第157回「いのちを産む」 [独善的週評]
大野明子著、宮崎雅子写真 「いのちを産む」(学習研究社 2600円+税)


大きな書店へ行くと、たいがいの人は自分が興味のある、関心の高いコーナーにしか足を運ばないはず。
私も、経済や経営のコーナーからはじまって建築・住宅コーナー、環境や農林水産業と一般人向けの医療コーナー、ノンフェクションや旅のコーナー、新書版コーナー、そして最後に小説のコーナーをちょっとだけ覗く。
つまり、大きなブックセンターへ行けば行くほど、選ぼうとする本は限られてくる。
ところが、図書館の新刊本コーナーでは、時折「あれッ」とびっくりする本にぶつかる。
ブックセンターでは絶対に寄ることのないコーナーに置いてある本。自分の選択肢にはない本に遭遇した時のこと…。
この著書が、その代表的なもの。
まさかこの年になって、出産に関する本を読もうとは夢にも考えていなかった。

著者は大学院で地球化学の博士課程を修了した時に一人っ子の男子を出産した。
その時、切れた会陰とおっぱいが張る痛みに苦しんだ。
「これじゃない。もっと自然で、痛くない出産があるはずだ」と考え、急遽産科医になろうと決めたという変わった経歴の持ち主。
改めて医学部を卒業し、赤十字をはじめいろんな病院に勤務したあと、1999年に東京・杉並に「お産の家 明日香医院」開設し、すでに1500人余の赤ちゃんの誕生に携わってきている。

現在では、帝王切開によっての出産の比率が3割近くになっているという。
ところがこの明日香医院では、帝王切開の比率が2パーセント。
ともかく分娩台がないし、手術台もない。したがって、どうしても帝王切開が必要な妊婦を転院させたり、分娩時に搬送したのが4パーセント。
そして仰向けで出産することはなく、配偶者に抱かれたり、四つんばいになったり、側臥位で出産する。
この自然出産のために、妊娠中の妊婦に努力をしてもらう。
まず、毎日3時間の散歩を奨めている。そして太らないように、米食を中心に食事を変えて食べ過ぎをやめ、身体を動かしてもらう。そして、早寝早起きの規則正しい生活をしてもらう。
そして、1ヶ月後の検診の時の母乳率は98パーセントという。
これは、医療者の成果ではなく、妊婦の自覚と努力の賜物。
リスクを犯して経膣分娩を試みたのではなく、安産ができるように準備し、リスクを減らす努力を重ねた結果、帝王切開をしなくてよくなり、母乳もよく出るようになった。

さて、ここまでの内容だったらこの本の価値は、それほどでもない。
この本のすごいところは、写真家の宮崎雅子が、出産に関わるあらゆるシーンを、モノトーンの写真で記録しているという点にある。
この本に収録されている写真の数は約100点。
その中には、赤子が膣から顔をだしたばかりの写真も何枚かある。
そして、陣痛で苦しんでいる妊婦の顔写真が何枚もある。しかし、それは非痛感がなくて、生命力で輝いて見える。
出産に立ち会っている夫の表情も実に良い。
また、新しい弟や妹に接する子供達の好奇心と神秘に揺れている表情。
そして、生まれたばかりの赤子のなんと美しいことか…。

この本のほかに、宮崎雅子が明日香医院で出産を撮影した「地球交響曲第五番」のロケの話も収録されている。最後まで一気に読ませるだけの内容を持っている。


2008年10月17日(金)
第156回「愛なき國・介護の人材が逃げていく」 [独善的週評]
NHK取材班&佐々木とく子「愛なき國・介護の人材が逃げていく」(阪急コミュニケーションズ1500円+税)


2000年4月に「介護保険法」が施行され、それまでは介護は「個々の家庭の問題」であったものが、初めて「介護の社会化」ということで、公の場に引き出されてきた。
これは、たしかに大きな前進であった。
ともかく、いろんな問題があるが、歩きながら考えようということでスタートさせたことは、決して間違ってはいなかった。

この介護法が制定された時は、日本は不況のどん底にあった。リストラが進み仕事のない人が一杯あふれていた。したがって介護施設が、少しでも新しい職場を提供してくれるのではないかと、全国的に歓迎する空気が強かった。
このため、介護労働力の問題が最初から等閑視されてきた。
ところが、日本経済が不況から脱出し、人手が足りなくなってきて介護に携わっている人材の逃亡が始まった。
離職率は20パーセントを超えたという。
その最大の原因は、給料の低さにある。

日医労漣の調査によると、介護・福祉分野の正社員の平均給料は、月21万7300円だという。
4割以上の人が20万円以下だと述べている。
全産業の男女合わせた給料の平均は33万900円。つまり、1ヶ月で約9.2万円も安い。
これにボーナスの差が加わる。
全産業の平均賞与は92万2400円。これに対して介護・福祉関係の平均は65万1400円。
つまり、年間137万円も低いという勘定。
これでは結婚適齢期を迎えた若者は、逃げ出さざるを得ない。
この実態をNHKが取り上げて放送した。
その放送内容を基に、ライターの佐々木とく子女史が追加取材をしてまとめたのがこの本。

単に給料が安いだけでなく、将来に対する展望が拓けていないから脱走する若者。脱走された後を埋めるには2年間もかかるという実態が、かなり精緻に描かれている。
私のような門外漢にも、問題の所在がよくわかる。
ともかく介護事業者の収入は、基本的に介護報酬のみ。その報酬額がきちんと決められている。その決められた報酬の中から、利用者の送迎に必要な車両代、通信費、光熱費、設備費と人件費を賄わなければならない。
この人件費の比率が70%を越すと、事業として赤字になる。
つまり、人件費を上げたら即赤字化して事業が傾いてしまう。このために、人件費を上げるに上げられないと、泣き言の実態報告が延々と続く。

そして、あのコムスン事件やフィリッピン介護士の受け入れ問題にも言及している。
しかし、いくら読んでも「大変だ」という声だけで、この著書の中には具体的な解決策がほとんど提示されていない。
それが、なんとも切なくて、読んでいてイライラしてくる。
その中で、唯一の救いは(有)笑う弁護士代表の袖山卓也の活動。
同氏は中学から高校にかけては立派な不良少年。バイクで事故死した友達の葬式で泣き叫ぶ母親の姿を見て足を洗い、高齢者介護の道へ入った。そしてデイサービスの施設長として「あそこは凄いと」という評判をとったところで独立。施設立ち上げのソフトを開発し、次々に新しい施設立ち上げに協力し、人員と利用者確保の面で輝かしい実績を上げてきている。
この著書では触れていないが、ワタミの「アール介護」などをはじめとして、介護関係でもいくつかの成功事例が出てきている。そうした成功例に焦点を当てずに、いたずらに問題点やマイナス点だけを列記しているのが、この著書の最大の欠点。


2008年10月10日(金)
第155回「たべること、やめました」 [独善的週評]
森美智代著「たべること、やめました」(マキノ出版 1300円+税)


栄養・養護短大を卒業した著者は、高校時代からの夢であった養護教諭、つまり「保健室の先生」として楽しい毎日の仕事に生き甲斐を感じていた。
ところがある日、ひどい目まいやふらつきが起こり、普通に歩けなくなってよく転ぶようになった。視界がぐるぐる回るのではなく、地面がせり上がってきたり、逆に沈みこんでいったりする感じ。常に地震が起きている感じでバランスがとれず、右に重心がかかったとたんに右に倒れ、左に重心を移すと左に倒れるというありさま。

「ひどい貧血か平衡感覚がおかしいから内耳の病気だろう」と考え、何軒かの内科や耳鼻科を訪ね検査をしてもらったが「あなたは健康です」「異常はみられません」と言われるばかり。
あちこち訪ねているうちに、ある内科の先生が歩く様子をみていて「もしかしたら小脳性の失調障害かもしれない」と神経内科を紹介してくれた。
そこでCTスキャン検査をしたら、いきなり言われた。
「あなたの病気は小脳が小さくなってゆく病気、脊髄小脳変性症です。小脳の細胞が毎日減っていって、やがて寝たきりになります。この症状がなぜ起こるのかが判っておらず、治療方法はありません。余命五年という難病です」と21才の時に言われた。

いきなり余命五年と言われて落ち込まない人間はいない。運命を恨んだが何ともならない。
その時、高校二年生の時、伯母に連れられて五泊六日の「半断食」を経験したことを想い出した。一日のエネルギー摂取量600キロカロリーという半断食だったが、担当した甲田先生は信念と情熱の持ち主で、断食や小食治療でガンなどの難病患者を治していた。
「そうだ。私の難病を治してくれるのは甲田先生しかない」と急いで門を叩いた。

おなかを触っていて甲田先生は「おなかにガスが溜まっているのが原因。断食すれば治る」と断言してくれた。地獄で仏とはこのこと。
しかし、養護教諭はやめなかったので、断食できるのは夏休み、冬休み、春休みしかない。
断食をすると身体が良くなってふらつきもなく歩けるようになる。しかし、学校がはじまると「玄米菜食」をとるのですぐ悪化する。本来は「生菜食」にしたかった。高校の時に試食した時は頭も冴えて良かった。ところがどうしたことか罹病してからは生菜食を摂るとふらつきがひどくなり、身体が受け付けず、治療の足踏み状態が続いた。

これではダメだということになり、学校を退職して24日間の長期断食に取り組んだ。
この断食で51.4kgあった体重が46.5kgに減った。断食が終わって1600キロカロリーの食事をしても体重が増えず、症状の悪化が懸念されたので次の断食に移行した。
その断食でさまざまな宿便が出て、病気は回復へ向かった。
そして、宿願だった生菜食にも取り組み、これを成功させることが出来た。そして900キロカロリー/日にしたが、どうしたことか体重が増え始めた。
それで徐々に生菜食から野菜汁だけにし、さらにハチミツを抜いたり、ニンジンを抜いたりして青汁の材料を250キロカロリーから150キロカロリーへと減らした。そして12年前からは1日1食、60キロカロリーの青汁だけで生活している。このほかに甲田先生の指導でサプリメント3種を飲んでいる。藻から精製した「スピレン」20錠、整腸エピオス20錠、ビタミンCが1錠。これだけ。

三大栄養素、エネルギーの取得はゼロに近い。それなのに健康診断では全く異常がなく、握力などは一般女性よりも強いという。そして牛のように植物繊維を分解する菌も備えているという。絶食により摩訶不思議な体質に代わり、余命五年が二十数年になり、鍼灸院の院長として元気に働いている。 断食効果の大きさ驚かせられる。


2008年10月03日(金)
第154回「建築家は住宅で何を考えているのか」 [独善的週評]
東大デザイン研究室編「建築家は住宅で何を考えているのか」(PHP新書 1400+税)


この本は、東大大学院建築学難波和彦教授、同じく山城悟助教、同じく千葉学助手の3人が、
(1)家族像とプランニング (2)ライフスタイル (3)集住/かたち (4)街/風景 (5)工業化と商品化 (6)リノベーションの可能性 (7)エコロジカルな住宅 (8)素材/構法 (9)ちいさな家 (10)住みつづける家…の10項目にわけ、建築家の建てた住宅をそれぞれ4点ずつ紹介するという形でまとめられたもの。

建築家が設計する住宅は、ハウスメーカーの住宅や一般的な注文住宅とは異なる。
その最大の理由は、住宅に関する「建築家のヴィジョンにある」という大前提で編集がなされている。
つまり、そこいらのハウスメーカーやビルダーに所属する一級建築士などが、クライアントの要求や敷地、予算、法律、技術といったさまざまな条件を考慮して建てている住宅にはヴィジョンがない。
これに対して、名のある建築家の建てた住宅は「ヴィジョンを通じて社会に何らかの問いかけを行おうとしている点が違う。建築家は、特定のクライアントや敷地で設計を進めながら、そこに個別性を超えた社会的なテーマを埋めこもうとしているのである」と。

そして、平面図や断面図だけでなく、カラー写真がふんだんに使われている。
つまり編者の推薦する優れた建築家による代表的な住宅が、一冊で41戸もまとめて見ることが出来る。それがたったの1400円で手に入るというのだから安いだろう。
「どうだ、参ったか」とのたまっておられる。

ところが、どんなに建築家先生が自画自賛されようが、私の感度計が鈍いせいかこれらの図面や写真を見、解説を読んでも一向に感動が湧いてこない。
宣伝されている社会的なテーマとかヴィジョンが伝わってこない。

紹介されている41点の中には、お馴染みの手塚貴晴・由比の「屋根の家」や伊東豊雄の「東雲キャナルコート」や秋山東一の「Be/412g22」や藤森照信・大嶋信道の「ニラハウス」などが紹介されている。
この範囲なら私の感度計で理解できる。
しかし、それ以外の住宅は、つくづく「人間不在の住宅」という気がしてならない。

住宅というのは、住む人の心が休むものでなければならない。
ストレスが解消し、安眠出来るものでなければならない。
それには、まず何よりも綺麗な空気が絶えず緩やかに循環していなければならない。
そして、温度差がなく、夏期はやや高温で除湿され、風を感じない爽やかな高原の空気が満ちていなければならない。熱帯夜などはもってのほか。
反対に冬期は、加湿されて静電気の起こらないソフトな空気が、人々をやさしく包んでくれていなくてはならない。うたた寝しても絶対に風邪をひかぬ家でなければならない。
そして、ゆったりとした吹き抜け空間があり、自然のゆがみのある控え目な木目模様や柾目模様が囁きかけてくれなければならない。

しかし、住宅というのは憩いの場だけではない。
食事をつくり、食べ、飲み、洗濯をし、入浴し、排泄し、セックスをし、団らんし、勉強し、時には仕事もしなければならない。それらをまとめて生活という。
つまり、それぞれの機能が最大限に発揮出来る動線と空間が用意されていなければならない。
その視点で見ると、建築家の自己主張だけが目に付き、とても住む気にはなれない作品集。


2008年09月26日(金)
第153回「医療格差の時代」 [独善的週評]
米山公啓著 「医療格差の時代」(ちくま新書 680円+税)


医療は常に基準値を作ってきた。
高血圧症であれば血圧の基準。糖尿病であれば血糖値。
高脂血症であればコレステロールと中性脂肪値。肝臓であればGOTやGPTなど肝機能を示す数値。
その基準値を変え、厳しくすることによって患者が急増する。これは医者にとっては診療報酬が増大することを意味し、製薬会社にとっては市場が拡がることを意味する。

読売新聞は次のような調査を発表している。
2004年発表の「高血圧治療ガイドライン」の改訂には、9人の委員全員に02年から04年にかけて計約8億2000万円の寄付が製薬会社から支払われている。
2007年の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」の改訂の折には、4人の委員いずれにも3年間で計約6億円の寄付が、治療薬メーカーからあった、と。
こうして、私も高血圧症患者の一人に加えられた。催眠薬が欲しいからいやいや高血圧の薬も処方されているが、飲んだことはない。年をとると多少血圧が高いのが正常。そこいらのお医者さんよりは私の方がはるかに健康だと考えている。だから製薬会社のお抱え委員のガイドラインは、意識的に無視することにしている。

さて、今年になって話題になっているメタボリックシンドローム。
「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」の場合は、作成委員会メンバーのうち国公立大学の医師11人全員に、02年から04年の3年間に、計約14億円の寄付が、高血圧などの治療薬メーカーから支払われたと読売新聞は報道している。
製薬会社は、新しい儲け口として「メタボリックシンドローム」という病気をつくることに成功したのである。
その基準となったヘソ回り腹囲男性85cm、女性90cmというのは、世界的にみても何ら科学的な根拠がないいい加減な数字だとされている。

本来であれば、こうした基準値は大規模な調査をし、その数値の妥当性を精査してから決めるべきもの。それが、製薬会社からお金をもらった国公立大学の11人の無責任な医師によって、簡単に決められてしまった。
厚生労働省の試算では特定健診の対象者は5700万人で、指導や治療が必要になるのは1900万人と予想している。このメタボ健診で2015年までに糖尿病などの生活習慣病とその予備軍を25%減らせ、25年度には医療費が2兆円削減出来るとタヌキの皮算用をはじいている。
このメタボ健診の最大の特徴は、健診率や改善率が低いと保険組合にペナルティが科せられることにある。ペナルティによって財政負担を軽くすることに本当の狙いがあるのだろう。

このメタボ健診は、昔からあった「百貫デブ」と子供達のいじめ用語を正当化して、卑劣ないじめに発展する可能性が非常に高い。
また、企業としては、メタボ健診の成績をよくするため、肥満な若者を採用戦線からはじき出すことになりかねない。つまり、肥満の原因を全て個人の節制のなさにあると決めつけ、個人の生き方の自由を厚生労働省が管理する社会になる怖れがある。
メタボの直接原因は食べ過ぎや運動不足かもしれない。しかし、本当の原因は職場のストレスであり、長時間労働や過労かもしれない。肝心のそこにメスが入るのだろうか。

このほか、日本における医師不足の現実や、研修医制度変革による医局の崩壊の現実、開業医の実態など、多面的に問題を追求している。そして、題名にあるほど日本では医療格差が広がっていないことを示し、医療制度改革の具体的な方向を提示してくれている。


2008年09月19日(金)
第152回「偽善エコロジー」 [独善的週評]
武田邦彦著 「偽善エコロジー」(幻冬舎新書 740円+税)


環境問題のキーポイントとしてよく「3R」が上げられてきた。
◆リデュース(ゴミの発生抑制) ◆リュース(再利用) ◆リサイクル(再資源化)がそれ。
自称住宅評論家の中には、この3Rこそがこれからの住宅づくりのポイントだと、鬼のクビをとったかのように声高に叫んでいる者もいる。

ところが、この本の著者は「この3Rこそが偽善のカタマリで、私は大嫌いだ」と公言。
家庭ゴミの分別回収は意味がなく、紙や牛乳パック、ペットボトル、食品トレイなどのリサイクルは何の利益にもなっておらず、税金を使って役人の天下り先を確保しているだけ。即刻廃止すべきだと独自のデータを揃えて断言している。
なかでもひどいのは家電リサイクル法。消費者から廃棄料を取りながら半分は中古品として転売して、業界全体で利ザヤを稼いでいる。白い恋人や赤福などの食品偽装事件は騒がれたが、それに比べるとリサイクル偽装は、はるかに悪質でタチが悪いと証拠を挙げて指弾。

いや、面白いこと面白いこと。それこそ一気呵成に読み終えた。
そして紹介したい項目が次から次へと出てくる。この欄ではほんのさわりの一部分だけしか紹介出来ない。是非とも買って読んで頂きたい。内容は保証します。

まず、レジ袋。20世紀の初めに石油からプラスチックを作り始めたとき、ある成分は使えず燃していた。それが高分子化学の進歩で廃品がレジ袋として使えるようになった。だからタダで提供され、ゴミを捨てる時のゴミ袋としても有効に利用されてきた。
それをエコパックにするというのは、石油の中でも量が少なく貴重なBTX成分を使うことになる。そのほかに消費者は専用のゴミ袋を買わざるを得なくなる。レジ袋を追放したことでエコパックとゴミ袋の販売でスーパーは儲かるが、環境は決して良くならない。

井戸水から水道に変わったばかりの頃、日本人は日に20リッターの水しか使っていなかった。それが現在では300リッター。その28%が水洗トイレで、お風呂と炊事が同じく25%。そして洗濯が20%。そして飲む水はたったの1~2リッター。1~2リッターのために300リッターの水全部が飲料水として各戸へ供給されている。世界で水道水が飲める國は7ヶ国。日本は世界でも珍しく水に恵まれているが、環境問題を言うなら、上下水道の他に中水道を考えるべき。

割り箸禁止とか古紙のリサイクルは全くのナンセンス。
役所はコピー用紙に古紙を使うと法律で決めたので、環境に貢献している振りをして古紙を使用していますと全製紙メーカーが偽装した。紙は太陽の光で育成する樹木を原料にしている。アマゾンの樹林が伐採され、木を使うのは悪いことだという風潮が蔓延した。自然を利用するには大制約がある。それは「新しく成長する範囲で使わせて頂く」ということ。これを厳守して国産材で割り箸や新しい紙を使うべき。古紙を回収し、運ぶのは石油。そして漂白にも薬品の処理や加熱や機械の稼働に石油がどんどん使われている。紙のリサイクルがどれだけ環境を悪化させているかを考えてもらいたい。

アメリカのトウモロコシによるバイオエタノールはお笑い草。1キロカロリーのトウモロコシを得るのに1キロカロリーの石油を使っている。だったら直に石油を使った方が良い。

ゴミの分別は(1)金属類 (2)その他の2つに分けるだけで十分。生ゴミはペットボトルや紙などと一緒に燃やせばよく燃える。そして家庭用ゴミをまとめて焼却しても、4つの成分に分かれて回収。(1)CO2と水の気体 (2)飛灰 (3)土 (4)金属。このうち飛灰の中に有毒物質があるが、他の3にはない。技術は進歩しているのに分別回収しているのは愚。 残念、紙数が尽きた。


2008年09月12日(金)
第151回「花粉症は環境問題である」 [独善的週評]
奥野修司著「花粉症は環境問題である」(文春新書 710+税)


北海道にはスギ花粉症がない。
シラカバ花粉症があるが、それほど大問題になっていないと思う?
日本の人口は約1億2700万人。
このうち北海道の560万人と沖縄の140万人の計700万人が、スギやヒノキの花粉症から免れている。
残りの1億2000万人のうち、なんと2000万人から3000万人が軽重の差はあるがスギ花粉症患者だと言われている。
今話題のメタボリックシンドロームは、予備軍まで含めて2000万人と言われているから、いかにスギ花粉症の患者が多いかが分かる。

私が、東京で高気密住宅に取り組んだのは、省エネということもあったが、より大きなテーマは花粉が入って来ない家づくりだった。関東地域では20年ぐらい前から、花粉症に悩まされる人々が急増。
隙間だらけの家だと、花粉が侵入してきて安眠が出来ない。
「なんとか花粉の入ってこない家が出来ないものか」という課題を、高校の物理の先生から与えられた。
そこで、相当隙間面積が1.0cm2/m2程度の気密住宅を建て、北海道で定評のあったエアロバーコ社の第3種換気を取り付けた。

ところが、パッコン給気に付いているフィルターがいい加減なものだった。
この換気システムはスウェーデン製。スウェーデンにはスギ花粉症がない。北海道にもない。輸入代理店が北海道の業者だったので花粉症のことが分からず、目の粗いホコリを捕獲するだけのフィルターを平気で付けてきた。
「こんなものでは意味がない。30ミクロンの花粉を捕獲出来るフィルターが欲しい」と言ったら、「一枚2000円近くもする高額なフィルターしかない」という。
しかも、このフィルターは花粉や排気ガスが詰まるので掃除がきかない。使い捨てだと言われて困った。幹線道路沿いの家だとフィルターの交換だけで年間2万円以上もかかってしまう。省エネにならないどころかカネ喰い虫。
そこで、フィルターメーカーに相談し、ポーレンフィルターというシートを買ってきて、ハサミとカッターで加工して一枚200円という特別価格でお客様に提供し、やっと花粉の侵入しない家づくりを完成させることが出来た。

この著者は、こうした高気密住宅には住んでいないらしい。
なにしろ家の中に8台の空気清浄機があるというからびっくりする。
そして、空気清浄機やスウェーデン製の掃除機以外で年間約7万5000円の診療費、マスク代、
目や鼻の洗浄液、サプリメントがかかるという。
これはどこまでも一人の費用で、家族全員だと年間約13万円もの出費になるという。

2000年に発表された旧科学技術庁の調査によると、スギ花粉症に要する一年間の費用は2860億円とのこと。内訳は医療費が1171億円、薬など薬局に払うカネが1088億円、仕事を休んだりする行動損失が601億円。この時は花粉症患者が1300万人と言われていた。
その花粉症患者が倍増しているので、現在だと5700億円にもなっていると筆者想定している。
そして林業白書によると、2004年度の木材生産額は2205億円、うちスギの産出額はわずか925億円にすぎない。925億円の産出のために、ミニマムでみても10倍の9300億円というバカげた医療費を払い、人々を苦しめている。「花粉症は林野官僚による公害である」と筆者は精密なデータで立証している。是非、別の機会に再度この著書を取り上げたい。


2008年09月05日(金)
第150回「公務員クビ!論」 [独善的週評]
中野雅至著「公務員クビ!論」(朝日新書 740円+税)


役人に対する国民の風当たりは厳しい。
大蔵官僚の「ノーパンしゃぶしゃぶ」から始まって、厚生省、外務省、農林省、防衛省など高級官僚のいかがわしい事件が続いた。そして、最近ではこうしたキャリアだけではなく、地方公務員に対する風当たりが強まってきている。
民間ではリストラの風が吹き、中小企業では実質賃下げになっている。それなのに、身分保障をされていることで「気楽な稼業ときたもんだ!」とノホホンとしている役人の存在があまりにも目障りに。そこで、週刊誌などでの役人バッシングが一種の清涼溜飲剤になっている。

著者は、大学を出て奈良の市役所の職員になり、その後国家公務員Ⅰ種試験を受けて旧労働省に入った。そして新潟県庁へ出向して情報政策課長をやり、アメリカの大学院へも官費留学している。その後ハローワークと労働基準監督署に勤め、最後には大臣官房国際課長補佐で退職し、現在は兵庫県立大の准教授。
つまり市役所職員、県庁の管理者、国の出先機関、本省の役人、公立大の教員と5つの公務員を経験している。これはすごく珍しい例。

そうした体験に基づいて書かれている「公務員論」だから、実態に疎い評論家や学者のうわすべりなものとは全く別。
それこそ税金泥棒と呼べる地方公務員の実態も紹介しているし、問題点も的確に把握している。そして、公務員の仕事は儲からない仕事が多く、一律に成果主義の物差しで評価してはならないと指摘している。
そして、これからの公務員がどのように変わってゆくか、あるいは変わってゆかなければならないかを、ていねいに書いている。この種の本はそれほど面白くないはず。それなのに最後まで一気に読ませられた。住宅とか健康には関係ないが好書として紹介したい。

まず、公務員の数だが、国家公務員が約68万人、地方公務員が約300万人いる。日本の就業人口が6400万人だから17人に1人が公務員。そして不思議だったのは、今まではこの公務員の給料が全国一律でほとんど変わらなかったこと。
これは、日本が中央集権国家だったから。中央政府が考えたプランを全国へ一律に浸透させてゆく。地方自治体は「機関の委任先」。したがって給料大系は全国一律。年功序列型で地方公務員のお茶くみ婆さんが1000万円の高級をとっていたということもあった。

国家公務員の仕事はデスクワークが中心で、いわゆるⅠ種試験に合格して採用された「キャリア」とその他の「ノンキャリア」に分けられる。そして、天下りで問題にされるのがこのキャリア。地方公務員には天下りがほとんどない。
なぜキャリアに天下りが多いかというと、同年代だけに局長のイスを独占させず組織を若変えらせるための知恵。1人を除いて早期退職を促すシステム。このシステムを変えない限り天下りはなくならない。そして、省とか局の縄張りを拡げる力のあるものが出世をする。本省の役人は資料づくりや各省、各局との調整や根回しで、毎日帰りが午前様。それで接待タクシー問題が発生し、これまたバッシングの対象になった。あまり割の合いい職場ではない。

そして、いままで一律だった地方公務員は、これから格差が拡がってゆくのが避けられない。地方自治体そのものが稼げる自治体と破産する自治体に分かれてくる。正社員の平均月収23万円、トップの年収が370万円。給料が安くて半分の人が辞めた夕張市の例をみるまでもない。
地方公務員はサービス産業であるが、民間のように富裕層対象に特別サービスを設けることが出来ない。どこまでも平等であるべきで、したがって効率至上主義にはなれない。
だが、公務員制度の行き着く先は「官民統一」しかないというのが著者の意見。


2008年08月29日(金)
第149回「ポジ・スパイラル」 [独善的週評]
服部真澄著「ポジ・スパイラル」(光文社 1700円+税)


これはフィクション。
環境省とか国土交通省を舞台とした環境問題をテーマにした小説。
残念ながら小説としての面白さにやや欠ける。しかし、選定された舞台とテーマがテーマだけに、最後まで緊張感を持って読み終えた。住宅関連の皆さんにご一読を奨めたい。
最後に、もう少し盛り上がりが欲しかったという物足りなさが残ったが、なかなか…。

主人公の沙紀は、海洋に関わる土木建築業、通称マリコン(マリーナ・ゼネラル・コンストラクション)として著名な「洋々建設」を興した住之江国重の孫娘。
祖父のあとを継いだ社長の父が、娘を海洋学者に育て、間接的に事業を支援させるためにボストンのメリーランド大学で海洋環境工学を学ぶように命じた。
専門分野を学ぶにつれて、生き物の住む海を再生すべきだという考えが次第に沙紀の中で強くなってきた。そして、現在の沙紀は東京大学院の准教授として、国土交通省関係の湾や海域の保全と再生に関する第三者委員会の委員をいくつか兼任するほどになっていた。そこで、沙紀は環境派のヒロインとして積極的に発言を行った。しかし親の七光りの、国土交通省のご用学者にすぎないという批判がないわけではなかった。

沙紀がメリーランド大学で留学している時に、環境省のカリキュラムで留学してきた橋場と深い関係になった。橋場はプロパーで環境省へ入省。ところが環境省というのは公害問題に対処するために各省からの寄せ集めでつくられた省。重要なポストは各省のキャリア出身者で占められている。各省の利権代表者は、やがて各省へ戻ってゆく。
単なる政策官庁で、国土交通省や経産省、厚生省、農林水産省のようにカネを握っている事業官庁ではない。予算力がないことが、次第に橋場の意欲を削いでいた。
沙紀は、結婚している橋場の立場を考慮し、自分のボートのカギを黙って貸すなどして、何とか立ち直らせようと考えていた。
その橋場が東京湾で、ダイビングで自殺するという事件から物語が始まる。

もう1人の主人公の久保倉。諫早出身で、有明海の水門工事にからんで父を失っていた。そのことは誰にも話していない。
そして今は、サンドという事務所の売れっ子タレントとして超多忙な日々を送っている。久保倉は、沙紀のレクチャーを受けて、環境派の理知的タレントとしてめきめきと力をつけ、世界各国をロケしてまわり、「ポジティブ・スパイラル」というテレビ番組で圧倒的な視聴率を稼いでいた。そのポジティブ・スパイラルで、水辺に育つ「菱」という植物をとりあげた。
この菱は、昔は食用として日本でも利用されてきたが、バイオエネルギーとして非常に有望であることを大学教授と久保倉との対談の中で初めて明らかにした。水生植物で、川や池だけではなく、海水が混じる汽水域でも育つ。そして、バイオエネルギーとして使えるだけでなく、汚れた水を浄化する力も持っている。
しかも、この菱は生命力が強く、あっという間に繁殖し、手間暇かけずに収穫が出来る。CO2削減に対して有効な手段を持っていない日本にとって、有力な武器になるという内容。
この番組は、久保倉の人気と相まって大反響を呼んだ。
そして、次の週には有明海でその菱が自然的に大発生しているというニュースが飛び込んできた。このニュースは各報道機関が大きく取り上げ、有明海に日本の関心が集中した。急遽「ポジティブ・スパイラル」の続編を企画したら、そこへ農林水産大臣が出席したいという申し出があり、生放送の中で「有明海の水門を開くのにやぶさかではない」と大臣が爆弾発言。

そうした中、死んだ橋場から変なメールが入ったりして、いろんな物議が発生。
その橋場が、自殺する前に「日本海域再編成財団」を設立し、その理事長に沙紀を起用するようにという遺言状を残していた。都知事選挙とからみ、話は意外な展開をみせてゆく…。


2008年08月22日(金)
第148回「食の安全はどこまで信用できるのか」 [独善的週評]
河岸宏和著 「食の安全はどこまで信用できるのか」(アスキー新書 724円+税)


著者は帯広畜産大学を卒業後、ハム・ソーセージメーカーに就職し、食肉処理場から生肉、畜産加工品、惣菜までのすべての品質管理にタッチしてきた。
ハムからはじまり、惣菜工場、流通センター、卵加工工場、デザート工場、豆腐工場、ギョウザの工場など、コンビニの食品部門の全てが賄える工場の品質管理に携わってきた。
「農場が食卓までの品質管理」を経験してきた数少ない実践派。

したがって、ミートホープの偽装事件が起きたとき「貴方なら偽装を見抜けましたか」とよく質問された。
「もちろん、ひき肉を見ただけで偽装は直ぐに見抜けます」と胸を張って答えたという。
ひき肉を見ただけで何の肉か、畜種が分かるが、どうしても見分けがつかない時とか、色がおかしいなと思う時は手で触り、生肉を口に含んでみる。加熱前の原料でもつい舐めてしまうという。

ミートホープや赤福の偽装事件を契機に「消費・賞味期限」が問題になってきた。
一般の消費者は、こうした期限は国が「鮮魚は3日」「パンは5日」「缶詰は6ヶ月」というふうに法律で決められていると思っている。
消費期限はおおむね5日以内の日持ちの商品に適用され、賞味期限はおおむね5日以上日持ちする商品につけられる。しかし、その科学的な根拠はなく、業者の方で勝手に決めて付けているだけ。

それだけではない。日本では「製造年月日」の表示義務がないという。
実は、1995年4月までは、日本では製造日の表示が義務付けられていた。
しかし、製造日表示があると「古いものは売れなくなる」という理由や、輸送に時間のかかる輸入食品に不利になるという外圧、さらには加工技術の進歩で品質が長期間保てるようになり、製造日の表示義務が撤廃され、変わって消費・賞味期限の表示が義務化された。
この時、本来は製造日の明記が必要なものまで撤廃され、それが大きな矛盾を生んでいると筆者力説する。

例えば土産店のお菓子。販売店に入荷されたお菓子にはメーカーの方で勝手に1ヶ月後の日付を付けている場合がある。しかし、製造日の表示がない。メーカーで賞味期限が1年と決めていたとしたら、11ヶ月前に製造したものを販売店に出荷したとしても違法ではない。
消費者は、賞味期限だけを見て何の心配もなく買っている。
正月のおせち料理に使うカマボコ。年末に多く売れるためにメーカーでは賞味期限を翌年の1月4日以降の日付を印字して段ボールに詰めて冷凍する。そして、12月26日の朝に解凍しながらスーパーなどの店頭に並べている。つまり、冷凍した期間が無かったものと勝手に解釈する業者が多い。冷凍期間の「劣化」が現在の法体系では問題にされない。

筆者は卵などチルド保管が必要な商品が、チルド輸送もチルド保管もされないまま売られていることに対して警告を発している。卵のチルド保管が徹底していないのは先進国では日本だけだという。肉や魚の表示や保管にもいい加減なものが多い。
これに対して、かつて「コンビニの弁当は、添加物の塊」などと書いた船瀬氏などの影響で、コンビニの食品を軽視している傾向が今でも残っている。しかし、デパートの地下やスーパーなどの食料品売り場に比べて、その製造過程もチルド輸送やチルド保管にしても、現在ではコンビニが一番優れており、安心して買えると強調している。
そして、中国製の冷凍ギョウザ問題では、たしかに中国側にも問題があるが、日本側の管理体制がいい加減だったことが最大の問題点だと具体的に指摘している点に、説得させられた。




2008年08月15日(金)
第147回「TOKYO建築50の謎」 [独善的週評]
鈴木伸子著 「TOKYO建築50の謎」(中公新書ラクレ 740円+税)



著者の父は建築設計事務所を経営していた。
まだCADが導入される前で、小学校から帰ってくると、一階の製図室の奥から青図を焼くアンモニアの臭いがしていた。
そして、建築雑誌や建材のカタログがところ狭しと置いてあった。中でもアメリカやヨーロッパの建築雑誌の写真やレイアウトは洗練されていて、子供の目にも見るだけで楽しさを覚えさせてくれた。

しかし、父の跡を継いで建築家になったわけではない。
学校は文系を選び、都市論や町歩きなどをテーマにした雑誌「東京人」の副編集長として、東京のほとんどの街や建築物を取材している。
専門の建築屋ではないが、それだけに自在な発想で東京の建築物を捉えていて面白い。
この数年で東京の都心は一変。
六本木ヒルズや東京ミッドタウンのように、大規模再開発で新しい街が突然姿を現す。
かと思えば、副都心線、りんかい線、つくばエクスプレスなどの路線が開通し、人の流れを変えたりもする。
私のような多摩地域に住む者がたまに都心に出ると迷子になる。まして、地方に住んでいて、年に一度か二度しか東京にこない人には、その変貌振りに驚かせられよう。著者のように毎日都心を歩き回っている者でさえ、まごつくというのだから…。

たしかに、この著書は東京の建築について語っている。
だが、テーマは東京に限定しての話ではない。われわれ建築人が常識として知っておくべき話題が一杯詰まっている。その2、3を、つまみ食い的に紹介したい。

有楽町にあるガラスの箱舟と呼ばれる東京国際フォーラム。ある昼さがりガラス棟とホール棟の中庭を歩いていたら不思議な光景を目撃した。足場が組まれ、何人もの人間が空中ブランコのリフトを操縦している。真四角でない建物の外壁を清掃するのは大事だということを雄弁に物語っていた。つまりメンテナンスが大変だという話。
丹下健三設計の東京都庁。パリのノートルダムのような二つの塔を持つ超高層建築。これと同じものを民間でつくることは、メンテが嵩んでとても無理だという。
そして、極め付きは北京オリンピックのメイン会場の「鳥の巣」。
複雑な構造をしているために、黄砂の清掃のために掃除代だけで年間6億円以上もかかるというから驚く…。

巨大建築物は解体が大変。東欧の共産党本部などは解体に費用がかかりすぎるために負の遺産として「国民の館」などと称してそのまま残されている。
霞ヶ関の古い官庁建築を合同庁舎へ建て替えるための解体は大変だったらしい。なにしろ爆撃に耐えられることを前提に造られた建物。その頑丈さは並大抵ではなかった。また、銀行建築も難儀。日本橋にあった東銀本店の壁の厚さは卓球台になるぐらいの幅があったという。
最新の解体現場として注目されるのが鹿島建設の本社ビル。上から壊すのではなく、建物をジャッキで支えながらだるま落としのように下から解体してゆくカット&ダウン工法。

東電や役所は夏の設定温度は28℃で暑くてたまらないが、一般のビルは夏の強すぎる冷房と冬期の過乾燥でたまったものではない。とくにビル内で一日を過ごす女性にとっては脅威。
家に活けていた花を半分持ってきてオフイスに飾っておいたら、あっという間に枯れてしまった。取引先からもらったケーキを食べようとしたら来客があり、30分ほどして戻ったらケーキの表面がカサカサになっていた…等々。50の謎のうち20ぐらいが特に面白い。



2008年08月08日(金)
第146回「アフリカに緑の革命を! ニッポンNPO戦記」 [独善的週評]
大高未貴著「アフリカに緑の革命を! ニッポンNPO戦記」(徳間書店 1500円+税)


題名を見たらノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんの「グリーンベルト運動」のことかと早合点してしまった。
「苗木を移植したら、わずかだがお金を払います」と女性の自活に力を貸し、30年間で3000万本もの植樹を行ってきたワンガリさん。それこそケニアを緑に変えた「もったいない女史」。

これとは別に1986年に、あの笹川良一の日本財団が、アメリカのカーター元大統領のカーター財団が協力して、アフリカに自立した農業を定着させるためにスイスにNGO法人SAA(笹川アフリカ協会)を設立した。この法人にノーマン・ボーローグ博士が加わった。
ボーローグ博士は近代農業の普及で貧しいアジアの小麦やコメの生産高を3倍に高めた「緑の革命」の推進者。この業績で1970年にノーベル平和賞を受賞している。
そしてリタイアしていた博士を「あなたは70才で若くないと言いますが、85才の私がアフリカの自立した農業のために命をかけようとしているのです。資金もあります。博士のどんな要望にも応じます」と博士を口説き落としたのが故笹川良一氏。モーターボート界のドンとして、日本での評判はあまり良くなかったが、この本を読んで、初めて氏の素晴らしい事業の存在を教えられ、心底から感服させられた。

国連を中心に、貧しいアフリカを援助する運動は第二次大戦後一貫して続けられてきた。しかし、そのほとんどは国民の生活向上に役立つことがなく、ほとんどがアフリカの政府高官のポケットに入ってしまった。そして、かつての援助の最大の欠点は「農業」という視点がすっぽり抜け落ちていたこと。
つまり、国民の8割近くが農民。その農民の生活を向上させるということは、生産性を上げ、収量を増やすこと。そして、ただ与えられる援助で食いつなぐのではなく、自立した農業経営が出来ること。しかし、誰1人としてこの必要な援助を行ってこなかった。

また、「乳も飲めない貧しいアフリカの赤ん坊を助けよう」と言う運動は、いつも世界中で見られる。2005年に日本で流行した「ホワイトバンド運動」。有名な芸能人の参加もあり、8ヶ月で140億円を売上げ、5.2億円の利益を計上した。しかし、このお金は政府への支援要請や一般人への啓蒙活動に使われ、アフリカの貧しい人やエイズ患者には直接渡らなかったという。
つまり、政府の援助も、黒柳徹子女史の善意も、アフリカの貧しい人々にとってはほとんど役に立っていない。

これに対して、NGO法人SAAが行った「SG2000」という運動は、食料生産性向上のためにカントリー・デレクターという志の高い指導者を養成して、農業技術および経営指導を徹底して行うという点に最大の特徴がある。
つまり、アフリカの農民に「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」という一貫した方針を堅持して、農民が実際に生産性を2倍から3倍に高めたら、その国から手を引いている。
そして、過去20年間にガーナ、スーダン、タンザニア、ベナン、トーゴ、ナイジェリア、エチオピア、モザンビーク、ウガンダ、エリトリア、ブルキナファソ、マリ、ギニア、マラウィの各国で大きな成果を挙げてきている。その運動の根元にある哲学は「国民の自立心なくして真の国造りはない」というもの。

著者が、こうした各国で働くカントリー・デレクター10人を取材して書いたのがこの本。
カントリー・デレクターの人種はさまざま。日本人、メキシコ人、エチオピア人、ガーナ人、セネガル人、チャド人など。そうした雑多な人々がボーローグ博士の呼びかけに呼応して集まり、笹川氏の意欲に打たれてこの運動に飛び込んできている。そして、ダニとハエと水と盗賊に悩まされながら、使命感を持って働いている姿に、ガツンと打たれてしまう。


2008年08月01日(金)
第145回「写真な建築」 [独善的週評]
増田彰久著 「写真な建築」(白揚社 2200円+税)


著者は高校生の頃から報道カメラマンに憧れ、家にライカFⅢがあったので毎月カメラ雑誌に投稿していた。毎日新聞社の「カメラ毎日」の高校部門の年度賞に入選もした。自分には才能があると早とちりして「カメラマンになる」と父に話したら「写真はやってもいいが、大学だけは出ておけ」と言われた。
調べてみたらカメラマンになるための学校は、日大芸術学部の写真科しかない。受験に行ったら試験官の先生が「この中でプロのカメラマンになれるのはせいぜい1人か2人。やめて帰った方がいいんじゃないの?」
事実、同期の180人の中で、写真で飯を食っているのは10人いるかどうか…。

4年生になると卒業展覧会がある。テーマに「曹洞宗の若い修行僧の1日」を選び、朝3時に起きる1週間を過ごした。
卒展が終わったらすぐに卒業制作。全30ページの大型半切アルバム1冊を仕上げねばならない。修行僧の生活を追って気が付いたのは、お寺の建築物が僧をつくっているのではないかということ。つまり、禅僧を育てる禅寺の建築そのものを撮ろうと考え、京都嵐山の天龍寺に都合20日ほど泊まり込みで撮影させてもらい、建築写真家になろうと考えた。
そして、伊勢神宮を最初に撮影した渡辺義雄先生のところへ相談に行った。
「建築雑誌の写真部へ行けば建物を撮る機会は多い。しかし、自分で選んだり、考えたりと表現する機会は少ない。大成建設には清水一先生や大熊喜英さんがいるからそこにしたら」と言われた。そして、6年間は全国を飛び回って完成現場を撮影して回った。

しかし、中年になったら自分が撮影して回るのではなく、管理する側に回された。フラストレーションが溜まり、辞めたいと父に相談した。
「写真で喰って行けるかどうかは才能の問題。平日は会社に行って、休みにカメラを担いで写真を撮って回ればいい。本当に才能があったら、世の中が放っておかない」とのアドバイス。
それからは、休日となるとレンガ造りの西洋館を撮りまくった。
日本の伝統建築は神社仏閣と民家、町屋、茶室に限られる。
これに対して、西洋館だと住宅もあれば教会もある。学校も、工場も、役所も、文化施設、駅舎、銀行、ホテル、刑務所など用途や種類がさまざま。見た目にも明るくて変化に富んでいる。しかも建築様式やスタイルがバラエティに富んでいる。使われている建材もレンガ、コンクリート、鉄、石、ガラス、木と多様。木骨レンガ造もあれば、木骨石造もある。外観の美しさもあるし、細部にも工夫が凝らされている。被写体としていつまで見ていても飽きない。
最近の高層ビルは遠くから見ると美しいが、近くで見ると楽しさがない。

記録に残しておかなければならない西洋館は1500棟ぐらい。そのうち解体されたものを含めて1200棟は撮影してきたという。残りは300棟。
建築物は大きく分けて2種類しかない。
1つは神や仏のための建築。もう1つは人間のための建築。西洋館はほとんど人間のための建築物。したがって、建築を撮るということは、それを使う人の思いや生活の空気感を捉え、建築家の意図を浮かび上がらせてゆかねばならない。
建築家と写真家が一緒に仕事をしている例が多い。コルビュジエにはエルヴェ、前川国男には渡辺義雄、丹下健三には村井修、磯崎新には石元泰博、安藤忠雄には大橋富夫という具合に。
著者は故村松貞次郎先生の「保存したい明治の西洋館100点」感動し、押しかけて子弟関係を結び、以来先生の指定カメラマンとして西洋館に関していろんな知識を学びとってきている。

建築物は、人間が造詣した智慧の塊。そして歴史が見える。それをどのように撮るか。そして掲載されている西洋館の魅力溢れる写真と解説は、下手な建築家の言葉よりはるかに秀逸。


2008年07月25日(金)
第144回「床屋も間違える驚異の毛髪術」 [独善的週評]
黒木 要著「床屋も間違える驚異の毛髪術」(日東書院 1200円+税)


私の親父はハゲだった。私は白髪が増えてきたがハゲる心配はなさそう。
したがって、頭髪が薄くなってゆくという悲哀を感じたことがなく、カツラ、増毛、振りかけ増毛、養毛剤・育毛剤、内服薬、自毛植毛、人工毛植毛、毛染めなどという頭髪にからむ情報には全く関心がなかった。シャンプーすら使わずもっぱら石鹸のみ。

著者は、株式会社ニドー社から「ハゲ」について本を書いてみないかという相談を受けた。
一方的にニドー社の宣伝本を書くのは医療ライターとしてのプライドが許さない。アデランス社の都心の目視調査によると日本男性の薄毛率は26.8%。これは40%を超えている1位プラハ、2位マドリッド、3位フランクフルとなど欧州ほどではないが、アジアではトップの14位だという。そこで、薄毛で困っている人のために、出来るだけ客観的な「医療記事」を書こうと気取って着手している。この姿勢が、この本の面白味と価値を著しく損なっている。

なぜなら、ニドーという会社が開発した「人工毛植毛」技術は、文字通り画期的な技術。世界各国で特許を取得し、世界の植毛産業界のトップを走っている。人工毛の生産と植毛治療に関する総合的なイノベーター。ハゲにとっては大恩人。
日本が世界に誇って良いシステムを創りあげた起業家グループ群。
そのイノベーションがどのように行われ、如何にして日本だけでなく広く世界へ普及していったかという起業家物語として書くべきであった。この点が、明らかに著者のチョンボ。

題名は下記であるべき。
『ハゲの悩みを解決したα人工毛革命』〈1人の理博と数人の医博のイノベーション〉

山田史朗理博は工業デザイナー。
トヨタ自動車入社直後に特殊車両の設計コンペで2つも一等賞に輝いている。
独立後はYS11機のインテリアなどを手がけ、工業デザイナーとしての地位を築いてきた。
理博は、職業上の才能に恵まれていたが、20才台後半から頭髪に悩まされてきた。
ともかくワカメやコンブを食べ、発売されている全ての養毛剤を塗り、血行を刺激しつつマッサージも併用した。皮膚科に一年間通って紫外線照射も行った。牛の脳下垂体を身体に埋め込むと毛が生えてくるというので人体実験も行ったが何一つ効果がなかった。

その果てに辿り着いたのが人工毛植毛。素材としてはカツラ、ナイロン、塩ビ、アクリル、馬のタテガミ、テグス、人毛などあらゆるものを自分の頭に植毛。最後に選んだのが人工血管に使われているポリエステル系高分子樹脂。この樹脂の表面にコラーゲンを科学的に固定するという技術が世界特許となっている。
しかし、当初は定着率が20%にも達せず、企業化は難しかった。だが1969年の陸士の同期会に植毛した頭で出席したら、医師仲間からどうしたのだと聞かれた。経緯を話したら「それは凄い技術だ。俺たちも手伝うから企業化を目指そう」とその場でプロジェクトが発足。山田理博は人工毛植毛の技術開発に専念することになる。
そして、このプロジェクトの素晴らしいことは、仲間の医博によって逐次利点や欠陥が直接報告され、改善につぐ改善が行われたこと。とくに素晴らしいのは植毛の部分の形がα状となっており、抜去強度が自然毛の2倍と強い点。そして、いざというときは抜けてくれる。人工毛が抜けないと、頭皮に大きな怪我をするおそれがある。

現在では、植毛専門のクリニックは札幌から那覇まで全国に17ヶ所ある。そこで500本から最高8000本植毛するわけだが、0.1mmという極細の植毛針で500本植毛するのに35分しかかからない。4.2秒/本という速さ。そして価格は500本で14万円、8000本で220万円という。



2008年07月18日(金)
第143回「世界屠畜紀行」 [独善的週評]
内澤旬子著 「世界屠畜紀行」(解放出版 2200円+税)


5月30日付の136号で「脱・食品偽装紀行」をとりあげた。
今まで読んだことがなかった北見食肉加工工場の、家畜の屠殺から解体の一連の作業が書かれており、大変に珍しく面白く感じられたから。

ところが一年以上も前に、東京芝浦の屠場工場ばかりではなく、韓国、バリ島、エジプト、イスラム、チェコ、モンゴル、沖縄、インド、アメリカなど世界各国の屠畜現場を見て回り、わかりやすいイラスト付きで、多彩な屠畜の実情を解説している本が出版されていた。
皆さんもそうだろうが、私もことさら屠畜に関心があるわけではない。
BSE問題が叫ばれ、日本とアメリカの屠畜工場の作業工程はどのようになっているのか。検査システムはどのように違うのか。
お隣の韓国では、アメリカからの牛肉輸入再開に対して、若い人から猛烈な反対デモが起こり、李大統領の支持率は急落している。
韓国の若者は、私たち日本人以上にBSEに対して特別な情報を持っているのだろうか。それとも別な理由があるのだろうか。
正直いってその程度の関心であり、それと解体作業への好奇心でしかなかった。

ところが著者は、日本に屠畜に関する具体的な著書がほとんど出版されていないのは、この屠畜という仕事に関わっている人々が、昔から部落民として差別化されていたからではないかと考えた。そして、家畜を屠殺する仕事は穢らわしいと考えるのは、果たして日本だけなのだろうか。アジアやアフリカ、ヨーロッパ各国やアメリカでも蔑視や差別があるのだろうか。
そうした疑問から、取材をスタートさせている。

そして、著者の疑問には早々に答が出ている。
家畜を殺すことを穢らわしいと考えて差別化している国は、仏教の影響が強い日本と韓国ぐらい。仏教は「殺生」を厳しくいさめた。したがって仏教国の日本では家畜を屠殺する人々を差別した。韓国にも「白丁」という差別民族がいた。しかし、14世紀に儒教が国教になり、仏教が禁じられて僧侶は賤民階級に突き落とされてしまった。したがって、日本ほど殺生を業とする屠畜業者は差別化されていない。

アジアの農耕民族に対して、ヨーロッパなどの諸外国は牧畜民族。とくにモンゴルは典型的で、幼い時から家畜の交尾や出産を目の当たりにしている。そして、家畜の乳とその肉は尊い自然からの贈り物である。そこには殺生という考えはない。
著者は執拗に「差別化の有無」を問うて回っている。掲載していた雑誌が「部落解放」だったからこだわらざるを得なかったのだろうが、これは全くの徒労。だからといって、今までになかった屠畜の現場をクローズアップした本著の価値は、薄れることはない。

中でも、やはり面白いのは日本とアメリカとの比較。
日本では全頭の牛頭を切り落として徹底した検査を行っている。そして、検査結果が判明するまでは肉も内蔵も保管が義務化されていて売れない。1日に350頭の牛と1400頭の豚が処理されている芝浦屠場。その350頭の屠畜番号で、問題があれば直ちに回収処理される。
これに対して、アメリカの工場では全頭BSE検査がない。したがって早々に頭を切り離し、延髄かんぬき部を取り出す必要がない。そして、日本のような高い技術が求められていない。単純労働で低賃金。そして数万頭規模での放牧では、個体管理が出来るわけがない。
オレゴン州でのあるワークショップに参加した20人の中流女性に聞いたら、口を揃えて「完全有機のオーガニックビーフを食べている」と答えたという。日本の牛丼などに用いられているナチュラルビーフは、低所得者と輸出用のビーフ。韓国のデモの理由がなんとなく納得。




2008年07月11日(金)
第142回「ips細胞ができた!」 [独善的週評]
対談 山中伸弥・畑中正一「ips細胞ができた!」(集英社 1100円+税)


昨年の11月20日、アメリカの科学雑誌「セル」の電子版で「京都大・山中伸弥教授のチームが、人の皮膚からips細胞(人工多能性幹細胞)の作成に成功した」と発表した。
このビックニュースは、たちまち世界を駆けめぐり、翌21の朝刊各紙は一面のトップ記事にこれを取り上げた。

しかし、私のような科学音痴には、この成功はノーベル賞ものだと言われてもなかなかピンとこない。NHKの教育番組「サイエンスZERO」のほか、多くの番組でとりあげられたので、輪郭だけはなんとなくわかってきたような気がしている程度。
ナマ半端な勉強で間違っているかもしれないが、下記のように理解している。
受精した卵子の中にある遺伝子というタンパク質をつくるDNAという設計図。そのインプットされているプログラムに基づいて順次細胞の分裂が行われて、心臓や血管、骨、皮膚などが創られてゆく。
その皮膚という分化した末端の細胞から、設計図を持った最初の細胞が出来るということは信じられない出来事。下等な植物にはあり得ても、人間のような高等動物では最初からプログラムがやり直せるとは到底考えられない。
クローン羊のように卵子に体細胞の核を入れるのならともかく、卵というと環境のないところで、しかも皮膚からリプログラミングが出来る万能細胞が作れるとは・・・。

山中教授のグループは、05年に最初はマウスで成功し、06年の8月に上記の「セル」誌に発表している。しかし、当初は誰も信じてくれなかった。ところが、アメリカの2つの大学で追試に成功して一躍注目を集めていた。そして、昨年の11月の人間の皮膚での成功に繋がった。
この万能細胞とも呼ぶべきips細胞が注目されるのは、それが各種の臨床と結びついて、大きな医療効果をあげてくれると期待されるから。
アメリカでは、ものすごいスピードで予算化がなされ、研究が始まっている。臨床の成果が陸続と発表されるには、まだまだ多くの時間がかかろう。しかし、臨床の権威者である京大名誉教授の畑中正一氏は、対談の中で次のように大きな期待を表明している。

まず、パーキンソン病。ドーパミンというタンパク質を出して神経細胞が働かなくなる病気。これにはたくさんの人が患っている。このドーパミン細胞に分化するようなips細胞をつくって移植してゆくという夢。
その次は心筋梗塞。これは年配の方が心臓の筋肉が次第にやられてゆくこと。外から心臓の筋肉を移植出来ない。しかし、ipsで心筋細胞を作って移植すれば、心臓の部分を治すことが可能かもしれない。
それから糖尿病。先天的に遺伝子が悪くて糖尿病になるというⅠ型。この原因は膵臓のベータ細胞というインスリンを作る細胞だけど、これがうまく働かないから糖尿病になる。膵臓の中のベータ細胞に分化するというような方向でipsを活用してゆけば、Ⅰ型の糖尿病の治療に結びつけられると思う。

それから関節や脊髄で軟骨がどんどんやられてゆく。これは軟骨ips細胞を作って移植してやれば、関節も治り、脊髄もちゃんとしてくる。
それに心臓以外の筋肉に、筋ジストロフィーという病気がある。これにもips細胞で筋肉の幹細胞を作って移植すればいい。
さらに火傷。これは今のところ太股からの移植をするのがせいぜいだが、真皮細胞をips細胞でつくれば簡単。
最後に眼。角膜移植はあるが網膜は出来ない。これもips細胞を使って角膜の上皮幹細胞を分化してやれば角膜が出来る。網膜の移植は今のところ難しいが、幹細胞をつくれば可能かも。


2008年07月04日(金)
第141回「冷蔵庫で食品を腐らせない日本人」 [独善的週評]
魚柄仁之助著「冷蔵庫で食品を腐らせない日本人」(大和書房 1400円+税)

著者は美食家でもなければ、料理評論家でもない。
著名な料理人でもなければロハス論者でもない。自称食生活研究家。
「うおつか流」を冠した著書は多い。私も十数冊は読んでいる。
代表的なものとして「台所リストラ術」「食べる暮らしダイエット」「作っちゃる」「野菜の食べ方」などがあり、昨年「冷蔵庫で食品を腐らす日本人」がかなり売れた。
冷蔵庫で食品を腐らせないようにするためにはどうしたら良いのかという解決策を示したのが、今回の著書。

著者は九州の料理屋の生まれ。
しかし、本格的な料理の修業をしたわけではない。カネのない学生時代から、かなり名の売れた今日にいたるまで、豪華な料理を求めたり、食通ぶったり、グルメにカネをかけたりは一切していない。
簡単に入手出来る安い材料で、健康で、おいしい料理を手作りしているだけ。
しかも使っている台所は、システムキッチンではない。狭いステンレスの流しと調理台があるだけ。ただし、使いやすい道具や材料が使い易い位置にきちんと配列されている。
つまり、料理は恰好ではない。加工食品は買わず、自分で簡単に加工するに限る。
加工したものを売ろうとすると、賞味期限の関係からどうしても添加物や防腐剤などに頼らざるを得なくなる。自分が加工するものには添加物は一切不要。そして、ほんの一手間を工夫するだけでいろんな保存食が作れる。

著者の論法は一貫している。
そして、新しい著書を見ても、特別に新しい視点が語られているわけではない。どれも、今まで読んだことの繰り返し。しかし、九州弁での独特の語り口が面白く、新しい本が出るたびに手にしてきた。ロハスなどとは一言も言っていないが、食に対する考え方は最近流行のロハス(再生可能なライフスタイル)そのもの。
ロハスという難しい言葉を使うより、彼の九州弁に従って食生活を切り替えていったら、日本の食料の輸入量は減るし、食品の1/3を廃棄処分したり、腐らせたりしないで済む。
そんな智慧が一杯に詰まっており、私もいくつかの考えをアレンジして採用し、重宝している。そのほんの一部を紹介したい。

●食品を腐らせないコツは、必要なだけ買い、使いきること。そのためには毎日の在庫管理が肝心。
●自然界の食物は必ず腐る。腐る食品だから安心。腐らない加工品は危ない。
●台所道具は最小限に。年に1度か2度しか使わない道具で棚を一杯にしたり、調理台の上を道具で塞いではダメ。
●毎食後、必ず食器や道具を洗う。そして、まな板やふきん、流しも必ず洗う。
●ついでに次の仕込みをやっておく。寝る前にコメを研ぎ、味噌汁用に昆布、煮干し、干しシイタケを鍋の水につけておく。
●食物の保存のために(1)密閉保存容器 (2)ビンとカン (3)ネットを必ず用意しておく。
●釣り道具屋で売っている干し網を用意すること。魚は開いて干せば簡単においしい干物が得られるし、野菜も干せば旨味が増し、長く保存出来る。肉も塩をまぶして干せば、そのまま調味料兼用としても使える。
●余った刺身は醤油に付けておくとお茶漬けに最高。
●鍋の中にスプーン一杯のスモークチップ入れ、万能蒸し器に肉や魚を入れて中火で5,6分燻製し、降ろした鍋に保温材で冷めるまで保温すると都会のマンションで燻製が出来る。
●食パンは冷凍庫へ入れるより天日で干した方が、牛乳で戻すとか油揚げなどの応用が容易。



2008年06月27日(金)
第140回「知床・北方四島 流氷が育む自然遺産」 [独善的週評]
大泰司紀之・本間浩昭著「知床・北方四島 流氷が育む自然遺産」(岩波新書 1000円+税)

2005年に知床が「世界自然遺産」に登録された。
以来、知床の人気は高まり、国内のツアー客だけでなく台湾や中国、韓国など暖かい国からのツアー客も多くなってきている。
とくに人気の高いのが「流氷」を見るツアー。単に氷だけでなく、氷の上には生まれたばかりのアザラシの親子の姿やオオワシの勇姿を見ることができる。
また、マッコウクジラやシャチなどのウォツチングも楽しむことが出来る。

北半球で、北緯44度という南の海で、流氷が見られるのは、この知床と北方四島以外にはない。したがって、北米や北欧の観光客からも珍しがられている。海の水が凍るという現象は、極北でしか見られない現象。
その北極海の氷が、地球温暖化のために次第に失われ、シロクマの生存が危ぶまれている。
当然オホーツク海の流氷も、この30年間は減少する傾向にあるのは事実。しかし、21世紀に入ってオホーツク海が氷で埋め尽くされたこともあり、必ずしも毎年減少傾向にあるとは言えないようだ。

オホーツクの海の氷はアムール川が凍るからだと考えられていた。なにしろソ連時代は軍事戦略上からこの地域を学術調査することが出来なかった。1998年になって、日露米の「オホーツク海共同調査プロジェクト」が、初めてこの流氷問題にメスを入れた。
その結果、流氷の生産工場は、アムール川よりも北のロシアの長い海岸線であることが分かった。大陸を渡る極寒の季節風。それによって海水が氷になる。それが東カラフト海流と季節風に乗って次第に南下する。なにしろアムール川が運んだ鉄分など栄養豊富な水が氷となって運ばれるので、オホーツク海は植物プランクトンの宝庫に。
そして、動物プランクトンが大発生し、魚やウニやカニが集まり、ラッコ、アザラシ、トド、マッコウクジラ、シャチが生息する世界一の漁場であり、同時に川を遡上するサケ、マスがヒグマと森を育てた。これらの全てが貴重な水産と観光資源になっている。

この本は、この10年余に亘る知床と北方四島の精密な調査の報告書である。
しかし、単に学術的な報告書ではない。
約150枚にもおよぶ美しいカラー写真とグラビアが、目を和ませてくれる。
北方四島というと、政治の臭いがする。
未だに平和条約が結ばれていない、不毛の世界。
調査を開始した時に痛感したのは「北方四島は、海も川も陸地も、どうしてこんなに野生動物であふれているのだろう」だったという。旧ソ連時代に占拠されていたので、絶滅に近かったラッコが、四島で4000頭近くに増えたのをはじめ、多くの動物が保護されてきている。
これが、もし日本に返還されていたら、あの日本列島改造計画で滅茶苦茶にされていただろうと著者は書いている。幸か不幸か、遅れたソ連のために自然が保護されてきたのは事実。

しかしソ連が解体し、石油を元手にのしあがり、北方四島でも乱開発をはじめ出したロシア。
このままでは、オホーツク海の恵まれた自然が失われてしまう。
そこで、著者は画期的な提案をしている。
それは「知床だけでなく国後島、色丹島、択捉島、ウルップ島の四島をまとめて世界自然遺産に拡張登録したらどうか」というもの。
世界自然遺産に登録することで「エコツアー」という産業が領土問題に関係なく共同事業として行える。そして、変な開発が阻止出来、ツアーの船が監視役になって密漁を防ぐことも可能になるではないか。領土返還よりも、その方が両国にとってメリットがあるのでは・・・。
そういった夢を語っている書である。


2008年06月20日(金)
第139回「中国危険産物取り扱い読本」 [独善的週評]
椎名 玲著「中国危険産物取り扱い読本」(ベストセラーズ 1300円+税)


著者はフリージャーナリストで、早大総研機構の客員研究員。
生まれは北海道の田舎。母親の実家が大規模牧場と農業を営んでいて、ところどころ虫に齧られているけれど甘くておいしいキュウリやトマトを子供の時から食べ、元気をもらってきた。
また、親戚が網元をやっていたので、北海道の新鮮な海の幸をふんだんに食べてきた。
つまり、本物の野菜や魚を食べて育った。本物を知っているからニセモノがわかる。

この本は、すべて本物の味を知っている著者が、自分の口で中国の野菜や魚を食べた上でニセモノだと断定しているわけではない。自ら中国や東南アジアに頻繁に足を運んで調べ上げたわけでもない。かなり丁寧に間接的な取材をしているが、納得出来ない点が多い。
それは、参考文献に「食べるな、危険」や「徹底解剖100円ショップ」等々があり、そうした文献からの資料だけでなく先入観もかなり入っているように感じられるから。やたらに危機感を煽っているという側面が強く感じられる。したがって、どこまで信用出来るかが不明。

今年の2月1日付の119号で、陳恵運著「中国食材調査」を取り上げた。
この著は、実際の自分の体験や中国の親姉弟、親戚の実体験が語られていたので非常に信憑性が高かった。そのため、腹の底から中国の食品に対する恐怖心が湧いてきた。
「こんな怖い本はない」というのが正直な感想。
それに比べると、この本に書かれていることは何倍も何十倍も怖い話ばかり。
しかし、嫌悪感は湧くがそれほど胸に迫ってこない。
私は日本へ輸入されている中国産の安い野菜とその加工品は絶対に買わない。
しかし上海へ行った時、成田空港のレストランで食べた4人分のチンケな朝食代で、7人分のビール付きの豪華でおいしい昼食にありつけた。検査したわけではないので確言は出来ないが、野菜も肉も魚も鮮度が高く、危険性は全然感じなかった。

たしかに、いまから20数年前までは、日本の農産物は農薬漬けであった。
山菜以外に、有機で無農薬というような野菜はなかった。
誰もが知らず知らずのうちに農薬を口の中へ入れてきた。そして、何割かの人々はアトピーになり、重症患者となった。
しかし、日本人の平均寿命は、その間にも大幅に伸び続けた。
この本で書かれていることだけがすべてであったら、中国人の平均寿命はこれから急速に縮まってゆくことになる。だが、おそらく事実はそのようにならないだろう。どこまでも眉唾でこの本を読むしかない。それにしてもびっくりする記述の連続に、貴方は気絶するはず。

◆国家工商総局が北京市などの19の小売店で販売されていたヘネシーなどの洋酒40本のうち23がニセモノだった ◆2005年に中国のメディアが「中国製ビールの95%にホルムアルデヒドが含まれていると報道 ◆中国の水道水は生水では飲めない。このためミネラルウォーターが大流行だが、広東省の抜き打ち検査で微生物が指針値以下の合格率はたった36%だった ◆阜陽市で粉ミルクで多数の赤ちゃんが死亡。このため市が市販の粉ミルクを調べたら6割が不合格品と判定された ◆2007年、南京市で牛肉の赤身を鮮やかにするため工業用染料のスーダンレッドが使われているのが発覚 ◆2007年に豚のウィルス感染で26万頭が発症し18万頭が処分されたが、焼却処分されたという事実はなく、闇に流れて食用にされた ◆発ガン性のあるカビの生えた古米が北京だけでも年間1万トン以上食べられている ◆中国では病院で処方される薬にも偽薬が多い。これまでに偽薬で35万件が検挙されている ◆中国の漢方薬はニセモノが大横行。そして、生薬には数百倍の有機塩素系農薬の混入がある ◆中国からの輸入違反食品には蒲焼ウナギ、アナゴ、サバの照焼き、カキフライ、アサリ、茹カニ、フライドチキン、ザーサイ、シイタケ、イチゴ、ピーマン、ピーナツ、ホーレンソウ、キクラゲ、etc・・・


2008年06月13日(金)
第138回「直売所だより」 [独善的週評]
山下惣一著 「直売所だより」(創森社 1600円+税)


著者は玄海灘に面した佐賀県の現唐津市、町村合併前は東松浦郡湊村という海沿いの農家に生まれ、1952年に新制中学を卒業してすぐに家業の農業を継いだ。
その時は水田80アール、畑50アールという村の中では中の上という規模だった。
しかし、父の夢は「コメ50俵を供出することが出来る百姓になりたい」というものだった。規模を拡大するには人手がかかるために嫌われる棚田を買うしかなかった。
こうして最大1.3haまで規模を拡大した。ところがコメの減反政策がはじまり、親子の夢は消えた。つまり棚田を放棄して休耕田の補助金をかなり受け取っている老夫婦だけの農家。

しかし、著者は農業から足を洗うことなく、エッセイやルポルタージュなどの文筆活動を続け、日本の農家を代表する第一人者として知られている。
私も「土と日本人・・・農のゆくえを問う」「身土不二の探求」「産地直想」「農のモノサシ」などを読んだ。その考えにはかなり同調する点が多い。しかし、双手をあげて同意出来ない。なぜならイノベーションがなく、農家モンロー主義的な考えがどうしても鼻につくから・・・。
ただ、地産地消をいちはやく唱え、学校給食に地場の食材を提供する一方、100戸の農家と「直売所」を玄界灘が一望出来る村の一等地に開設し、常時2人の店員を置いている。
こうした農家の直売所は、現在では全国に1万ヶ所にも及ぶ。

私の住む多摩地域には、農家の個人直売所があちこちにある。しかし商品が限られていて魅力のある野菜がなく、ナシやユズ以外はほとんど買ったことがない。
ところが地方へ車で出かけると「道の駅」があり、思わず野菜のまとめ買いをしてしまう。顔までは分からないが、生産者の名前が明記されて安心感がある。商品はスーパーよりも新鮮で、国産品だから安心出来、価格も手ごろ。

私の家の近くにプロのレストランや居酒屋を対象にした加工食品兼酒類の卸問屋の直営店がある。価格はスーパーに比べてかなり安い。そして小売りも行っている。
しかし、売っている野菜はほとんどが冷凍品か干物や水煮など加工済みのもの。そして、産地をみるとほとんどが中国。これを見ると、そこいらのレストランや居酒屋へ入る気がしなくなる。やはり有機野菜とまでは言わなくても、国産の野菜を自分で料理して食べたい。
そして、地方への出張が無いときは、八王子の道の駅まで出かける。
そこには、八王子周辺の農家だけでは品ぞろいが出来ないので、千葉産とか静岡産の野菜までが並べられている。消費者のことを考えると、地場ものだけでは間に合わず、残念ながら一部は他地域からの取り寄せざるを得ないのだろう。

ところが、著者は「それは直売所の本旨から外れた邪道だ」と力説する。
直売所というのは、農家で余った野菜や加工品を「おすそわけ」する場であり、商品の品ぞろいいが十分でないのも、また品切れになるのもやむを得ない。「直売所というのは、消費者のためにあるのではなく、どこまでも生産者のニーズで設けられたものであり、生産者主体の施設だ」と断言する。
こうした言動を弄ぶにはワケがあると私は推測する。
それは、著者の直売所から数キロしか離れていない名護屋城跡近くの国道204号沿いに道の駅・桃山天下市がオープンしている。駐車台数106台で24時間営業。サザエの壺焼きとイカの活造りなどが売り物。そして消費者のニーズに応えるため、一部の野菜は九州各地から仕入れているのだと思う。だから依怙地になって「生産者ニーズ」と叫んでいるのではなかろうか。

減反の補助金もあり、著者は自分が食うだけの農業に困っていない。食料危機で困るのは都会の人間。極論すると都会人が日本農業を軽蔑してきたバチがこれから当たるのだという主張。


2008年06月06日(金)
第137回「力強い地方づくりのための、あえて力弱い戦略論」 [独善的週評]
樋渡啓祐著 「力強い地方づくりのための、あえて力弱い戦略論」(ベネッセ 1200円+税)

市町が合併して人口5万2千人になった佐賀県の新生武雄市の市長選挙が2006年4月に行われた。この選挙に総務省大臣官房秘書課長補佐だった若干36才の著者が立候補し、見事に当選。全国最年少の市長として注目を集めた。
この市長、ともかく既成概念にとらわれないアイディアマン。
この2年間の間にいろんなことを試み、幾多の失敗と成功を勝ちとってきている。
単刀直入に表現するならば「アイディア若市長の地元力復活奮戦記」。
そのような題名にすれば文句なく飛びつけたのに、エリートお役人根性が抜けきれず「40の法則」による「戦略論」としてまとめた。これがなんとも嫌味。

談合で生き延びてきた守旧派企業はともかく、最近の中小ビルダーを含めて企業のトップは、常に挑戦を強いられている。一時も停滞を許されない。常に最新の情報を集め、工夫を凝らし、集中力とアイディアでトライ&エラーを続けて、なんとか企業を存続させている。
この著者程度のアイディアとトライなら、全ての企業のトップが経験済みだと言っても過言ではない。
ところが政治と官僚の世界は遅れている。この若市長程度で目立つ。

それにしても、地方自治体というのはこわい。
たいした実績がなくても、選挙にさえ勝てば人口5万2千人のトップになれる。
企業だと5万人の従業員というのはとてつもない大企業。
よっぽど運がよく、努力と実績がないかぎり、5万人という大きな組織のトップになることは不可能。
川砂の中に砂金を探すのと同じ確率。

これに対して地方自治体は1800もあるという。
そのトップのすべてが、私心がなく、役人に振り回されない企業力があったなら、日本の自治体は全てが活性化されているはず。
つまり、アイディアとか企業力とかで自治体のトップは選ばれていない。
政党の都合と談合で選ばれている。
つまり、本来は市民の生活を守る企業力とか手腕が第一義。それなのに、市政を活性化させる経営力が選挙では問題視されていない。
新聞やテレビなどのジャーナリストは、いまもって「保守」か「革新」かという古い分類方法で政治勢力を分類している。保守が自民党で、革新が民社党、その他という図。
事実は「自民党を潰す」といった小泉氏が誰よりも革新勢力であった。これに対して守旧派とか労組の方は明らかに保守勢力。いずれにしろ、こうした保守的な政治勢力の支配下に各自治体の長が取り込まれている。これこそが「地方自治危機」の本質であることを、この著書は良く教えてくれている。

前書きが長くなった。市長になって最初にやった仕事は助役、収入役という役職をなくし、2人の副市長制を導入し、一つの部屋に同居して意志の疎通をはかったこと。
次は、島田洋七氏原作「佐賀のがばいばあちゃん」のロケ先としていち早く名乗りを上げるとともに、武雄市のがばいばあちゃんを積極的に支援し、市のスターに育て上げたこと。
3は、武雄温泉水を地元の企業とタイアップして活用し、化粧水「ゆほほ」を開発し、ヒット商品に仕立て上げたこと。
4は、楼門朝市を開設し、売っていた野菜の天ぷらをパンに挟んで楼門バーカーとして売り出して人気を博し、朝市も大盛況をみせるようになってきたこと。
5は、レモングラスを武雄市のオリジナル物産品に仕立てあげたこと。
2年間としてはまあまあの実績。それにしても市長の権限の大きさにと可能性に驚かされる。


2008年05月30日(金)
第136回「脱・偽装食品紀行」 [独善的週評]
中山茂大著「脱・偽装食品紀行」(平凡社ペーパーバックス 1000円)

「食べてはいけない」とか「買ってはいけない」などというヒステリックな著書は読みたくない。あげ足ばかりとっていて、納得出来る積極的な提案がない。どこかの政党みたいに・・・。

題名の中に「偽装食品」という文字があるから、そうしたあげ足とりの正義感をプンプンまき散らした臭い著書だろうと嫌々ページをめくった。
ところが、スーパーで売られている普通の食品を買い求め、本物の食品を求めて旅をし、両者を徹底的に比較するという企画。半分はつまらないが、半分は面白かった。
そのいくつかを紹介したい。

日本には、牛や豚などの食肉処理場が全国に150ヶ所ある。しかし、作業をみせてくれるところは無い。BSE問題がらみでアメリカの処理工場の内部が時折テレビで取り上げられる。それを見る以外にはチャンスがないらしい。しかし、著者は運良く「チクレンミート北見工場」に潜り込み、その作業内容をリポートしてくれている。
屠畜作業は、係留場へ追い込まれた牛が、細い通路を通って一頭だけ入れる屠室へ向かう。牛が追い込まれると鉄製の丈夫な扉が降ろされ、屠殺銃で空砲の薬莢を頭蓋骨に打ち込まれて失神。牛はその場で横倒しに崩れ落ちる。その自重を利用してカラクリ扉がくるりと回転する。するとそこは放血場になっている。
牛が倒れ込むと作業員が素早く駆け寄り牛のノドに、タテにすかっとナイフを入れる。さらにノドを裂いてナイフを深く入れ、頸動脈を切って放血する。バケツをひっくり返したような大量の血が流れ出る。この血が肉に混ざったら肉質が落ちるから手際の良さが要求されるベテランが担当する重労働。
ノドから血が流れている間にもう1人が牛の足にチェーンを巻きつけて5m高に吊る。そして胃の内容物が逆流しないように「食道結紮」を行う。ノドを開いて食道を切断し、ゴムバンドで固定。同じことを直腸でも行う。内容物が逆流するとウンコまみれになり、雑菌で汚染されてしまうのを防ぐため。
このあと皮剥き作業。殺菌のために牛1頭に3トンもの水が使われるという。
そして丸裸にされた牛は頭が切り落とされ、同時にハラを裂いて巨大な内臓が「ボロン!」と音をたてて飛び出してくる。
切り落とされた頭は裏の作業台に回され、手際よく脳の一部が取り出され、BSE検査が行われる。保健所から派遣された獣医師が常時数名在勤して厳しい検査を行っている。1度目で陽性がでると2度目がおこなわれ、それも陽性だと帯畜産大学へ送られて精密検査。
著者は日本のBSE検査は想像以上に厳しいと報告している。

次は牛乳。
普通のパックの牛乳には、1万頭の牛の乳が混入されているという。
牛乳の主産地は北海道。集められた牛乳は、ホクレンが所有する牛乳専用の貨物船「ほくれん丸」と「第2ほくれん丸」で毎日釧路から茨城の日立港へ搬送されているという。
牛乳専用船といっても、オイルタンカーのように内部が空洞になっていて喫水線まで詰め込むというものではない。タンクローリーの後ろの部分だけが船に積まれ、日立港ではタンクローリーの頭の部分だけが迎えにくるというシステム。
そして、このタンクに積まれた牛乳は、関東から中部までにある各社の牛乳工場へ運ばれる。
つまり、雪印も明治も森永も、同じ原料を使っているのだという。
各社が直営牧場を持っているわけでもなければ、契約農家と年間契約して有機牛乳を造っているわけでもない。原料は同一。差別化は殺菌方法や加工方法にしかないという。なんだ・・・。

このほかホッケ、シシャモ、ビタミンC、塩の話が面白かった。


2008年05月23日(金)
第135回「ゆうばり映画祭物語」 [独善的週評]
小松沢陽一著「ゆうばり映画祭物語」(平凡社 1600円+税)


ほとんどの皆さんがそうであるように、昔はテレビもなければパソコンも携帯電話もない。
ムラムラとわきあがってくる文化的な渇望を満たすため、学生時代までは映画館に通い、無理をしても音楽会や芝居を観に行った。

しかし、実業界に入ると途端に多忙を極める。
まして、住宅産業というのはサービス産業。皆が休む土曜日、日曜日とか祝祭日が営業関係者にとっては稼ぎ時。
そして、水曜日とか木曜日が休日なのだが、この日は職人が働いており、現場監督が出勤している。その現場をチェックしてまわっていると、年中無休という状態が続く。したがって、ビルダーのトップには、映画とか観劇から遠ざかるしかない。
ご多分にもれず、私もその1人。
昔のキネマ旬報華やかかりし頃の映画は1つのこらず諳んじているが、最近の映画に関しては音痴もいいとこ。
もちろん1990年に、あの竹下首相の「ふるさと創生金1億円」をもとに発足した「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」などについては、ほとんど関心がなかった。へんぴな夕張市が映画祭をやって、なんの意義があるのだろうという程度の認識・・・。

昨年の4月、北海道新聞が行ったアンケート調査「夕張市が財政再建団体に転落した責任は誰にあるか」という質問に対して、最も多かったのが中田鉄治前市長で52%。ついで国と道が18%で、夕張市民自身と答えたのが12%だったという。
「石炭から石油へ」というエネルギー資源の大転換。
一番影響を受けるはずだった北炭は、政治力を発揮して国の補助金を独り占めして業種転換を果たして生き延びた。
残されたのが夕張市民。
中田市長を担ぎ出して、観光の町へ業種を転向しようと身の程知らずの巨大な箱物投資を行った。その過剰投資が、現在の夕張市民を苦しめている。

したがって、よく事情を知らない私などは、中田市長が音頭をとった「国際映画祭」も、その過剰投資の一貫だろうというぐらいにしか考えていなかった。
しかし、この著書を読んで、国際映画祭は箱物行政と異なり、ソフトな資源として市民の中にきちんと根ざしていたことを知らされた。
言ってみれば、中田前市長が行った行政の中で、唯一賞賛に値する価値ある事業。
著者は1990年の第1回ゆうばり映画祭の創設から最終回となった2006年の17回映画祭まで、プロデューサーとして企画を担当してきている。
延べ20年にもおよぶ貴重な記録であり、証言でもある。
そして、この映画祭を強力に推進したのは、まぎれもなく中田前市長の熱意であり、支えて来たのは広い市民と、映画関係者の情熱であった。

再建団体となって、市が主催する映画祭は2006年の17回で終わりとなった。
しかし、火種は絶えていなかった。
市民の手による新生「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008」が、今年の3月19日から23日まで盛大に開催された。
東京から札幌までの飛行機に多くの映画関係者が同乗し、千歳からは臨時列車で夕張に着くのは今までと全く変わらない。そして、数十本の映画が上映され、夜は市民によるストーブパーティをも開かれ、映画の町夕張は健在であることを世界に向けて発信した。
http://yubarifanta.com/ に3月19日から23日までのレポートが掲載されている。



2008年05月16日(金)
第134回「アメリカの下層教育現場」 [独善的週評]
林 壮一著「アメリカの下層教育現場」(光文社新書 740円+税)

ネヴァダ州の南端にあるのが有名なラスベガス。ロサンジェルスから400キロ東の砂漠の中にある。同州で2番目に大きい人口20万人のリノ市は、サンフランシスコから北東300キロの山岳地帯にある。
いずれもカジノが主要産業だが、リノ市はシェラネバタ山脈の観光拠点でもある。
しかし、同市のある中学校は生徒450人の半分がメキシコからのヒスパニック。英語がきちんと喋れない子が80%にもなるという。ほとんどの家庭の両親はカジノで働いている。

そして、中学を卒業するとリノ市にある16の公立高校へ進学する。
州は高校生1人当たり年間5300ドルの予算を用意していて、学費は無料。
この公立高校のほかに6つのチャーター・スクールが存在する。このチャーター・スクールへやってくるのは中学時代の成績が悪過ぎるか、一度は公立高校へ入学したものの問題をおこして辞めざるをえなくなった類の学生。
入学しても、およそ半分は中退してしまうとのこと。そうした生徒を、何とか登校させるために学校側は様々な工夫を凝らしている。
「Food」という項目を設けて全員でクッキーを焼いて食べたり、「Acting」として演ずることを学ばせるクラスを設けたり・・・。
そうした1つに2006年1月に新設した「Japanese Culture」という特別枠のクラスがあった。
ところが、この新設クラスを担当した先生は、学生のレベルのあまりの低さに愕然として、1ヶ月もたたないうちに辞めてしまった。

この高校の創立者は、著者のネヴァタ大学時代の恩師。
アメリカ在住のスポーツ関係のノンフェクション作家としてなんとか口を糊していた著者に対して「大学生を教えるのは意義があるが、底辺の人間を救うことこそ真の教育ではないかと考え高校を創設した。どうだね、高校を卒業できるかどうかギリギリラインの子供達と接してみないか? きっとライターとしての君の視野を広げてくれる良いチャンスなると思う。週に2回、2時間ずつでいいから」と、困り果ててスカウトの声をかけてきた。
教員免許を持っていないからと断ると、「特別枠のクラスの代用教員には教員免許が必要ではない。きっと何かを掴むことが出来る」とそそのかされ「やってみましょう」となった。

ところが、勤めて分かったことは、先生は全部白人。日本人はマイノリティとして差別の対象にされていた。女校長は、職員会議で決まった日程の変更を教えてくれないだけでなく、教室のカギも預けてくれない。アメリカ社会の閉鎖性を嫌と言うほど味わうことになる。
単なる教師志願だったら堪らず逃げ出すところだが、ライターとして実態をさぐってやろうという好奇心に駆り立てられ、必死になって崩壊した教室に取り組みはじめた。
「日本文化」のクラスを選んだのは19人。その子供達の家庭環境を調べたらびっくりした。実の親と生活しているのはたった1人しかいない。

アメリカの離婚率は50%。男だけで家族を養っている家庭が466万世帯。女だけで家族を養っているのが1362万世帯。そして、2004年の統計によると、里親に育てられている子供の数はなんと50万人にも及ぶという。
生活に追われるシングル・ペアレンツは育児にまで手が回らない。このため子供は躾もなされておらず、目的も無くて完全に怠け癖がついている。そして、親はキッチン・ドリンカーであったり、ドラッグに溺れていたりする。とても手に負えない落ちこぼればかり。
だが、相撲をとらせたり日本の唱歌を混ぜたりして子供の心を掴み、立ち直らせる。
しかし、女校長から次の年は日本文化のクラスを廃止すると告げられる。ほんの短期間の代用教員生活にすぎないが、病んだアメリカ社会の実態をグサリと抉ってくれている



2008年05月09日(金)
第133回「救えるいのちのために 日本のがん医療への提言」 [独善的週評]
山本孝史著 「救えるいのちのために 日本のがん医療への提言」(朝日新聞社 1400円+税)

著者は2001年の参議院選挙に、民主党候補として大阪選挙区から立候補して初当選。
ところが05年の春の健康診断では何一つ問題がなく、自覚症状もなかったのに、持病の大腸の内視鏡検査を12月に受けたら腹部のCTフィルムを見せられ、「肝臓に影があります」と言われた。素人目にも明らかにガンと判かる影。
翌週明けに、そのフィルムを持って紹介された総合病院の肝臓外科医に伺うと「これは、他の場所から飛んできたガンで、どこかに原発巣があるはずです。胸部のCTと頭部のMRIを撮って下さい」と言われた。

撮影の結果、肺と胸腺に腫瘍が見つかり翌日入院、その翌日に胸を5センチほど切開して前縦隔の腫瘍細胞を採取。さらにその翌日に退院。
年明けに詳細な病理検査結果が出て、担当の内科医から「お仕事はどうされます」と聞かれた。出来るだけ国会活動を続けたいとの考えから、治療は国立ガンセンター病院に決めた。
そして1月から4月まで、3~4週間ごとに都合4回の抗ガン剤の投与を受けた。
そして5月22日の参議院本会議場で、自らガン患者であることを公表し「ガン対策基本法」を一本化し、早期の成立を強く訴えた。
著者は、その後もガンの苦痛に耐えながら、07年7月の参議院選挙では比例区から出馬し、見事に当選を果たしている。

この書はガン患者の立場から、現状の問題点や改善すべき方向を、実に見事に捉えて報告してくれている。政治的立場は別にして、深く考えさせられる珠玉の書。
その中で、とくに感銘をうけた (1) インフォームドコンセントの説明料 (2) 世界の標準薬が日本で使えない現状 (3) 緩和ケア、の3点に絞って紹介したい。

最近、医師と患者のコミュニケーションを図るためにインフォームドコンセントの重要性が叫ばれ、医師の義務とそのための時間が増えてきている。しかし、その対価が診療報酬にない。
初・再診料は診療所、病院の規模によって異なる。
著者の場合の再診料は570円。これで抗ガン剤投与に伴う身体の状態や治療効果、さらにはその日に投与する種類や量、副作用などについて話を聞く。その間、30分から長い場合は1時間かかる。しかし、医療費の明細のどこを見ても、診療報酬の項目がない。
これは、医師だけに一方的に負担を強いることになっていないか、との指摘。

日本では、新薬の申請から承認までの時間がアメリカの平均500日に対して3倍近い4年もかかっている。そして、世界では標準治療薬として使われている薬の1/3が、日本では治験が済んでいない未承認薬のために使えない。
もし、使おうとすると、全額自己負担となる。それも、新薬だけの自己負担ではない。未承認の薬を使用した場合、それまで健康保険で受けてきた一切の入院や抗ガン剤による治療費までが自己負担となってしまう。いわゆる混合診療が認められていない。
このあたりの経緯や、今後の見通しについては詳しく書かれているので参考になる。
そして、日本で問題なのは申請から承認までの期間ではない。これは他国並になってきている。
問題は申請までの時間の長さ。治験をやる機関と人材の不足が大きいのだという。

ガン治療と言えばすぐに手術、抗ガン剤、放射線治療を想像する。しかし、同じくらい重要なのが痛みを取り除く緩和ケア治療。ガン腫瘍が大きくなって神経を圧迫して痛い。そして、この痛みは個人差が多く、必ずしも初期の段階から正しく薬が処方されていない。
痛みの除去には飲み薬、座薬、注射、速放製剤などの複数の薬を使いこなす技術が必要。ところが日本の病院ではこの研究と認識が欠けており、患者のQuality of Lifeが確保されていない



2008年05月02日(金)
第132回「南大門の墨壺」 [独善的週評]
岩井三四二著 「南大門の墨壺」(講談社 1700円+税)


大仏で有名な奈良の東大寺が起工されたのは1253年も昔の745年。
そして完成までには40年もの年月がかかったと言われている。

奢る平家の焼き討ちで、奈良の都と共に大仏殿が焼失したのが1181年。
大仏殿は西面から燃え始め、たちまち南面、東面、北面と燃え移り、瓦屋根から下が全て火に包まれた。そして高さ47メートルの大仏殿は夜を徹して燃え続け、明け方近くになって天をふるわせる大轟音とともに崩れ落ちた。
しかし大仏は、自重で倒れるのを防ぐために背後に築山が築かれていた。このため、大仏そのものは頭と手が落ち、胴体も少し熔けたが決定的な災害からは免れた。
それから4年後の1185年(文治元年)に、平家は壇ノ浦の戦いに敗れて滅亡。
その年に、後白河法皇を迎えて大仏開眼供養が行われ、大仏殿の再建が始まった。

この東大寺の再建を任されたのが大勧進の重源上人。
400年以上の風雪に耐え、地震にも倒壊しなかった昔の図面通りの姿に復元するというのが常識。ある時点まではその案が主流を占めていた。
伝えられてきた大仏殿の構造指針である木割の基本は、柱間は柱の太さの8倍までなら大丈夫というものであった。大仏殿の柱間の一番広いところが建地割図で30尺。これから、前の大仏殿の柱の太さは3尺8寸分角(1.15メートル)になっていた。
そして、柱の長さは7丈(約21メートル)で、頭貫を通し、桁をかけ、小屋束をのせて小屋組をつくるというやり方。

ところが、重源上人は海の向こうの宋国で使われている技法を採り入れ、今までと違う木構造で建てると言い出した。木軸工法には違いないが、現代風に言うならば欧米のポスト&ビーム工法の採用ということになろうか。
そして、この木構造を採用するために、最初は1/50の雛形が作られ、さらに1/20の雛形が作られた。その雛形作りに参加していたのが「連」と呼ばれる修行中の夜叉太郎。
当時の東大寺が抱えていた番匠の位は5つに分かれていた。
最高位が「大工」で、東大寺では2人しかいなかった。
その下が「引頭」と呼ばれる40才前後の中堅幹部が4人。
その下が「長」で20才後半から30才台。「連」はその下の見習い。その下が「小童」という15才くらいからの雑用係の5段階。

夜叉太郎はめったにない技術を習得出来る機会に恵まれたことを感謝していた。
しかし、大仏殿の間口は290尺(88メートル)で奥行き170尺(52メートル)、高さが156尺(46メートル)という巨大建築。
そして、新構造の柱は今までの3.8尺(1.15メートル)ではなく5.0尺角(1.5メートル)で、長さが18メートルから27メートル。これが92本も必要。5尺角の柱がとれる桧というと樹齢1000年。棟木にいたっては67センチ角で長さが45メートル。そんな巨木があるのだろうか・・・。たとえ山で見つかったとしても25~30トンもある材をどう搬出し、奈良まで運び加工し、クレーンもないのにどのようにして建てあげるのか、夜叉太郎には想像できない。

小説だから記述技術が必ずしも正確とはいえなかろう。また小説としての面白さには欠ける。
しかし、主人公の夜叉太郎が大仏殿の建造の中で「長」から「引頭」へと成長する過程で受けるいろんな試練が参考になる。そして、南大門建造の責任者として、単に技術面だけでなく管理職として人使いの面でもその技量が厳しく問われる・・・。
木構造の歴史が勉強になり、最近の変な建築本よりははるかに面白い。


2008年04月25日(金)
第131回「貧乏人は医者にかかるな!」 [独善的週評]
永田 宏著「貧乏人は医者にかかるな!」(集英社新書 660円+税)

日本の健康保険証制度は、世界的に見ても素晴らしい制度。
良質で安価な医療を、長年に亘ってあまねく提供し続けてきた。
健康保険証さえあれば、何時でも、どこでも、大学病院でも窓口を開いてくれている。
たとえ、それが1時間待ちの3分診断であったにしても、医療を受けられるのは当たり前のことで感謝の気持ちがなくなり、最近では医療ミスを訴える訴訟も多発している。

厚生労働省は、いままで「近い将来日本では医師が余る」と言い続けてきた。そして、医師過剰事態を防ぐために医学部の定員を大幅に削減し続けてきた。
われわれ部外者は、「開業医には定年がなく儲かる商売だから希望者が多く、定員を削減しなければならないほど希望者が殺到しているのだろう」と考えてきた。
ところが、最近になって地方の小児科とか産科、救急病院で医師不足のために閉鎖が相次ぎ、住民が大変不便になっているというニュースをやたらと耳にする。
だが、それは地方の、限られた地域の問題だろうと考えていた。
ところが、この著書では「日本では医師不足が深刻で、このままでは十数年後には日本の健康保険制度そりものが破綻してしまう」と警鐘を鳴らしている。
貧乏人は、アメリカの低所得者がそうであるように「医者にはかかれなくなる」と。

著者が挙げている根拠は、OECDの人口1000人当たりの診療医師の数。
人口1000当たり医師数が3人を突破している国は16ヶ国ある。
そのうちギリシャを除く15ヶ国がヨーロッパ。
イタリア、ベルギー、スイス、アイスランド、チェコ、オーストリア、フランス、ドイツ、ポルトガル、スウェーデン、スペイン、ハンガリー、スロバキア、オランダ、ノルウェー。
ところがイギリスをはじめとした英連邦のオーストラリア、ニュージランド、カナダはいずれも2.5人以下でその医療制度にもともと瑕疵があったと著者はいう。

イギリスの医療制度は健康保険制度ではなく、すべて税金で賄われている。医療が受けられればこれに越したことはない。ところがサッチャーはイギリス病を解消するために聖域なき財政カットを行った。それによって経済の停滞から脱却出来たが、医療予算が削られたために病院の多くは経営難に陥り、建物や医療設備は老朽化し、医師の給料もカットされたために多くの医師が病院をやめ、あるいは国外に流失し、深刻な医師不足に見舞われた。
その結果、生じたのが「待機リスト」。
診断を受けたくても受けられない。ひどい場合は半年待ちという状態だったという。
ブレア政権は、サッチャー方式を180度転換し、アジア・アフリカを含めて諸外国から医師をかき集め、かつてのようなひどい待機リストはなくなったと言われている。だが、医師を引き抜かれたアジア・アフリカ諸国からは大きなブーイングの声が上がっているという。

このイギリスよりもひどいのが日本。人口1000人当たりの医師の数は2.0人を切って1.98人。
WHOの192ヶ国の中で、なんと日本は63番目で後進国並み。
日本には医師免許を持った人は27万人いる。
しかし、介護施設、大学の研究者や他の研究機関、行政関係などで働いている医師がいるので、実質的に医療関係の従事者は25.7万人という。そして大学院生などを除くと、医療にフルに従事しているのは21万人に過ぎない。これを1000人当たりでみると1.67人。
それが老齢化で引退する医師が増え、一方では過度の長時間勤務で身体がもたず、職場を離脱してフリーターになる医師が増加している。これが、更なる医師不足を招いている。
イギリスは各国から医師を集めた。英語は国際語。しかし日本語を話せる医師は世界に無に等しい。日本の医師不足はイギリスよりもはるかに深刻だという説には、強い説得力がある。


2008年04月18日(金)
第130回「聴こえなくても私は負けない」 [独善的週評]
甲地由美恵著「聴こえなくても私は負けない」(角川書店 1400円+税)



著者は東京・大田区の蕎麦屋の3人姉弟の次女として生まれた。
両親は1階の店で、いつも忙しい。
2階でおじいちゃん、おばあさんが親がわり。そのおじいちゃんがいくら呼んでも答えない次女の耳の異変に気付いた。
病院で診断の結果は、原因不明の「突発性進行性感音難聴」
こうして難聴者としての人生が、2才の時からはじまった。

一番つまらないと思ったのがテレビ。絵は写るけど音がしない。
こんなにつまらないものはない。
保育園に通っていたころ、みんなが「え。いまなんていったの」と必ず聞き返してくるので自信がだんだんなくなり、いつも一人で絵本を読んでいた。
「みんなの言っていることがよくわからないの」と父親に言った。
「だったら本を読めばいい。それに自然は絶対に人を差別しない。だから本に飽きたら、外に出て自然にふれるようにしょうよ」と言われたから。
この父の教えにしたがい、春は草花に、夏は青空と白い雲、秋はドングリを拾い、冬は霜柱をザクザク踏む。お気に入りの保育園の庭の木に「おはよう。強は良い天気でよかったね」と話しかけ、根っこを踏むと痛がるから、出来るだけ離れて会話を続けた。

重度の難聴で、普通だったらろう学校へゆくべきなのに、母が普通の小学校へゆくべきだとねばり強く教育委員会や学校にかけあってくれ、普通校のピカピカの一年生としての生活がはじまった。
しかし、先生が何を話しているのかがさっぱりわからない。黒板に書かれていることはわかっても、その間の会話が聞こえないので意味が理解出来ない。どうしても授業についてゆけない。
なかでも辛かったのが音楽の時間。レコードがかかっても分からないし、歌のテストをされても歌えない。母の努力にもかかわらず、「なんでこんなところにいるのだろう」という疑問をいつも持っていた。
そして、午後は障害児学級に通っていた。そこで、口の形を描いたイラストで、発生練習をさせられ、クタクタになって帰り、そのまま寝入る生活が続いた。

それは、4年生のテストの時間だった。
答案用紙からか顔を上げて何気なく先生を見た。
そしたら先生が「あーあ、ハラ減った。ラーメンでも喰いてぇなぁ・・・」と口を動かした。
声は出してはいない。したがってみんなは答案用紙に向かって懸命にとりくんでいる。
「早く終わらないかな。そしたら食べにゆけるのに・・・」。
私は、生まれて初めて口の動きだけで何を話しているのか、その意味を知ることが出来た。
「それは、読唇術よ」と母が教えてくれた。
翌日、先生に「ラーメン喰いたいと言ったでしょう」と聞いたら、その通りといわれ、私の読唇術はクラスだけではなく他のクラスにも知り渡り、一躍人気者になってしまった。内向的な性格が徐々に変わり、勉強も好きになり、劣等生から解放され、塾にも通い、なかでも英語がもっとも楽しい授業になった。それと耳のハンデを最初から問題にしていない水泳が、内気な性格を全面的に変えてくれた。

そして、18才の時、サーフボードによく似たボディボードに出会い、2003年にプロとなる。
2005年に小さな企業がスポンサーになってくれ、オーストラリアで行われた難聴者男女混合世界大会に出場し、見事に優勝。その後ハワイのパイプライン大会で5位に入賞するなど、難聴というハンデにもめげず元気に明るく頑張っている。その姿がなんともすがすがしい。




2008年04月11日(金)
第129回 「葉っぱで2億円稼ぐおばあちゃんたち」
ビーパル地域活性研究所著 (小学館 1200円)

横石知二著「そうだ、はっぱを売ろう」(ソフトバンククリエーテブ 1500円+税)は、はっぱを立派な商品に育て上げた徳島県上勝町の、大変に面白い農村起業家物語。
表記の書名は、その題名からして単なる二番煎じだろうと考えた。あやしげな研究所が書いた二番煎じなどは読みたくない。
ただ、新しい視点があるかも知れないと、パラパラと開いてみた。
ところが、日本各地での地域興しの代表的な動きが25例紹介されている。上勝村の話はその1例にすぎない。
つまり、有名になった上勝村の成功にあやかって、なんとか本を売ろうとする2匹目のドジョウ狙った出版社のせこい作戦。
書名を「葉っぱで2億円稼ぐ婆ちゃんを上回る田舎の元気ビジネス25例」とした方が、内容を正しく伝えているし、買って読みたくなる。
ともかく「題名」と「まえがき」は最低。
誰が読んでやるものかと反発させられたが、紹介したくなる事例があるので取り上る。

一番感動したのが、阿蘇山麓の黒川温泉の客室稼働率97%という旅館の主人公のポリシー。
この黒川温泉、30年前はいつ朽ち果ててもおかしくないほど廃れた小さな温泉街。
それが最近では群馬の草津温泉、秋田の乳頭温泉の名湯を抑えて人気ランキングのトップ。
この温泉再建の神様と呼ばれるのが新明館の後藤哲也(72)さん。
この後藤さん、三代目を継いだ時からお客のことばかり考えてきた。カネをかけ、京都や軽井沢などで人の後ろを歩き、何に感動し、何にがっかりしているか耳をそばだてて聞いてまわった。とくに女性の本音を聞くのが目的。
聞き耳を立てていると30年前から茶室があり、枯山水に松に鯉のいる池という名所旧跡が飽きられていた。そして人工的な庭でなく本物の緑が求められてきた。軽井沢で夫婦や若いアベックが集まる店は必ず雑木林に接していた。
そこで、代々続いてきた庭の松を引っこ抜き、石灯籠を壊して手造りで露天風呂を造った。そして、裏山の杉や竹林も伐採し、コナラやガマズミのような山の雑木を植えた。
建物は数寄屋造をやめた。聞き耳のリサーチでは、普通の人は数寄屋ではゆっくりできない。一番安らぐのが昔の中くらいの農家建築。そして内装から壁や柱の色までススの黒い色と土の色に統一した。
そしたら、癒される新明館にリピート客が殺到するようになった。それを見て他の旅館の若い後継者が相談にくるようになった。そして、どの旅館も手造りの露天風呂をつくり、泉水や庭石を片づけて雑木を植えた。昔からあったコナラ、シャラ、モミジ、アオキ、ネジキなどを。
それを山の自然の法則に学んで植える。いくら綺麗でもモミジばかり植えては不自然。
そのほかヤブツバキのような常緑樹とガマズミ、エノキ、サカキのような実のなる木も植えた。このため、年中小鳥がとんでくる。つまり、木だけでなく、虫や鳥と一緒に雑木の森を育ててきた。温泉旅館はその自然の中に一つとして住まわせてもらう。
たしかに裏山をツツジ、サクラ、モミジで飾って感動させることは出来る。しかし、それだとお客がある時期に集中する。四季折々の美しさを持つ雑木と小鳥の鳴き声こそが感動を呼ぶ。
針葉樹を伐採し、本当の里山という自然を造って、黒川温泉はダントツの人気を得た。

このほか再生特区でどぶろくを提供している岩手遠野市の民宿。名人のお爺ちゃんやお婆ちゃんがインストラクターになって教え、年間1万人の来訪者のある栃木県茂木町の体験民宿。昔の非常食「おやき」を年商50億円規模にまで育てた長野県小川村。不耕起栽培でメダカとドジョウ、タニシ、蛙のいる田んぼでの米づくりでコウノトリやトキを育てている豊岡市や佐渡市。農業に参入し、地域に就労の場の提供と産業を守っている400社におよぶ土建屋。調布の私鉄の駅ナカにまで進出した長野県木島平村の直売所など、興味深い話が続く。



2008年04月04日(金)
第128回「手にとるように地球温暖化がわかる本」 [独善的週評]
村沢義久著 「手にとるように地球温暖化がわかる本」(かんき出版 1400円+税)



アル・ゴア氏の「不都合な真実」という、地球温暖化での最大のプレゼンテーション。
この本を読んで以来、大型書店の「環境コーナー」に並べられている本で、読みたいと思う本がほとんどなくなった。基本的な問題の大部分がゴア氏によって提起されており、それ以降の出版物はいずれも「二番煎じ」に見える。
つまり、地球温暖化の問題点について皆さんも私も、卒業したつもりになっている。

ところがこの著作は、1/4は既に分かっている範囲の重複だが、残りは今までにない視点でとらえ、問題を提起してくれている。
つまり、分かっていたつもりだったのに、はっとさせられる発見が随所にある。
例えば南極の氷が溶ければ海水面が上昇するが、北極の氷は溶けても海面が上昇しない理由。
これは水が凍ると膨張して体積が大きくなり、元の水より比重が軽くなって水に浮く。そして膨らんだ部分(全体の1/9)が海上に顔を出しているだけ。したがって、氷山が溶けても水位は上昇しないという。
私のような科学音痴にも分かり易く解説してくれているのがうれしい。

そして、温暖化のプラスの面とマイナス面に言及している。
温暖化は全体としては大きなマイナス。最大のマイナス点は海面の上昇。モルジブ、ツバル、オランダだけでなくニューヨーク、東京、名古屋、大阪のかなりの部分が沈んでしまう。
それと熱波による死者の増大、台風巨大化の被害、森林破壊や砂漠化などが主なマイナス点。
そして、穀倉地帯が北へ移動する。
このため、日本ではほとんどの都府県で現在作っている作物の栽培が不適になり、病害虫の多発により農業生産に悪影響が及ぶと予想されている。
その中で、北海道だけは温暖化により農業生産は大きくプラスになると予想されている。
米とかブドウなどの果物をはじめとして、北海道が日本の食糧基地化してゆく・・・。

この著書は農作物に軽く触れているだけで、水産物や林業などには触れていない。
しかし、最初に温暖化の影響を受けているのが間違いなく漁業。気温よりも海水温の上昇が急ピッチで進んでいるからだ。今まで沖縄や九州の海域でしか見られなかった熱帯魚が、東京湾で散見されるようになってきている。
このため獲れる魚の種類が変わり、ハマチなどの養殖適地が次第に北上化している。つまり、同じ生け簀で同じ魚を養殖することが出来なくなってきている。

ということは、現在の北海道旅行で十分に堪能しているサケ、マス、ニシン、タラ、コマイ、カニなどの水産物の水揚げが大幅に減少し、数十年後にはアジ、サバ、サンマなどの漁が中心になっているのかもしれない。

そして、この著書は将来のエネルギーについて論じている。
その中で、バイオエタノールは、それを自動車の燃料に加工する過程で大量のCO2が発生するので、ほとんど意味がないと断言している。そして、同じ面積でエネルギーを得ようとすると、トウモロコシ畑は太陽光発電の1/60の効率にしかならないという。
その太陽光発電も熱変換効率が悪く、設備投資を回収するのに30年はかかる。20年でソーラーパネルの寿命がきたら元がとれない勘定。しかし、燃料電池の方がはるかに投資効率が悪く、実用化にほど遠い。アメリカに比べて電気代が二倍もする日本では太陽光発電の普及を図るしかないというのが著者の意見。
私は太陽光よりパッシブハウスの断熱、サッシ、熱交換換気がはるかに効率的だと再確認。
最後に空気中からCO2を回収する巨大装置の開発を紹介している。未完成だが期待大。




2008年03月28日(金)
第127回「大学2年で社長になるということ」 [独善的週評]
星野 希著 「大学2年で社長になるということ」(ダイヤモンド社 1300円+税)



著者は今年の春、早稲田大学経済学部を卒業。
4月からサラリーウーマンとして働きはじめるピチピチの新入社員。
それなのに、大学2年生の時に、ヒョンなことから新会社を設立し、社長に就任した。
そして、最初からその新会社の寿命を2年間と決めた。
「期間限定」という世にも珍しい会社。
まともに取り合う気はしなかったが、読んでいたらそれなりに納得させられた。
経営的に参考になる点はほとんどない。しかし、対象を限定すれば、このような会社の設立もありうるという点で意表を突かれた。
今週は、私の気まぐれな好奇心に付き合っていただきたい。

早稲田に入学した著者は、unist(全国学生ネットワーク)というサークルに入った。各大学のサークル情報とかイベント情報のポータルサイトをつくろうという目的で組織されたもの。このサークルの部員活動というのは運営・企画・製作・編集など。資金は協賛企業から出ていて、ちょっと会社のような感じがあった。
ここで「若手でフリーペーパーをつくらないか」という話が持ち上がり、一年生だけでarrowsというフリーペーパーを立ち上げ、筆者がその編集長となった。半年に一度の出版というものだったが、各方面に繋がりが出来、ベンチャー関係にも人脈が広がっていった。

その中にオルティナを主宰する高城幸司氏がいた。このオルティナというのは経営者の話を聞いて、転職や起業をしようとしている人を支援しようというコミュニティ。その取材の仕事を依頼され、それに携わるようになる。
そして、第一線で活躍しているビジネスマンに取材にゆくと「今女子大生の間では、どんなことが流行っているの?」とか「こんなこと考えているのだけど、大学生が買ってくれるかな」という相談が、逆にポンポン投げかけられる。
大学生を対象にしたそうしたマーケティングは、仲間の大学生を組織するといくらでも出来る。しかし、無償のボランタリーではモチベーションが低くて良い仕事は出来ない。単なるアルバイトでも難しい。
どうしたらよいかと高城氏に相談したら「だったら、起業しちゃえばいいじゃん」と言われた。

ベンチャーの顔見知りも多く、起業家へのインタビューをしていたが、自ら起業したいとも社長になりたいとも考えていなかった。学校を卒業すれば、普通に就職するつもりだった。
したがって、起業するにしても学生時代の2年間に限定したものにしたい。そんなことが可能かどうか。そこで、取材仲間の東大生の荒川さんと明大生の中川に相談した。
「3人で期間限定の会社を設立してみない?」と。
「そういう会社があって良いと思う。自分のメッセージを伝えるフィールドも出来るし」と荒川さん。「社会勉強にもなるからやってみたい」と中川さん。
そこで各自5万円出し合い、高城氏から出資変わりに仕事をもらうと同時に監査役になってもらって、女学生3人の新会社マルシェビスが登記を終えて発足したのが2006年の1月23日。その日は、あのホリエモンが逮捕された日でもあった。

それから2年間、「学生を対象にしたマーケットに特化したマーケティングやコンサルタントを、学生らしい、学生でなければ出来ない手法で行う会社」が大車輪の活躍を開始する。
その代表的な仕事がアメリカ映画「ユナイテッド93」と「ワールド・トレード・センター」のプロモーション。今までのサークル仲間をフルに活用した試写会の開催で、口コミ客を集めて成功させるなど、多くの成果を上げる。
そして、昨年11月に新会社を閉鎖ではなく譲渡して、3人は普通の女子大生に戻った




2008年03月21日(金)
第126回「土にいのちの花咲かそ」 [独善的週評]
加藤登紀子著「土にいのちの花咲かそ」(サンマーク出版 1500+税)



先週は、あまりにもひどいモンスター マザーという毒気にあてられて、言葉も食欲も無くしてしまった。
その反動というか、口直しというか。やむにやまれぬ気持ちで選んだのがこの書。
ご案内のように、著者は歌手。
夫の藤本敏夫は反帝全学連の委員長。学生運動で投獄中に獄中結婚。
出所後は「大地を守る会」を組織し「鴨川自然王国」を拠点に自然食運動を展開していたが02年に逝去。それを綴った「青い月のバラード」すがすがしく、読後感が爽やかだった。
そして、夫の意志を受け継いで、若い世代とともに循環型の社会づくりを目指して活動を続けている。その中で生まれてきた詩集。今回は、その言葉のいくつかを選んで並べる。

●ひとり病室で私はふるえ泣きました。「ひと」であることは、こんなにも大きなことだったのか、「いのち」が誕生することは、これほど高らかな叫びであったのか。
歌う生活と子育てという不可能と思える時間のやりくりと手間暇のかかる出来事。でも子供はなんとかさせる力を持っている。彼ら自身が生きることを知っている!

●畑でとれた野菜を、とれたまま食べる。野菜をたべるということは、土をたべること。だから私たちの胃袋の中は土でいっぱい。洗い流してもみがいても、知らず知らずに食べている。土はからだの育ての親。

●山の上に雨が降る。葉っぱの上に降る雨は、水玉となって土に落ちる。土は大きな水タンク。木は大きな水タンク。木の幹を抱いた時、ほら、水が流れる音がするでしょう。

●フラミンゴの生息で有名なナクル湖畔の大きな上下水道設備を見にゆきました。汚水を処理してきれいな水にして湖に返そうという大事業。でも、下水処理場にはわずかな水しかない。街の人は水道料が払えないので水道が使えない。このため、投資したドイツの会社は撤退していったというのです。水の絶対的不足が心配されている状況の中で、水をお金にしようという大きな力が暗躍するであろうことが、本当におそろしい。

●戦争が終わり、平和がやってきた。二度と戦争をしないと誓いあった。けれども戦争にかわる戦いがはじまった。人は戦争の名において自然を破壊し、平和の名において自然を収奪した。

●小学校のころ、川で魚を獲って、森で狩りをして、山から野草をつんできて、『神様からのいただきもの』と大切にいただいていた。それがある時、突然ある人のものになって、その人にお金を払うと決められた。あれには驚いた、とは80才を過ぎたアイヌのおばあさんの話。
どうしたら、空が買えるというのだろう。そして、大地を。風のにおいや、水のきらめきを。
あなたはいったい、どうやって買おうというのだろう。

●アフリカの男が言った。アフリカ人はお腹の空いた時にだけ森へ行く。木の実はいつも実っていたし、魚も動物も必要なだけあればいい。ライオンと同じ。あとは踊ったり、歌ったり。楽しい時間がいっぱいあった。けれど、寒いヨーロッパから来た人たちは、とっても空腹を恐れていた。手に入るすべてのものを奪い、独占し、他の誰にも渡さない。ヨーロッパの人たちは、本当に貧しかったのだ。

●人生は押しくら饅頭。お互いが、精一杯ふんばって、別に勝ち負けなんかないのよ。ふんばった分だけ、元気がでる。ふんばった分だけ、熱くなる。自分であることを楽しめばいい。空という、大きな傘の下で。大地という、大きなふとんの上で。土にいのちの花咲かそ。




2008年03月14日(金)
第125回「モンスター マザー」 [独善的週評]
石川結貴著「モンスター マザー」(光文社1300円+税)



この本を読むと、言葉にならないほどのショックを受ける。
モンスター、つまり巨大な化け物となった母親が次々に誕生してきている。
著者は過去15年間に3000人以上の母親を取材している。
その豊富な取材を通しての発言だから、信じたくないけれど現実を見つめざるを得ない。
食育も乱れに乱れている。まさに末期的症状。そのいくつかの断面を、そのまま紹介する。

●「お母さんらしくなった」というのは昔の褒め言葉。しかし今は「ダサくなった」ととらえている。だから子どもをオンブするというような、母親らしいことは絶対にやらない。

●離乳食の本を買った。しかし書かれているウラゴシ、ユセン、アクヌキ、オモユという意味が判らない。このため、インスタントのベビーフードばかりを与えている。

●離乳食だけでなく朝寝坊して朝食をつくらない母親。子どもは好きなプリンを冷蔵庫から出して食べられるからラッキー。作って捨てるなら出来合いのお惣菜を買ってくる方が合理的。

●母親として家事や育児に関わっているよりも自分の時間が欲しい。その自分の時間にやっていることは何かというと「携帯メール」「ネットショッピング」「ニンテンドーDS」。

●マンションの査定に響くから台所は出来るだけ使わない。食費の節約のためお米を買わず100円ショップで買ったホットケーキ粉を使う。1袋で3食分出来、まとめて焼けば光熱費も節約。

●小学校の運動会の時、弁当を持参せず宅配のピザをとって周りに振る舞っている母親。ピザほどではないがコンビニ弁当は当たり前で、ガストのランチセットをとった母親もいた。

●子どもがいうことを聞かないと一発ぶっちゃう。これは子どものため。先に一発ぶっておけばそこで自分の怒りが収まる。下手にストレスが溜まると10発ぶっちゃうかもしれない。だから一発ぶつのは、賢い私流の予防線。

●「お受験」を成功させるには「カネ」「コネ」「体力」が母親に必要。自分の全力を注ぎこみ、自己犠牲を払わないとお受験母はやれない。子どもの成功は自分の努力の賜物と確信。

●素晴らしい自然育児を求めている良いお母さん。自然公園へ出かけて弁当を開いたら子どもが隣のダメ母親グループの弁当をうらやましそうに見ている。自分の作ってきた自然食品の弁当は、黒ゴマ、黒マメ、ノリ、ヒジキ、シイタケ、高野豆腐と見た目が真っ黒なのでドキリ。

●男児で立ってオシッコが出来ない子が増加。お尻丸出しで、自分で後始末が出来ない子も多い。ウォッシュレットになれた子は、冷たい便器に座れず、神経質な潔癖症も増えている。

●昔から食事の好き嫌いはあった。しかし、今はイカ、タコはもちろんゴボウ、モヤシ、リンゴまでも噛めない子どもが増えてきている。スープとかジュース、プリンだけで育った子。

●IHヒーターとエアコンで育った子。家で火を見たことがない。林間学校では飯盒で飯を炊き、カレーの具までつくることはムリ。このため飯だけとか具だけをつくる林間学校が増加。

●健康のため毎日子どもに納豆と野菜ジュースを出していますという母親。その実態は料理が面倒だから納豆のパックを出し、野菜料理の変わりにパックのジュースを出しているだけ。





2008年03月07日(金)
第124回「丹精で繁盛」 [独善的週評]
瀬戸山 玄著「丹精で繁盛」(筑摩新書 720円+税)



この著書は、もの作り業の5つの成功話からなっている。
(1)魚市場で厄介ものにされていた不揃いの雑魚を「縄文干し」という手法でリピーターの絶えない名物干物のいわき市の丸源水産の佐藤勝彦  (2)米づくりと高価な多機能林業作業車による杉材生産で、年収2000万円の収入を上げている日本海に沿いの鶴岡市三瀬町の加藤周一  
(3)仙台市のメディアテークをはじめとして建築物に造船の鉄の加工技術を最大限活かしている気仙沼の高橋工業の高橋和志  (4)泥のソムリエとの異名を持つ高山出身の左官屋挾土秀平 
(5)瀕死の重傷を負っていた家具の名門・飛騨産業を「1人屋台方式」と呼ばれる生産方式と「木材圧縮」という技術で杉材家具の開発成功で、見事に蘇生させた岡田贊三。

この5話のうち、なんと4話が建築関連産業の話。
著者は「丹精」という言葉に拘っているが、それはそれほど重要ではない。
それぞれの新境地が感動を呼ぶ。久しぶりに面白い本に巡り会えた。
左官業の話以外は、企業人として教えられる点が多い。本来は4話とも紹介したい。
とくに飛騨産業蘇生物語には、これからの日本のウッドサッシの将来性が語られているのかもしれない。それほどの内容を持っている。しかし、紙面の関係から米づくりと杉材生産の加藤氏に絞らせてもらった。他の話は著書を買って読んで頂きたい。それだけの価値有り。

農業高校を卒業した加藤氏は、冬期は国土計画の苗場スキー場の社員にスカウトされ、26才の春先までスキー場のパトロール隊員兼インストラクターとして働き、体力づくりと経営を学んだ。営業力の大切さと辛抱強さ、それと周到にプランを立てそれを具体化させてゆく手法を。
加藤家は3代にわたって林業と米作の二足わらじで生計を立ててきた。水田は5.6ヘクタールと100ヘクタールの山林を所有している。100ヘクタール以上の山林所有者の比率は6%というから、恵まれた農林業家。

まずコメづくり。農協を脱退して一切補助金を当てにしていない。
山形は銘柄の「はえぬき」が7割で後は「あきたこまち」。しかし加藤さんは「キヌヒカリ」という早稲品種にこだわっている。コメづくりは水と温度と風に対する五感の総動員の世界。
春は田んぼの水温を上げるために昼は水を動かさない。そして田に水をいれるのは夜。しかし、夏になると稲も暑さにやられるので冷たい水を与える。昼夜の温度差も大きく米の糖質も増え、魚沼のコシヒカリに劣らない米が出来る。農薬をほとんど使わない無化学肥料栽培米。
このため人気がよく5キロ2000円で直売の予約客で完売。市販の60キロ1.5万円に比べると1.6倍の価格。550俵を生産し、委託作業料も含めて田んぼの売上げが1000万円。

山林はほとんど杉。日本海に面していて木が育ちにくく、内地の一般的な杉に比べて目が詰まっていて堅い。外材なみの強度がある。
この杉を、年に300本だけ冬に伐る。
まず工務店や建築家のネットワークから選ばれた施主に立木を見てもらう。そして冬のうちに皆伐方式ではなく選伐して人口乾燥させておく。一戸の新築に要する木が300本、トラック15台分だという。つまり、100ヘクタールの山林地主でも、産出出来る量はこの程度。

しかし、加藤氏が卓越なのは04年に2000万円を投資して林業用多機能作業車スィング・タワー・ヤーダーを購入し、自ら3年がかりで熟練オペレーターになり、地元の山林組合の仕事も手間請けするとともに、若手オペレーターを育成してきている。
この機械は(1)作業道づくり (2)伐採 (3)集積 (4)一定の長さに揃える玉切り (5)架線集材の林業の5大仕事をこなす百人力の能力を持っている。これで「自分の山の木の売上げで500万円、働き仕事で500万円、計2000万円」という。日本にもすごい農山林家が育ってきている。


2008年02月29日(金)
第123回「新薬、ください!」 [独善的週評]
湯浅次郎著 「新薬、ください!」(新潮社 1400円+税)




筆者は日本テレビの報道カメラマン出身のドキュメンタリー番組のディレクター。
2004年の春、ある難病の取り組んでいる医師から「テレビで取り上げてもらえないだろうか」との相談が入った。
その病名は「ムコ多糖症」。聞いたこともない病名。
「生まれた時から症状が進行し、ほとんどが成人まで生きられず、10才から15才で死を迎えるという大変な難病。ところが、この治療薬がやっとアメリカで開発されたのです。寿命が限られている患者だから、一刻も早く使いたい。しかし、それが日本で使えるようになるメドが立たなくて・・・」
「どれくらいの患者がいるのでしょうか」
「全国で300人ぐらいでしょうか」
この答えに著者はひるんだ。不特定多数の視聴者を相手にしているテレビ。ごく限られた300人という利害に関する話題を取り上げることが、果たして可能かどうか。社内の了解が得られるかどうか・・・。

しかし、著者はこの問題は単に「ムコ多糖症」患者だけの問題ではない。
「ドラッグ・ラグ」という言葉が日本にある。
どこかの国で素晴らしい新薬が開発され、その国の当局が薬の販売を認めたとする。しかし、その薬が、日本の厚生労働省の審査を受け、認可を受けるまでに他国の2倍から3倍以上の時間がかかっている。この時間差をドラッグ・ラグという。
世界の売上げ上位100位に入る薬でみると、日本で承認されるまでのドラッグ・ラグは1416日。なんと4年近い。これに対してアメリカは500日という。アメリカの3倍の年月をかけているのが日本の厚生労働行政の実態。
それだけではない。世界の売上げ100位の薬で、日本の厚生労働省がモタモタしているために日本で未承認の薬が3割も占めている。

ムコ多糖症という極小難病を、問題として取り上げるのでは理解が得られない。
日本におけるドラッグ・ラグ問題の象徴としてムコ多糖症を取り上げるということであれば理解が得られ、問題が深められて社会的な共感を呼んでゆくであろう。
という経緯をへて、2004年の夏から7ヶ月に亘って取材と撮影が行われた。
そして、それが放映されての反響。
善意の支援の輪がひろがってゆくありさまを、厚生行政の動きとともにとらえた貴重なドキュメンタリー。非常に単純なテーマにすぎないのだが、最後まで一息に読まされた。

帝王切開で生まれた耀くん。1才すぎても動かないことが多く「耀くんは、まるで大仏さんのようね」といわれていた。身体が硬いのが気になって医者に相談したら「個人差の範囲」と簡単にあしらわれた。
それが、耀くんが2才の時、ムコ多糖症と診断された。当時唯一の治療法は「造血幹細胞移植」と言われていた。しかし移植が可能なHLAの適任者が身内にはいない。骨髄バンクのドナー登録者からなんとか3人の適任者を見つけたが、いずれも断られてしまう。
うちひしがれている時、アメリカから「ムコ多糖症治療薬開発が最終段階に入った」というニュースが飛び込んできた。この治療薬の「治験」に日本から4人が参加することになった。耀
くんは、一年間の有給休暇をもらった父と2人で、異国での治療に参加した。
ところが、医師からいきなり言われた。「被験者は3のグループにわけられます。①毎週実薬を投与 ②隔週実薬を投与 ③偽薬を投与、の3グループです」と。
アメリカまできて、炊事も英語も出来ない父親との生活に耐えながら、偽薬投与のモルモットになるのかもしれない。そんな試練の中で耀くんの支援の輪がひろがってゆく感動物語。



2008年02月22日(金)
第122回「コンビニ 不都合な真実」 [独善的週評]
月刊ベルダ編集部著 「コンビニ 不都合な真実」(KKベストブック 1500円+税)



コンビニという新しい流通形態を創造し、日本人の生活と文化までを変えてしまったセブンイレブン。常に新しいトライを続け、同業他社に比べて圧倒的な魅力を感じる商品開発力。
そんな同社に対して、私は一貫して好意的な目で見てきた。

この2年間に不二家、ミートホープ、石屋製菓、赤福、吉兆など、一連の偽装や賞味期限切れ問題が発生し、食の安全性と信頼性が大きく揺らいだ。
その時、セブンイレブンの鈴木敏文CEOは「当社の場合は、賞味期限が切れのものはレジのバーコードではねるので売れないし、売らない」と発言した。食の安全性に対して、絶対の自信を持っていることを伺わせる力強い発言だが、別の視点に立てば、賞味期限の切れたものはすべて廃棄するということだから、大変に「もったいない」話。

同社は「機会損失」ということを、ことのほか強調している。
売れ残りがないと喜んでいてはダメ。本来は20個売れたはずなのに、10個しか仕入れなかったため在庫がなくなりあと10個売れる機会を損失した。こうした機会損失を最大限少なくすることこそが商売のポイントという。
しかし、生の食べ物を、最大限用意し、それをすべて売り切るということは不可能に近い。
機会損失を少なくしようとすればするほど、時には売れ残りが生じて、廃棄処分が増えることになる。
機会損失ということも大きいが、食料の自給率が40%を切っている日本で、堂々と「廃棄処理をしています」と自慢げに話すのはいかがなものか・・・。
スーパーでは賞味期限切れ間際のものは、値引きして売っている。
キムチなど味が極端に落ちるものを除けば、今日の夕食用であれば値引き品で十分間に合う。
まして、今すぐ食べるコンビニのおにぎりや弁当であれば、廃棄処分をするよりも値引きして売った方が良いのではないか?
なぜコンビニでは、賞味期限間近のお買い得品がないのだろうか?

そんな疑問を常に持っていた。その疑問に答えてくれたのがこの書。
この著書は一方的に本部の悪い点を暴き、加盟店はすべて泣かされているというトーンで書かれている。それにしてはデーターが不十分で、説得力に欠ける。
しかし、私の永年の疑問には答を用意してくれている。その点だけを紹介したい。

わかり安く原価70円のおにぎりを10個、700円で本部から仕入れたとする。これを100円で売れば売上げは1000円で粗利は300円。これを本部150円、加盟店150円で山分けする。
全部売れれば問題ない。8個だけしか売れず、残った2個を廃棄処分したとする。
この場合、おにぎり1個の粗利は30円×8=240円。この半分の120円が本部。
ところが加盟店は100×8=800円の売上げしかないのに、本部へ支払う金額は70×10=700円の原価+本部の取り分120円=820円となる。
ということは、廃棄処分をすると加盟店は20円の赤字になる。
だったら売れ残りそうなおにぎりを1個50円、2個を100円で売ったとしたら900円の売上げ。
原価が700円だから粗利は200円。したがって本部が100円、加盟店が100円の利益となる。

つまり、本部は廃棄処分をしたら120円なのに、値引きだと100円にしかならない。
一方加盟店の方は廃棄だと20円の赤字が100円の黒字になるのだから120円も違う。
したがって、加盟店では値引き販売をした方が地球にも財布にも優しい。だが、儲けが薄くなる本部は極力値引きさせず、廃棄させようとしているらしい。コンビニ本部は温暖化の敵。
ということを書く週刊誌がない。なぜならコンビニが最大の販売ルートだから・・・。


2008年02月15日(金)
第121回「お届けにあがりました!」 [独善的週評]
三田村蕗子著「お届けにあがりました!」(ポプラ社 1300+税)



物やサービスを家庭まで運んでくれる商売のことをデリバリー商売という。
昔は、店屋物ということで、寿司、うなぎ、ラーメン、ソバなどを出前してくれた。
しかし、最近多摩地域のわが家の周辺で、出前してくれるのは寿司と5000円以上まとまった中華料理とピザ屋しかない。
のびたラーメンやソバ、うどんを注文するなら、良い材料が揃っているので自分で作った方が早くてうまい。
そんなわけで、出前(デリバリー)商売はすたれはじめていると考えていた。

ところが、出前とデリバリーは違うと言う。
昔から「ソバ屋の出前」という言葉があったように、「今出ました」といってから30分もたたないと着かないのが出前。時間が当てにならない代名詞に使われていた。

これに対して宅配ピザは時間厳守が当たり前。そして、時間を守るだけではなく「かゆいところに手が届く機能」を付加し、限りなく進歩をとげているのがデリバリービジネスだという。
つまり、DVD、ケーキといった新しい商品から、ハウスクリーニングや書類のシュレッダーといったサービスまで、指定の場所へ指定の時間に届けてくれる。
中にはイベント用として、マジシャンや似顔絵を描く人までデリバリーしてくれるという。
世にテレビショッピングマニアなる人類が居て、何でも宅配させる趣味の持ち主が居るらしいことは薄々気が付いていた。
しかし、ここまで多種多様なデリバリーが商売として成り立っていたとは驚き。
その中のほんの一部を紹介する。

●バイク便がうまれたのは1982年という。バブルにのってあっという間に普及したが、最近は頭打ち。そして、最近では単なる運び屋ではなく、法務省に出向いて登記簿をとってくるとか、薬品メーカーのテストで病院が投与した患者の血液などを定期的に冷凍状態で回収するといったサービスを付加するようになっているという。
そして、バイクに変わって今注目されているのが「自転車便」だという。

●牛乳の宅配はひところ120万軒にまで廃れてしまった。ところが最近は盛り返して5倍の600万軒にも及んでいるという。これはカルシウム分の多い宅配専用の牛乳の開発や保冷箱の開発、超高温殺菌で賞味期限が長くなったなどのため。
それと、ガチャガチャと鳴るビンへの郷愁とエコロジー感覚が時代に受けているから。

●在宅郵送検診ビジネスなるベンチャーが出現してきているという。自分で採血し、遠心分離器にかけた尿などを問診票と一緒に郵送するといろんな検査をして結果を報告してくれる。大学病院で1時間待ちの3分診療を受けなくてすむという。

●1パック2400円で洗濯をして手でたたんでくれるクリーニングサービス。
パックの容量は6~8キロ。この容器にパンツでも靴下でもGパンでも、なんでも積み込み、指定集荷時間にスタッフに渡すと、中1日で届けてくれる。利用客は独身男性と単身赴任の男性が圧倒的に多いと考えていたら、なんと利用客の7割は若い女性。よごれたパンティを他人に洗わせても平気な世の中になってきている。

●配達に不向きと思われていた生ケーキ。ケーキはいつの間にかスイーツと呼ばれるようになり「東京の有名なスイーツが食べたい」という需要が出てきた。衝撃を吸収し、形が崩れない箱が開発され、トラブルは2%以下に。誕生日などの晴れの日を飾る商品になっている。Etc・・。


2008年02月08日(金)
第120回「東京からはじめよう」 [独善的週評]
猪瀬直樹著「東京からはじめよう」(ダイヤモンド社 1500円+税)



著者は作家としてよりは道路公団民営化推進委員としてすっかり有名人となった。
そして石原都知事の招きで、官や政以外からの副知事としては60年ぶりという東京都の副知事に昨年就任し、消費者の視点で着実に実績をあげてきている。
都知事の口から「副知事就任」という言葉が洩れた日の緊急記者会見で、猪瀬氏次のように述べている。
「夕張問題で議論されているように、これからは本格的な地方分権を進めてゆかなければならない。その地方分権は東京がエンジンにならないと実現しない。東京は世界との経済戦争に勝って、日本全体のレベルをあげるという任務を帯びている。一方、夕張は少子高齢化の代表的な象徴。この両方がともに解決する方向を探ってゆかなければならない」と。

題名が「東京からはじめよう」とあるから、一方的に「東京エンジン論」の押し売りではないかと思って読み始めた。ところが、東京のことはほとんど出てこない。
朝日新聞グループが、著者をキャスターに迎えて、各界の論客との討論を放映している。その対談を編集したのがこの著書。
招かれている論客とは、元産業再生機構の冨山和彦、元総務大臣の菅義偉、経済財政政策担当特命大臣太田弘子、学芸大教授山田昌弘、千葉商科大学長島田晴雄、前鳥取県知事・慶大教授片山善博、前岩手県知事・総務大臣の増田寛也など9人。
このメンバーを見てわかるように、議論の中心はどこまでも地方に・・・。
その中で面白かった冨山和彦、島田晴雄、片山善博、増田寛也氏の対談を抽出して紹介したい。

今までは「均衡のある国土の発展」という名のもとに富を地方にバラまいてきた。このため、地方にはブロイラーのような餌をもらうだけの官と民の組織と企業が出来てしまった。
北海道新聞を見ても補助金がない、交付金がない、優遇税制がない、大手企業がこない、とないものねだりしかしていない。
しかし、東京で1万人にアンケートをとったら3割の3000人が北海道に行きたいと答えている。地方の企業はよく頑張っているが、国際競争力で豊富な経験を持った人材が足りない。地方に不足しているのは公共事業ではなく人材と情報。人材の誘致と移住がポイント。とくに不良債権を抱え込んでいる役場を再生させるには「やりがい」を感じる人材の投入が不可欠。

また、北海道の50の市町村と民間企業も加わって大都市から人を呼ぶ連合体を作った。
コンシェルジェカンパニーが函館に出来ようとしている。
このカンパニーが機能して、ネット情報を見た客を空港へ向かいに行き「滞在は1週間ですか、2週間ですか? そうですか3ヶ月ですか・・・」と判っても、現在はそうした長期のレンタカーや宿泊に適応出来るシステムがない。人を呼ぶアイディアとサービスの創造が先決。

議会というのは知事とか市町村長をトップとする執行機関をチェックするのが重要な役割。
ところが夕張市議会にしても大阪市議会にしても、その機能を全然果たしてこなかった。共犯構造になっている。労組も革新団体ではなく、完全に守旧派に堕落している。役人の最大の欠点は給料が税金から出ること。自分で稼がなくてもいいから平気でムダを行う。
結局、そういった議員を選んだということで市民にも責任があるのだが、現在の議員は職業政治家でなければなれなくなっている。議会を夜開くなどして、企業人やサラリーマン、農民や主婦が手弁当で議員になれるようにしてゆかないと、分権しても真の受け皿にはなれない。

それと、うっかり道州制を強行すると、役所の地方整備局の肩代わりすることになりかねない。
国土交通省の地方整備局には約3万人、農林水産省農政局には約2万人の役人が勤めていて、屋上屋を重ねた構造がそのまま温存される危険があるという。改革の道は、はるかに遠い。


2008年02月01日(金)
第119回「中国食材調査」 [独善的週評]
陳 惠運著「中国食材調査」(飛鳥新社 1300円+税)



週間金曜日とか船瀬俊介とか・・・。
「あれを食ってはいけない。これを買ってはいけない」とか「IHは電磁波過敏症になる」とか「塩ビはダイオキシンと環境ホルモンの元凶である」とかと、やたらと消費者の不安を煽るだけ煽り、ちゃっかり印税を稼いでいる輩。
電磁波の懸念のないIHが開発され、塩ビがダイオキシンの主犯ではなかったことが判明しても、一切自分の非を認めて改めようとしない。内部告発本なら良いが、科学的なデータの乏しい誹謗本の存在は許してはならない。

この「中国食材調査」は、大変に怖い本。これほど不安を煽られる本は珍しい。
それだけに、眉に唾して読み進んだ。
筆者は上海生まれで上海の成人大を卒業し、大東文化大学院博士課程を修了。現在は(社)日中協会会員として日本と中国を往来している。
書かれている内容は、中国の報道機関などの発表に基づいているので、単なる誹謗本とは違うはずだと思う。しかし、その中でも自分の体験に基づく記述にしぼり、ほんの一部だけをピックアップした。
それでも、中国へ行きたくなくなるほどの強烈パンチ。

中国食品機構は、国内に出回っている問題商品は、全体の19%以上だと公表している。
中国の食品工場は約45万。そのうちの約8割の35万が従業員10人以下の小規模工場。そして半分の22万工場は食品製造に必要な衛生許可証を取得していない零細工場だという。
拝金主義の中国では、カネのためなら何でもありの世界。モラルの低下が中国人の心を歪ませている。この負の遺産は、製造現場に蔓延しており、いつまでたっても食品公害が解決されそうにないという。

中国政府の統計によれば、2003年までに数十億キロの野菜と125億キロの米が残留農薬基準を超えていた。有機農作物として輸出出来ないこれらは処分されず、中国国内に流通した。
また、別の統計によると中国は世界一化学肥料を大量消費する国。先進国はヘクタール当たり225キロを上限としているが、中国では400キロ以上を使用している。
2006年の統計では、中国での小麦の生産量は6300万トン。1人あたり年間32キロに達しているが、検査で平均30%が不合格になっていることを考えると、中国国民は発ガン物質を含む健康を害する小麦を毎年10キロも摂取していることになる。

妻と上海旅行の折、友達が籠に入った高級輸入果物を届けてくれた。親戚のところへもって行きビニールをはずし、果物をとった妻の手に色がついた。10種類の果物のうち5、6種類の果物に工業用の色素が染められていた。

子どもの頃、母がつくってくれたタウナギと上海ガニが私の大好物。
上海の親戚と市場に出かけタウナギを買おうとしたら親戚に袖を引かれた。上海のタウナギのすべてに避妊薬のピルが使われているので買ってはいけないというのだ。タウナギは単体繁殖で、ピルを与えるとメスがオスに性転換し、オスは成長が早まるからだという。
また、友達と上海ガニを食べに行こうとしたら友達に反対された。上海ガニにもピルが使われているからだという。カニが排卵すると味も値段も落ちる。このため、排卵期が近づくと毎日ピルを与えて排卵を抑えているのだという。

3年前、親戚の家に泊まった日、国営の大手スーパーへ行ったら新鮮なタチウオを発見し、大きいのを一匹買った。家に持ち帰ると1時間後にタチウオが早いスピードで腐敗し始めた。
親戚は、ホルマリンづけになっていたのだと教えてくれた。また、私の大好きなスルメ干しにもシラウオにも保存剤としてホルマリンが使われていると言われ、気持ち悪くなった。



2008年01月25日(金)
第118回「まじめをやめれば病気にならない」 [独善的週評]
安保 徹著「まじめをやめれば病気にならない」(PHP新書 720円+税)



トステムのスーパーウォール部の元部長から、新潟大の安保先生の免疫力に対する造詣の深さとその効力の高さを何度となく聞かされてきた。
元部長は、東洋ドアがトステムと社名を変え、本格的に大卒採用を開始した時の第一期生。
潮田前会長の信任も厚く、いち早く高気密高断熱住宅に着目し、スーパーウォール工法の立ち上げに尽力した一人。
病気らしい病気もせず、病気とは無縁であると信じていた。
ところが52才の時、突然胃ガンと診断され、胃の大部分を摘出されてしまった。
以来3年半、抗ガン剤の副作用に悩まされ、疑問を抱きながらも腫瘍マーカー値が上昇する恐怖心に怯えて、薬を飲み続けたという。
その元部長が薬を飲むのをやめたのは、安保先生の「免疫革命」を読んだから。

私が元部長に久しぶりに再会したのは薬の服用を止めてから一年以上経過していた。
胃の大部分を摘出したため、食は細く、何回かに分けて補食する必要はあったが、顔色は回復してガン患者には見えなかった。怖れていた腫瘍マーカー値も低下し、顆粒球、リンパ球のバランスも正常値に向かい始めており、再発の怖れが薄らいだと喜んでいた。
こうした効果を目撃していたから、私も安保氏の古い著作を2冊ばかり読んだ。
このほど表記の新刊書が出版されたのを機会に、氏の「免疫生活術」なるものを紹介したい。

まず、免疫ということ。
これは外から体内に病原菌が入ってきた時、あるいは体内で毎日発生している3000~5000のガン細胞を、発症する前に察知して退治するシステム。免疫力とは退治する力のこと。
この免疫の中心的な役割を担っているのが白血球。
この白血球はマイクロファージ、顆粒球と、リンパ球で構成されている。その学術的な細部の内容については、限られた紙数ではとても紹介が出来ない。本を読んでもらうしかない。

次ぎは神経。
全身に神経系統のネットワークが張りめぐらされている。
この神経系統の中で、手や足や口や目など、意識的に筋肉で動かせるのが随意神経。
これに対して胃や内臓、血管のように意識して動かせない神経が不随意神経(自律神経)。
この自律神経には「交感神経」と「副交感神経」という拮抗した働きをする2つがある。
交感神経は、主に昼活動する時に働く神経。副交感神経は休んでいる時とか夜に働く神経。
そして、交感神経が優位になると顆粒球が増え、副交感神経が優位になるとリンパ球が増加。
そして、強調しなければならないのは、全ての病気の7~8割が、交感神経が優位な状態が続き、顆粒球が増えすぎていることが原因で発生している。
さらに言うならば、交感神経が緊張して顆粒球を出す最大の原因はストレス。
つまり、精神的なストレスや夜型生活による睡眠不足などのストレスが病気の主因。
この一連の関係を系統的に解明し、免疫力を如何に高めるかを明示したのが「安保免疫学」。

氏は生活習慣病などの慢性病は「病院へ行っても決して治らない」と断言している。病院へ行っていいのはケガをした時と急性感染症の救急処置の時だけ。
野生の動物は病気になると何も食べずにじっと回復を待つ。身体が痩せると少ない白血球で生体の防御をよりしやすくしてくれる。食欲がないのに無理に食べると、かえって病気が長引く。風邪で熱が出たとき、薬で熱を下げるのは、折角働いている免疫力を殺すことになる。
とくに高齢者の場合は飲んでいい薬は1つもない。免疫力を回復するには生活を変えること。
ガンにかかった場合は手術・放射線・抗ガン剤の三大療法は絶対にやめた方がいい。なぜならガン細胞を殺すのではなく、正常な細胞を傷つけ、免疫力を著しく低下させるから・・・。
また、ボケは過度のリラックス状態が原因。ボケ防止には好奇心を失わず、動き回ること。

2008年01月18日(金)
第117回「コンビニでは、なぜ8月におでんを売りはじめたのか」 [独善的週評]
石川勝敏著 「コンビニでは、なぜ8月におでんを売りはじめたのか」(扶桑社新書 680円+税)



著者は日本生気象学会会員。
気象情報を通じて顧客のニーズを予測し、商品開発、仕入れ、店舗オペレーションを展開するウェザーマーチャンダイジングの会社を興している。
しかし、ウェザーマーチャンダイジングでは何かが足りない。そこにあるのは単なる気象条件で「人間の本能や欲求」が反映されていない。
そんなとき、偶然出会ったのが「生気象学」。
生気象学とは、気象がどのように人間の生活に影響を及ぼしているかを、科学的に調べる学問。
早速学会に入会し、勉強をはじめたら「セットポイント」と「基礎代謝の変化」という基本的な考えに突き当たることが出来た。

まず、セットポイント。南北に長い日本では夏は40℃、寒冷地の冬期は-30℃にもなる。
つまり日本人は70℃も温度が変化する国で暮らしている。
それにもかかわらず、人間の体温はいつも36.5℃程度に保たれている。
暑いからといって体温が上昇し、寒いからといって下がることはない。この36.5℃前後に保たれていることをセットポイントと言うのだそうだ。
このセットポイントはとても繊細で、体温が0.5℃上がっただけでも風邪かな? と不調を訴える。そして厚着をして温かいものが食べたくなる。逆に気温が上がれば薄着をし、冷たいものを求める。
セットポイントを保つためのこうしたアクションは、気象変化から身を守る本能的な行為。

基礎代謝量変化とは、何もせず1日じっとしていても呼吸をし、心臓を動かすために必要な最低限のエネルギー消費量のこと。
平均的な成人男性の1日の消費エネルギーは2000kcal。このうちの3/4に当たる1500kcalが基礎代謝量だという。運動による代謝量が500kcalというからびっくりする。
そして、この基礎代謝量は2月末から夏にかけてすこしずつ下がってくる。
反対に8月末から冬に向けては増えて行く。
春から夏にかけては外気温が高くなるので体内に熱が溜まる。このため汗をかくなどして放熱してセットポイントを守ろうとする。
秋から冬は外気温度が下がるため、エネルギーを摂取し、体内で産熱しながらセットポイントを保とうとするので基礎代謝が増加。
夏と冬では、基礎代謝量が1日150~200kcalもの差があるという。

2月末から温度上昇期に入ると、基礎代謝量が1500kcalから1300kcalへの低下が始まる。そして、ある日急に温度が数℃も上昇すると、2月末から冷やし中華ソバが売れるようになる。
つまり、絶対的な温度では冷たいものを食べる季節ではないのに、セットポイントを保とうと身体が自然に中華ソバを見て衝動買いをしてしまう。
これと同じことが、8月末からの温度下降期にも言える。
コンビニで8月末からおでんが置かれ、肉まんが売り出されるのは、このセットポイントのことがわからないと理解出来ない。

今までデパートなどでは、春夏秋冬の4シーズンに分けて商品を揃えていた。ところが生気象学を応用すると、真冬でもアイスクリームボックスを仕舞い込む必要がないたというわけ。
このほか、味覚を5覚ではなく7覚に分類しているのも面白い。5覚のほかに圧覚と温度覚を加えている。温度上昇期は噛みごたえの軽いものが、下降期にはしっかりした噛みごたえのものが求められるという。そして上昇期は25℃、下降期は27℃を上回ると冷たいもの、下回ると温かいものが欲しくなるというのがセットポイントからみた原理だという。


2008年01月11日(金)
第116回「日本一の村を超優良会社に変えた男」 [独善的週評]
溝上憲文著 「日本一の村を超優良会社に変えた男」(講談社 1500円+税)



人口30万人の盛岡市。
その盛岡市の北西部に隣接している滝沢村。
村というから人口せいぜい5000人程度と考えがち。
だが、なんと53000人。市に昇格できる資格を持つほどで、人口が日本一多い村。
その村役場は、ご多分にもれずお役所仕事が幅をきかせていた。

縦割り組織の常で縄張り意識が強く、決して他の部署と連携するとか仕事を手伝うことはない。
前例の踏襲ばかりを金科玉条のように掲げ、新規の施策は受け入れない事なかれ主義。
稟議書を出してから決済まで2週間を要するスピードの遅さ。
そして職員の読んでいるのはスポーツ新聞と競馬新聞。雑誌はピンク系。
昼は職場をウロウロしているくせに、夕方になると残業代目当てに机に向かう職員。
働かず、考えず、勉強せず、の「3ず」が支配していた典型的なお役所。

そこえ94年、村長として初当選したのが44才の泡沫候補にすぎなかった柳村純一。
地元の高校を卒業して東京の京成電鉄時代に労働運動に関わり、帰省して村議をやっていたが、小沢一郎の強い影響下の岩手県で、小沢の息のかかっていない者が村長になること自体がそもそもの珍事。
ならず者にしか見られていなかった柳村が、当選の翌日に登庁すると300人近い職員が集まっている公民館で、職員の耳を疑わせるような言葉を発した。
「滝沢という弊社の皆さま。 今回この村の社長に就任した柳村純一であります・・・」
意識的に職員にショックを与えるのが目的。
職員の意識を徹底的に変えようという強いメッセージ。
そしてその目的は、06年の11月に、3期12年間に亘る社長任期の中で達成した。

地方の役所で働いている職員は「地方公務員法」で守られており、よっぽどのことがないかぎり首になることがない。
したがって、仕事をサボっても強く咎めることが出来ない。このため、「住民のために働く」という考えはことさらなく、自分の場所を守るためにいやいや仕事をするという意識が染みついている。
この意識を崩すために、いくら「民間企業並の意識を持って住民のサービスに当たれ」と言っても馬の耳に念仏。

新社長が最初に手がけたのは「情報公開」
ところが村役場の情報は各課でバラバラ。統一されておらず、しかも古い書式で山のようにあり、とても公開出来るような状態ではなかった。
そこで思い切って職員全員にパソコンを導入することを決めた。サーバーなどの設備を入れると導入費は1億円弱。その費用を捻出するために既存の事業を洗い出し、道路舗装関連事業の予算に白羽の矢を立てた。

このパソコン導入は、職員の意識革命を一気に進めた。上意下伝が当たり前だったが、年配者の方が教えてもらう側に回った。また、パソコンは頑迷な縦割り組織の壁を溶かしはじめた。
そのあとはISO1401の取得。1職場1改善運動。係長制度の廃止。8人の部長による早朝の部長会議の設定。独特の新卒採用試験などなど。職員の意識と組織改革は確実に進行した。
そして、職員の納得のもとに人件費のカットや、住民参加の行政で、財政危機を乗り切った。
テレビで全国放送された住民の手だけによる道路建設。そして、06年には地方自治体で初めて滝沢村が「日本経営品質賞」を受賞している。まさに優良企業に脱皮したのである。


2008年01月04日(金)
第115回「課題先進国 日本」 [独善的週評]
小宮山 宏著 「課題先進国 日本」(中央公論新社 1600円+税)



著者は東大総長。
もともとは化学系の出身だが、非常にオリジナルな研究を進めて頭角を現した。
著者は、20世紀は「知」が爆発した時代だったという。あらゆる分野で発明があり、発見が進んで、一世紀の間に知識はおそらく1000倍以上に増えたのではないかという。
これは、大変喜ばしいことだが、科学などの知識が細分化し、専門化せざるを得なかった。
このため、個々の研究が蛸壺状態になり、全体像を見にくいものにしてしまった。
したがって、今求められているのは、目的に向かって「知」を統合する作業。

日本は資源がなく、人口が多い。世界一ネガティブな要因を抱えていた。
しかし、世界一ネガティブな要因を、過去の日本は1つ1つ潰し、貧困をはじめとして公害、生産性の低さを見事に克服してきた。日本は致命的と思える問題にも、正しい解答を出してきた。つまり、課題に対して最も対応力を持っている国。
現在の世界が直面している温暖化、高年齢化、少子化、食料並びに水不足、新しい医療制度や教育制度の改革、新しい格差の是正。
世界に先駆けて、日本はこうした大きな課題に直面している。
知を統合することさえ出来れば、かつての日本がそうであったように日本人は必ずこうした難解な課題を克服することが出来る。
そして、世界に指針を与えてゆくことが出来る。
新春早々、政治家をはじめ評論家などという人種共は、日本のアラ探しに終始して、悲観論を並べ立てている。その中にあって、この著の格調の高さと説得力に救われる思いがした。

まず、環境とエネルギー問題。
著者は99年刊の著書「地球持続の技術」の中で「ビジョン2050」をいち早く発表している。
もし21世紀中にCO2濃度が安定化しても、その時海水面が1メートル上昇していたとすれば海深部の温度上昇と膨張により30世紀には海水面が10メートル近くも上昇する。
これを防ぐには2050年までに (1)徹底したリサイクルによる物質循環システムの構築 (2)エネルギー効率を現在の3倍に引き上げる (3)自然エネルギーの利用を現在の2倍に引き上げる必要があると唱えた。この思想は、世界的に認知されてきている。

まずエネルギー効率を3倍にする問題。この解決策を具体的に示しているから嬉しい。
まず「輸送コストは理論的、原理的にゼロ」だということ。石油や天然ガスのパイプラインは径を太くすると抵抗が減り、出発点と終着点の高さが同じであれば、途中に山があり谷があっても輸送に必要なエネルギーはゼロ。
電力の輸送も送電線を太くして抵抗をゼロにすれば輸送途中の損失をゼロに出来る。
自動車も現在のハイブリッド化、軽量化を進め、ガソリンの消費をゼロにすることが出来れば電力でエネルギーの消費量は理論的に1/7にすることが出来る。
同じことでエアコンやエコキュートなどのCOPは現在の5、6という数値ではなくCOP43にまで高めることが理論的に可能。それを実現するには並々ならぬ研究開発がなされねばならないが、いずれにしろこうした分野で日本は世界のトップを走っている。
氏は住宅に対する理解は乏しいが、除湿機能を持った高性能なアジア型エコハウスの開発が可能であれば、その需要は大きなものがあると強調している。プレハブ各社よ自省すべし。

自然エネルギーを2倍にする問題。まず化石燃料の比率を2050年には現在の80%を60%にまで減らす。そして原子力、水力、バイオマス、太陽電池、風力で残りを補って行く。そして、原子力の利用は今世紀までとし、アジアではバイオマスをトウモロコシではなくコメで考えて行くべきという。このほか、教育問題など画期的な提案が山盛り。勇気を与えてくれる好著。


2007年12月28日(金)
第114回「ナース裏物語 白衣の天使たちの素顔」 [独善的週評]
中野有紀子著「ナース裏物語 白衣の天使たちの素顔」(バジリコ社 1200円+税)
実物の装丁を見たとき、面白半分の内幕物にすぎないだろうと感じた。
正直なところ安っぽくて、読む気がしなかった。
ところが読み始めてみると、今まで読んだ幾多のナース本の中で、もっとも客観的にナースの実態を伝えており、格段に面白く納得させられた。
この本を読んで、多くの若い女性ばかりではなく男性も、積極的に看護士になりたいと考えてくれるのではないかとの希望を持たされ、嬉しくなった。

ナース不足という話をしょっちゅう聞かされる。
夜勤があって勤務時間が不規則だし、いつも立ちっぱなしだし、患者の身体を触ったり運んだりしなければならない。
したがって、ナースの仕事は「きつい、きたない、きけん、の3Kなのだろう。それと、お給料も夜勤があったりする割に安いのではないだろうか。「だから、若い子には人気がなく、なり手がないのだろう」と私だけでなく貴方も考えているはず。

ところが、著者はハッキリと書いている。
「ナースは、ちゃんと週休二日制です。ちょっとした気の緩みが生死に直結する仕事だから、逆にちゃんと休めるし、無茶な残業もない」と。
ただし、ローティションの関係で平日の休みが多くなるけど月に1回は土日に休める。
夜勤も周に1日くらい。そして、夜勤明けで平日の昼間に思い切り朝寝坊できるのもなかなか乙なもの。同僚と話をして意見が一致するのは「ラッシュアワーで毎日9時から夜までの仕事につくのは、絶対にごめんだわ」というもの。

私の周辺で見てきたインテリアコーデネィターや設計士さん。
土日や祭日はお客さんとの打ち合わせが立て混んでおり、それこそサービス業として休んでおれない。週休二日制というのは名ばかりで、ウィークディも打ち合わせの準備のために飛び回っており、月に3日も休みがとれれば御の字。
そして、夜に会議などもあって、いつも帰るのは8時すぎ。
それでも良い方で、大手建材メーカー関係の子会社の場合は、毎日家に帰ってくるのが10時過ぎだと聞いていた。
明らかにナースさんの方の勤務時間がはるかによい。しかし、お給料は・・・。

これに対しても、著者は「ナースのお給料は、ハッキリ言ってよい」と断言している。
看護学校を卒業して、1年目の手取りは21~22万円。年収400万円弱。
「30才の私の周りの東京のナースの平均年収は550万円くらい。もちろん地方では若干の格差があるでしょうから500万円に満たないところもあると思います。しかし、同じ年の一般事務職や派遣社員の収入よりはかなりいい。それでいて、休みもちゃんと取れるし、夜勤明けには平日休みの快感も味わえる。貯めたお金で旅行へ行ったり、エステにもゆける。とても他の職業に転職したいとは考えない」と。
そして、子育てが終わると、現役に復帰も出来る。「ナースよいとこ一度はおいで」が本音。

しかし、そのナース業で新人期間の2年間はともかく大変。仕事に慣れるだけでなく研修があるし、覚えることが一杯。それに受験生並の大量の課題が出されるので、それをこなすのに真っ青になってしまう。
ところが3年目になると楽になるかというと、そうはゆかない。今度は新人を教育するプリセプターとしての役目が負わされる。そして、嫌な医者の命令や患者のセクハラ、それにもましてナースの敵である患者の家族との闘いに揉まれる。そして強いナースが誕生する。


第113回 「赤字で町はつぶれない 頑張ろう 地域社会」 丸谷金保著 (現代企画室 1524円)

道産子でなくても、夕張メロンと池田町のワインを知らない人はいない。
1972年に読売新聞社から出版された「ワイン町長奮戦記」を読んで、私もささやかな隠れフアンの1人となった。
それまでの甘ったるい赤玉ポートワインに比べて、池田町のワインはやや酸味が強いけれども辛口で、口に合った。そして、道内を列車で移動する時、コマイを齧りながら赤の小瓶を楽しんだし、帰路の千歳空港ではピリ辛ソーセージを肴に旅の疲れを癒した。
また、日本橋丸善の南のビルの地下にあった町営レストラン「十勝」へは何人かを案内した。

著者は1919年生まれの米寿。
参議院議員も2期つとめており、いまさらという気がした。
ところが、単なる奮戦記の二番煎じではなく、赤字の地方自治体を如何にしたら活性化させられるかという点で参考になる点が多い。
ともかくカネがなかったので、町長をはじめとして町役場の全職員がスコップをもって工事を行い、町民を巻き込んでいった先駆的な地域活性化運動。地方自治の原点がここにある。

1952年の十勝沖地震。53年、54年の大凶作で町政は赤字再建団体に転落、職員の給料も店払いもストップ。町長が責任を取って辞めさせられ、町議は自民党と社会党が頬被りして談合し、次期町長に助役を推すことを決めた。
これに反発した農村青年グループが農民同盟事務局長を対立候補として担ぎだした。
しかし、全ての団体と政党が推薦する助役に対し、組織もカネもない全くの無名。1割も票がとれれば御の字という下馬評。ともかく演説会にきてもらい「2000万円も滞納繰越金がある。それに1800万円の赤字債。これを2年で返却し、犬、ミシン、荷車税を撤廃する」と叫んだ。
フタをあけたら泡沫候補が72票差で当選という大番狂わせ。

町長になって最初の仕事が滞納している税金集め。町長自ら出かけ「5万円を払って欲しい」といったら「いくらでも払う。その前に30万円もの薬代の借金を払ってくれ」と言われた。
そこで担当者を集めて聞いたら「税金が入ってこないので2年分の支払いが滞っている」という。実質的な公文書偽造による詐欺行為が町議会の黙認でまかり通ってきたのだという。
そこで、町を回って役場にいくら貸しているかを聞いてまわった。そして拓銀の支店長に話をして500万円を借金し、店払いをした。そのおかげで税金の滞納金も入り、秋までに銀行の借金を返済し、銀行の信用も高まり、商店街からの評判もよくなった。

しかし、なにしろ議会は全部が反対派。助役も承認されなければ、道路計画も否決される。
そこで、役場が終わった夜の6時から9時までの3時間、若い職員に勤労奉仕をして欲しいと頼み込み、町長自らスコップをもって道路工事を行った。町に一台しかないダンプカーで砂利を運び、商店街が灯りをつけて応援してくれた。
今では労基法の関係で難しいだろうが、こうして議会が予算をつけてくれなくても、自分たちで汗を流せばかなりのことが出来ることが分かり、職員の自信となってきた。
こうして公約どおり2年間で赤字再建団体から脱却し、ストップしていた給与改定も出来た。

その成果の上に立ってワインづくりとその販売大作戦が展開されるのだが、これは長すぎるので省略させていただく。是非本を買って読んで頂きたい。
そして、ワインづくりと並んで感動させられたのが道の建設委員会の視察のために8日間で18kmに及ぶ道路を湿地帯の中に敷設した工事。これには全職員が一致協力して見事に完成させている。「やってくれ」と待っているのではなく「やってやろうじゃないか」という一丸となった行動に心打たれる。池田町は自分たちの手で脱皮し、見事に再生した貴重な記録。




2007年12月14日(金)
第112回「ecute(エキュート)物語 私たちのエキナカプロジェクト」 [独善的週評]
鎌田由美子他著「ecute(エキュート)物語  私たちのエキナカプロジェクト」(かんき出版 1400円+税)

最近の新聞に、時折「駅ナカ商店街」という言葉が出てくる。
東京と埼玉、それと東海道新幹線で品川駅を使われたことのある人以外は、その内容がよく理解出来ないと思う。

乗降客の多い駅には、必ず駅ビルがある。
ラビナ、エスパル、ルミネ、シャミネ、フレスタなどJR系デベロッパーが主体になったテナントビルが圧倒的に多いが、有名なデパートが入っているものや地元名店街という形もある。
いずれにしても、電車に乗る前とか乗った後に、ついでに寄ってみる形で、いずれも駅の構外に立地している。
駅の構内にあるのはキヨスクとか立食いソバ屋とかジューススタンドぐらいしかなかった。したがって、駅の構内に入れば、簡便な飲食と手回品の買い物しか出来なかった。

ところが、2005年3月に「ecute大宮」が開店し、同年10月に「ecute品川」の駅ナカが開店した。これにより私の日頃の行動が変わった。
私は群馬・新潟方面、あるいは東北方面へ旅行する時は、武蔵野線を使って大宮から新幹線に乗る。しかし、新幹線の待合室にはこれはという店がない。したがって、必ず自宅で早い朝食をとってからギリギリ新幹線に間に合うように家を出た。
それが、ecute大宮が出来てからは家で朝食をとらず、早めに家を出るようになった。
大宮の駅ナカ商店街には、7:00から小ぎれいでリーズナブルな店が開店してくれている。
有名なカニチャーハンをはじめとして、うどん、パスタ、カレー、おむすび、スープバー、飲む野菜、各種の出来たてのパン、コーヒースタンドなどが軒を揃えている。
その日の気分によって、のんびりいろんな朝食を楽しむことが出来る。
正直言って、旅の朝の楽しみが1つ増えた。

遅い時間になるとお菓子の店や寿司、割烹、中華、イタリアン、各種雑貨の店もオープンする。
しかし、それは私には関係ない。早朝に軽く一杯やりながら、おいしい食事に満足すると、一時間はぐっすり車中で眠れる。目的地に着く頃には身も心もシャンとしてくれる。

もう1つのecute品川には、東海道新幹線を使う時と品川から新橋方面にあるメーカーの本社を訪れる時に必ず寄る。朝の早い新幹線の朝食と、打ち合わせが終わったあとの昼食の場としてはもってこい。駅ナカの2階に丸善があるのもいい。それほど書店売り場は広くはないが、どんな新刊書が出ているのかを探すのと、時間潰しには最適。
そして、今年の10月にオープンした「ecute立川」には、塩尻へ行く時に寄った。早めの昼食のワンタンがおいしかった。3階には歯科医、保育園などがある。そしてKINOKUNIYAスーパーも書店もある。電車旅行の時間調節には最適空間が3つも誕生してくれた。バンザイ。

著者は、そのecuteを誕生させたプロジェクトチームのリーダー。
全く新しい業態を生み出すためのコンセプトづくりと、徹底した商品と店舗の絞り込みのための不眠不休の努力がなんともスガスガしい。
まず、問題になったのがターゲット。駅は幼児から老人まで万人を対象にした公益的な施設。当然万人をターゲットにすべきだという考えが強かったが、新しい駅ナカ商店のターゲットを「新幹線を利用するビジネスマンと20~30才台の通勤・通学客」に絞った。
そして、飲食店は女性が一人でも気楽に入れ、楽しめる店に拘った。そのためには何よりも駅構内に女性用のトイレが少なすぎる。デパート並のトイレづくりから始めなければならなかった。そういった数々の障害をクリアーして、時間に追われてのオープン。私の行動を変えただけの仕掛け・・・その全貌が判って楽しい。おそらく全国の主要駅にも誕生してくるであろう。


2007年12月07日(金)
第111回「北極圏のサイエンス」 [独善的週評]
赤祖父俊一著 「北極圏のサイエンス」(誠文堂新光社 1800円+税)

著者は東北大地球物理学科卒後、アラスカ大学院にて博士号を取得。40年以上アラスカ大学で北極圏研究センター所長などを勤めてきた。
アラスカに関しては星野道夫の素晴らしい著作や野田知佑のユーコン川下りなどの楽しい著作をほとんど読んでいる。
したがって、オーロラ以外では、この著書から特別に得られるものがなかった。

なのに、何故一年前に出版されたこの本を取り上げたのか。
ゴア氏の「不都合な真実」や山本氏の「温暖化地獄」を取り上げたら、アンチ温暖化グループの中にリンク管理人という者が存在していて「CO2の削減はやる必要がない」と叫んでいることを知った。その理論的な根拠である「北極のサイエンス」を読みなさいと指示された。

著者は「人類活動によるCO2の増加率は減らさねばならない」とは言っている。だが、
(1) 北極圏で進行している気象変動現象は、人類のCO2の放出が主原因とは言えない。
(2) 特に北極圏での気候変動は自然変動による部分が大きい。
(3) スーパーコンピューターはまだまだ不十分で信用出来ない。
(4) 温暖化には悪影響ばかりではなく良い面もある。
(5) 温暖化よりも氷河期対策を今から考えねばならない、という。

北極圏で問題になっているのは氷河の後退、永久凍土の溶解、海氷面積の減少。
アラスカには氷河が10万もあるという。年に100メートル動くとして50キロの氷河が末端で後退しているのは500年前の氷であり、この数十年来のものではない。
また、温暖化が進むと降雪量が増えるので、氷河が一方的に後退するというのはおかしい。現に氷が増えている氷河もあるという。しかし、その科学的な根拠の提示が稀薄。

また、永久凍土は1950年から70年まで温度はむしろ低下していたし、70年頃からの上昇は止んでいるので、CO2上昇とのはっきりした関係は見られないという。

海氷面積の減少は、北大西洋の暖かい海水が北極海に流れこんでいるのが主原因と分かってきている。これは北大西洋振動という気圧配置による自然現象である。
つまり、自然現象だから人類はしゃかりきになってCO2削減に取組む必要がないという論調。

氏が強調しているのは、目覚ましい進歩を遂げているスーパーコンピューターに対する不満。
自然界の気象現象は不可解な点が多い。それを十分に加味したシステムでないと信用出来ないという。ごもっともな意見。だったら、北極圏の気象研究の第一人者であると自負するのなら必要なデータを提供し、よりすぐれたものに改善してゆく社会的な責任が氏にはある。
その責任を果たさずして、温暖化すれば作物はより多く収穫出来るのだから、氷河化よりもはるかに喜ぶべきことだと強調している。
温暖化による集中豪雨とか乾燥化、砂漠化ということは取るに足りないことらしい。

そして、木造に関係している人間として絶対に許し難い発言がある。
「アラスカには樹齢200年から300年の老齢化した黒杉が多い。CO2を吸収しない樹齢数百年の森林は何の役にも立たない。落雷による森林火災で焼けた方がいい。そこに新しい草が生え、動物が集まり、10年たつと白樺が生え、100年後には黒杉の森になる」
アラスカで40年も学者をやっていて「黒杉」とは情けない。アラスカの東南部では6割が米ツガで、のこりが米トウヒ。これが温暖化による木喰い虫の大発生で、貴重な資源が損なわれていることすらご存じない。ということでこの著書は、反面教師としての価値も低い。


2007年11月30日(金)
第110回「それでもピサの斜塔は倒れない」 [独善的週評]
応用地質(株)著 「それでもピサの斜塔は倒れない」(幻冬舎 1300円+税)

著者は自分たちのことを「ジオドクター」と称している。
地質学(Geology)のお医者さんということ。
どんな仕事をしているかというと、孔を掘って地下を調べたり、地面にセンサーを並べて地下からの音を聞いたり、ヘリコプターに地盤の電気の流れを調べるセンサー・磁力センサー・放射線センサーを搭載して空中地下探査をしたり、地下水の流れを調べたり、川や湖畔の生物を調べたり、汚れた地下をきれいにしたり、軟弱地盤に高層建築を建てるためにどうしたらよいかを調べたり、地震に強い街作りを計画したり・・・など。

書かれている内容で、特別に「はっ」とするものはない。
建築をやっている者だと、一通り知っている常識的なことばかり。
しかし、私のように系統的に地質学を勉強したことのない者にとっては、大変に分かり易く参考になる。

まず、地震の話。
日本列島は4つのプレートが交差するとところに位置しているということは知っている。
静岡→糸魚川以北の関東・東北・北海道が乗っかっている北米プレート。
静岡→糸魚川以西の中部・関西・中国・四国・九州が乗っかっているユーラシアプレート。
そして、北米プレートにぶつかり潜り込んでいる太平洋プレート。
ユーラシアプレート潜り込むフィリピン海プレート。
このように4つのプレートが絡み合い、複雑な動きを見せている地域は、地球上には日本以外にはない。極めて珍しい例で、このため世界で発生する震度6以上の地震の1割が日本で発生しているという。

日本列島は大陸から分かれて出来、それに南の島がくっついたり、海底の堆積物が隆起したり、火山による噴火があったり、地震で断層が出来たりして、日本列島の地盤は世界に類のないほど複雑だといわれている。
あまりにも地下でいろんな力が働いているため、場所ごとに異なる地盤状況をつくり出す。このため、いろんな時代につくられた地盤がモザイクのように複雑に散りばめられた異様な姿をしている。
日本地図を地盤によって色わけした図をみると、それこそ10種類の根菜のごった煮のような有様となる。
そして、同じスケールでのヨーロッパの地盤図をみると、日本のようにゴチャゴチャ各種の地盤が入り交じっていない。ハンバーグステーキのように、ハンバーグとポテト、ニンジンなどの野菜が綺麗に分かれている。

その代表的な図が青函トンネルと英仏海峡トンネル。
青函トンネルは8つの地盤層が縦に分断されており、しかも12の断層が縦に走っている。
暫く掘り進むと違った地盤にぶつかり、途中で断層を越えてゆかねばならない。
これに対して英仏海峡トンネルの断面図をみると、ほとんど最初から最後まで同じ地盤の中を掘り進んでいる。途中に断層が10近くあるにはあるが、作業性がまるきり違うことが一目で分かる。時代の差はあるが、青函トンネルは24年かかったのに英仏海峡トンネルはたった11年で済んでいる。
日本の土木工事や基礎工事が、如何に大変であるかが、この図の比較で納得させられる。

このほか地下水の問題、汚染土壌の問題などで面白い指摘が多いが、感心したのは「個性的な地盤だから美しい風土ができる」として「日本の地質百選」を挙げているのがいい。

2007年11月23日(金)
第109回「線路にバスを走らせろ 北の車両屋奮闘記」 [独善的週評]
畑川剛毅著 「線路にバスを走らせろ 北の車両屋奮闘記」(朝日新書 724円+税)


北海道の最東部に釧路と網走を結ぶJR釧網本線が走っている。
知床へ行くには知床斜里駅で降りる。その1つ網走寄りの駅が「浜小清水」といい、その2つ先の駅を「藻琴」という。
今年の4月、この浜小清水駅で日本初めてのDMV車(デュアル・モード・ビークル=線路と道路を走る2つの方式を持った乗り物)が、試験営業運転を開始した。
マイクロバスのシャシーを改良して作った車の前後に格納している鉄輪を線路に下ろし、車体の前部を浮かして前輪のタイヤをロックする。そして、浜小清水駅から釧網線の線路を時速50キロで11キロ走り、藻琴駅で線路から道路へ降りる。
そこで鉄輪を格納し、マイクロバスとして藻琴湖や原生花園、涛沸湖などの明美な風景の中を走る国道244号線を経て浜小清水駅まで戻ってくる。

テレビでそのニュースを見た。
なんとなくピンとこなかった。JR北海道の、片手間のやっつけ仕事ぐらいにしか感じられなかった。そして、いつか忘れていた。
この著書は、たしかに以前に書店で表紙を見た覚えがあるが、見逃していた。
たまたま目にとまり、読み始めたらとてつもなく面白い。
これは新幹線の開発に匹敵するくらいの、素晴らしい技術的な内容を持っている。

JR北海道の営業距離は2500キロ。
鉄道会社の採算ラインは、日に利用客が2000人/キロが必要といわれている。
JR四国やJR九州では2000人以下のところは25%。これに対してJR北海道は61%。
このままでは路線廃止、バスへの転換が避けられない。
なんとかならないかと諸外国の資料を見ていたらドイツの線路・道路両用バスが目にとまり視察に出かけた。この両用バスは線路の両側に線路高の敷板を敷き、大型バスをその上を走らせるもの。新たな投資が必要でコスト高になるとともに、鉄橋の多い日本では採用が困難。

当時運輸部長だった柿沼氏は妙案がなく袋小路に追い込まれていた。
2002年のそんなある日、幼稚園児の送迎バスを見てハッと気が付いた。
「マイクロバスだと1067mmの日本の狭軌の線路の上を走らせることが出来るかもしれない」
ともかく、ジーゼルエンジンの気動車ではイニシアル、ランニングコストともかかりすぎる。
「25人ぐらい乗れるマイクロバスを、線路の上も走れるように改良した方がいい。カギは道路から線路へ、線路から道路へ簡単に出入り出来るシステムが開発出来るかどうかだ・・・」

ところが、ベースとなるマイクロバスメーカーに話しかけても一社も相手にしてくれない。
唯一札幌の除雪機製作所が協力を約束してくれた。そして、その年の10月に5人のサムライを集めてプロジェクトを発足させている。
だが、ベースとなるマイクロバスのシャシーが入手出来ない。やっと入手出来たが、鉄輪だと乗り心地が悪い。スタットレスタイヤの利点に気が付いたが、タイヤと鉄輪に架ける比重をどの程度にしていいか分からない。振動と揺れを防ぐ画期的なアイディアが生まれたが、要求を満たすゴムが作れない。何よりも1人でも多く定員を増やせるようにするために軽量化の果てしない闘いが続いた ・・・。
そして2003年の暮れ、DMV試作車は予想以上にスムースに線路を走った。ジーゼルに比べると車両費は1/7で燃費は1/4。そして軽いので、線路の維持費が格段に違う。

しかしその後も、車検の取得、線路を走るための厳しい国交省の防火基準の克服。果てしない困難が横たわっていた。なんとかそれらを克服しての試験営業運転という一里塚。
まだまだ問題が山積しているが、この新商品DMVは大化けする可能性を秘めている。

2007年11月16日(金)
第108回「泣いて笑ってスリランカ  体当たり紅茶修行」 [独善的週評]
末広美津代著「泣いて笑ってスリランカ  体当たり紅茶修行」(ダイヤモンド 1500円+税)



体当たり紅茶修行の1年日誌
女性の書いた旅行記が、数多く出版されている。
単なる体験記とか、風景や食べ物の話にはいささか飽きた。新鮮な感動がないから・・・。
この本は、一年以上も前に出版されたもの。
偶然目にとまり、一気に読まされた。

この本の面白さはありふれた旅行記ではなく、ベンチャーでビジネスを開始するための、一年間に亘る女性の単独修行記だという点にある。
目的が明確で、何がなんでも見てやろう、体験せずにはおくものかという強い意欲が最初から最後まで貫いている。
主要なセイロン紅茶の茶園6ヶ所を訪ねている。まず下宿先を探すことからはじまる。そして、紅茶の生産農場と工場に入り込み、茶摘み作業はもとより生産工程、テイスティングと、英語と現地語を駆使しながらキャリアを積んでゆく。
次々と難題をクリアーしてゆく意欲が頼もしく、嬉しくなってくる。

そもそもの動機は、大学生時代のイギリス旅行。
クリスマス休暇で、ふらりと降りた田舎町で朝食つきの民宿がどこも満室。困り果てている時B&B経営者の女性に声を掛けられ、ご馳走になった紅茶を一口飲んでびっくりした。それまで飲んできた紅茶とは別格。
ミルクティだったが味に厚みがあるのに渋くなく、コクがあって飲み応えがあった。
しかし、買って帰った紅茶は日本の水に合わず、なんとかあの味をとのめりこんでしまった。
そして、1999年に初めて訪れたスリランカの1週間ツアーで人生が変わった。
初めて茶園を訪れた時、「茶園が私を呼んでいる」と感じた。
そして翌年、勤めていた日刊スポーツ社を辞め、2001年に丸一年かけてスリランカで修行をし、インターネット通販のミッティ社を立ち上げている。

スリランカは北海道よりやや小さめの民主社会主義共和国。赤道よりちょっと北の熱帯の国。
最初にスティしたのは中央よりやや南の高地ヌワラエリヤ。イギリス風の建築物が多い観光地で、朝晩は寒いほど。ここのペドロという茶園にツアーで訪れていた。しかし、コネがあるわけではない。アポイントもなくいきなりマネジャーを訪ね「日本の緑茶は機械化されている。ここでは人の手で丁寧に摘まれていると1年前に来た時に知りました。セイロンのお茶情報を発信したい。どうかどこでも出入りして良いという貴方の許可を下さい」と懇願した。
そしたらマネジャーは言った。「OK。いつでも私がアレンジしてあげますよ」と。
こうしてペドロ茶園での丸2ヶ月の修行がはじまった。丸1日の茶摘み仕事にトライしたり、夜しか稼働していない工場を早朝に訪ねたりして生産過程をみっちり勉強した。

次ぎに訪ねたのはやや北にあるキャンディの茶園。下宿したのはセイロンでは少数民族のタミール人のベジタリアン夫妻の家。ベジタリアンは肉や魚を食べないだけではなく、出来合いの食材を買うわけにはゆかず、生地から全て自分で料理せざるを得ない。そして、毎日寝る前に生のホットミルクを飲んでいた。その料理とホットミルクがとてもおいしいことを発見。
しかしこの茶園で、前の茶園と同様のビーチサンダルを履いて茶摘みに参加して大失敗。しばらくしたら足がヌルヌルした。しかし下を見ることが出来ず、1つの列が終わったところで足を見たらびっくり。大量の血が流れている。ヒルがジーンズの中に入り、膝の上まできている。
男性のアシスタントの前でジーンズを脱ぐわけにもゆかない。悲壮な体験となった。

このあとウバ、マウント・ラビニア、ディンブラ、ルフナと4ヶ所の茶園で飛び込みの研修を終えている。そして、各下宿での数々のハプニングに、はらはらさせられるのが爽快


2007年11月09日(金)
第107回「赤とんぼの謎」 [独善的週評]
新井 裕著「赤とんぼの謎」(どうぶつ社 1500円+税)


題名を見たとき、動物学の専門書だと思った。
赤とんぼなどの専門書には、もとより関心がない。
ところが「あとがき」にこんなことが書かれていた。

「赤とんぼを不吉な生き物として捉えている国が多い。これに対して日本では国民に一番親しまれている生き物が赤とんぼ。夕焼け小焼けの赤とんぼ・・・は国民的な愛唱歌となっている。このため、児童書や絵本には赤とんぼ関係本は多数出版されている。ところが大人を対象にした赤とんぼの本は皆無。こんなに愛されているのに、その不思議な生態のことがほとんど知られていない。そこで、専門書としてではなく、身近な赤とんぼに関する読み物としてまとめてみた・・・」

日本は、その昔「秋津島」と呼ばれていた。
秋津とは秋の虫、すなわちトンボをあらわす古語。
縄文時代後期以降に、日本でも稲の栽培が始まり、水田がひろがった。
その田んぼを住みかとするトンボが、稲作の広がりとともに広がっていった。
トンボはアブに代表される稲の害虫を補食してくれる。
豊あしはら瑞穂の国にとって、秋の虫である赤とんぼは1つの象徴。まさに秋津島。

その赤とんぼの代表が、日本だけに生息する特産種のアキアカネ。
このトンボは長距離移動をすることで有名だが、その移動のルートや目的がまだ完全に解明されていない。
このアキアカネは、水の溜まった田んぼや湿地、池の岸辺で卵の状態で冬を越す。
孵化するのは春になってから。
本州の平野部では、孵化期は4月中旬から5月中旬。
孵化した幼虫(ヤゴ)は、その後急速に生長し、6月中旬から7月上旬に羽化する。
札幌市近郊のトンネウンス湖での羽化は7月中旬から下旬。帯広の十勝川の河川敷では羽化が7月中旬から8月中旬という。

その羽化したアキアカネが、一時私共の前から姿を消してしまう。
そして、稲穂が実るころになると、どこからともなくやってきて、昔は夕空を真っ赤に染めるほどであった。
さて、アキアカネは羽化してから2ヶ月間、一体どこへ雲隠れしてしまうのか。
その謎を最初に発見したのが新潟県北蒲原郡の開業医であった馬場さん。
今から50余年前に「羽化した未熟な個体は成熟するために高地へ移動し、そこで成熟し、産卵のために再び平地にもどってくる」と推測し、その研究成果を発表した。
これはあくまでも推測であったが、その後各地で、多くの観察調査によって馬場学説が正しかったことが証明されている。

しからば、アキアカネは何故時には数十キロも移動して高地にゆくのか。
津吹という中学教師が長野と群馬の県境でアキアカネの飛翔個体数を朝から夕方まで気温、照度、湿度などの関係で調べたら飛翔時の温度は18~24℃であったという。つまり、暑がり屋のアキアカネは、夏は避暑に高山へ出かける優雅な身分であることが判明。
しかし、そうであれば涼しい北海道のアキアカネは高山へ移動する必要がないのではないかとか。あるいは、早く成熟して早く卵を産むと年内に孵化するので涼しいところで生殖抑制をしているとか。1日に11.5mgの餌をとる必要があるためだとか。学説がいろいろで、まだ決め手に欠けるという。 そして、アキアカネは、環境問題そのものでもあるという。



2007年11月02日(金)
第106回「へこたれない-ワンガリ・マータイ自伝」 [独善的週評]
ワンガリ・マータイ著「へこたれない-ワンガリ・マータイ自伝」(小学館 2200円+税)



UNBOWED
2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアのワンガリ・マータイさん。
30年間で3000万本もの植樹活動を評価されての受賞。

05年の6月に出版された「モッタイナイで地球は緑になる」(木楽舎刊)を読んだ。
面白かったけれども、格別の感動はなかった。
同じ3000万本の植樹を行ってきた宮脇昭氏のことを書いた一志治夫著「いのちの森を生む」(集英社インターナショナル刊)の方が、私にははるかに感動的だった。
日本にもこんなに素晴らしい信念の人がいたのかと。

ワンガリさんのお陰で「モッタイナイ」は日本だけではなく世界中にその言葉とコンセプトが拡がった。しかしそれで卒業した気持ちになっていた。470ページにもおよぶこの著書を読もうという気が起こらなかった。どうせ二番煎じだろうから、と。
ところが、読み始めたら夜通しで一気に読まされてしまった。
寝るのが「モッタイナイ」ほどの感動。前著と比べものにならない迫力。
自伝として久々に歯ごたえのあるものに出会えて、興奮。

著者は1940年にイギリスの植民地だったケニアの中央高原の小さな村の小さな自作農の6人兄妹の3番目の長女として生まれた。
父は背が高く強靱な肉体の持ち主で、当時の習慣で一夫多妻だった。
元々は物々交換の世界。イギリス人は税金を集めようとしたが全てヤギでの決済。ヤギでは困るので白人の農場で働かせ、賃金を払い、現金で税金を払わせるようにした。このため父は白人の農場へ運転手兼機械工として働きに出た。そして、3才の時、その農場へ転居。
7才の時、父は100キロ離れた町へ母と一緒に行って、妹の世話をするように命じた。
その町へ行ったので小学校に入れた。農業仕事をしながらの学校生活は楽しかった。

11才の時、母と兄弟が相談して全寮制の学校へ妹を入学することを決めてくれ、故郷を離れた。そして高校卒業の時、アメリカのケネディ大統領の「アフリカ奨学金プログラム」により、幸運にもカンザス州のスコラスティカ大学に留学することが出来た。植民地の時代が終わり、イギリス人が引き上げるのでケニア人の人材育成が急務であった。
生物学を主専攻、化学とドイツ語を副専攻した5年間。ケニアに持ち帰ったのは学問だけではなく、貧しい人々、弱者を守るために自分は必死になって働く義務があるという使命感。

帰国してナイロビ大学の獣医学部のドイツから派遣されていたホフマン教授の助手として研究生活を始め、アメリカ留学帰りの政治家志望の男と結婚、3人の子どもにも恵まれた。
しかし、ダニが介在して牛が病気になる原因を突き詰めるため農村を回ってダニを集めている時、土がやせ、草は栄養不足で牛も人も痩せており、ダニ以上の大問題があることに気がついた。森林伐採、植生破壊、持続可能でない農業。環境破壊で全ての命が脅かされていた。

夫は最初の選挙に落選。しかし次の選挙では「職場を確保する」という公約で当選。ところが当選したら何もしない。そこで、教授として研究に携わる傍ら「育てた苗木が移植したら、僅かだがお金を払います」という女性運動を始めた。これがグリーンベルト運動のそもそものスタート。ところが、これが思うようにゆかず何度か挫折を繰り返す。
そして、41才の時に離婚。同時に国会議員に立候補出来る資格を不当に奪われ、大学教授の椅子も失ってしまう。
全てを失った中から再起し、政府の何回かの不当逮捕、入獄にもめげず、グリーンベルト運動を成功させてきたその不撓の精神とバイタリティには、泪とともにうたれる。



2007年10月26日(金)
第105回「学校は誰のものか  学習者主権をめざして」 [独善的週評]
戸田忠雄著「学校は誰のものか  学習者主権をめざして」(講談社現代新書 740円+税)


不思議な本である。
書店で何となく手にとって序章を読んだ。
とびきり面白かったので買い、電車の中で本章を読み始めたが、ガクンとくるものがない。
序章の面白さを、各章で掘り下げてくれるだろうと期待したのだが、甘かった。

筆者は長野県の私立、公立学校の教師、公立高校校長、予備校校長などを歴任した叩き上げの教育アナリスト。その主張は郁文館を蘇生させたワタミの渡邉美樹社長の「学校は生徒のためにあるべき」という考えと全く同一。これまでの日本の学校は教師のためにあった。これを「学習者(児童生徒と保護者の総称)のためにあるべき」と説いている。
したがって、文科省をはじめ日教組、教育委員会など既得権擁護派の評判はすこぶる悪い。しかし、その序章から主張を抜き出して、羅列してみた。

親は子どもに「よい教師がいるよい学校」で学ばせたいと考えている。せめて義務教育ぐらいは親の所得の多寡にかかわりなく、だれもが「よい教師のいるよい学校」で学べるシステムや制度を作って欲しいと願っている。そして抽象的な「心の教育」とか「愛国心」にそれほど関心がない。子どもが社会生活をして生きてゆく上で必要な智慧、知識やスキルなどを身につけてほしいというのが願い。
その大前提として子どもの「安全と安心」が保証される学校でなければならない。登下校の危険性よりも、学校のいじめが原因で自殺する危険が圧倒的に多い。その防止策は出来ているのか親は不安を感じている。だから抽象的な教育論より具体的な学校論が必要。

ところが、このあたりまえの道理が学校側・教師側・教育委員会・文科省にとって危険思想であるようだ。教師側はだれがよい教師で、どれがよい学校かを学習者側に決めさせることは危険だと思っている。教育の主導権はプロである自分たち教師にあると思っている。
つまり「教師のために学校はある」と思っている。われわれは権威ある教育者だ。
わがままなダメ親やダメな子どもに評価されてたまるか!

昔は、師は学習者側が選ぶものだった。評判のよい師がいる寺子屋が賑わった。
ところが明治政府は上からの画一的な教育を実施するために教師を権威づけた。校舎そのものも正面入り口が教師の玄関で、生徒は端の昇降口から出入りする。どこまでも教師のための学校である。この明治政府の悪弊を今でも引きずっている。教員免許状をとり、採用試験に受かればとたんに「先生」となり犯すべからぬ聖職であるかのように錯覚する。

少子化で子どもの数は減少の一途。学校も減っている。それなのに一学級あたりの標準を40人から35人にするよう教師を増やせという。現在の教員1人あたりの平均児童数は小学校では17.2人で、一学級あたりは25.9人。中学校では1人あたり14.5人で、一学級あたり30.4人。
これは本務教員あたりの数値。非常勤を入れれば平均値はもっと下がる。
道路も郵政もダメになった。最後の公共事業は国防と教育。教育は平和の象徴。教育のためにムダな予算でも増やしておけば、教育大国のように見える。

本当は、教育ほど量より質を問われるものはない。
ダメな教師をいくら増やしてもダメさ加減が増幅されるだけ。学習者側の被害が増大するだけ。学習者のために教員を増員するなら、教師の評価に学習者の意向が反映出来るシステムを作ってもらわねばならない。でないと学習者が求めている教育の質が保証されないではないか。
そして、学校選択制にして、所得に関係なく学習者が公立・私立を問わず対等に学校が選べる教育バウチャー(学校利用券)制。これこそ教育格差解消の決め手になると著者は叫ぶ。


2007年10月19日(金)
第104回「これから食えなくなる魚」 [独善的週評]
小松正之著「これから食えなくなる魚」(幻冬舎新書740円+税)

昨年の11月の「サイエンス」という科学雑誌に衝撃的な論文が発表された。
アメリカとカナダの学者の共同研究だが「このままだと2048年には海に魚がいなくなる」というセンセーショナルなもの。
今まで魚というと、日本と北欧諸国とイタリア、スペインあたりしか食べていなかった。
アメリカをはじめほとんどの国は牛、豚、鳥、兎などの肉を食べていた。

ところが、BSE問題で牛肉に対する信頼が失われ、鳥インフルエンザで鶏が大量に処分されるようになってきた。
そこへもってきて、魚はダイエットにもなる健康食品だということで、世界中に回転寿司ブームが巻き起こっている。
いままで鯉料理しかなかった中国でも魚の一大ブームが…。
そして制御のきかない、獲れるだけ獲ってしまえという中国や台湾の乱獲騒動。
このまま放置しておけば、今までのように日本は世界から安い魚を輸入するというわけにはゆかなくなる。

熱帯林の伐採は写真で見ることが出来る。
しかし、海中の乱伐採は写真で見ることが出来ない。 
知らない間に、とんでもないことになる怖れが非常に高い。

日本は世界に冠たる漁業王国だった。
100年前は、漁業従事者が300万人もいた。
それが現在ではたったの22万人。しかも、このうちの10万人が60才以上の老人だと言われている。
したがって、このままでは22年後には日本には漁師が1人もいなくなる勘定。
そして、加工業者も40年間で1/4に激減してきている。

大型漁船の数をみると、40年前は6000隻あったものが1800隻と70%も減ってきている。
しかも、昔は10年くらいで新造船に切り替えられていたものが、現在では15年以上の老朽船が多く、性能や整備の面だけではなく燃費の点でも外国に比べて大きな遅れをとっている。
たとえばノルウェーで建造されている最新式の底はえ縄漁船は、船底からの投網・揚げ網するスタイル。船尾から網を揚げる日本の漁船よりははるかに安全性が高い。
作業環境だけではない。居住環境も申し分ない。
ブリッジ、サロン、ベッドルームなど、どこをとってもホテルなみの快適さ。
こうした環境が用意されていることもあって、ヨーロッパでは若い乗務員を確保している。漁船は決してきつい、汚い、危険な3Kの職場ではない。
アメリカやEUは漁船建造に多額の補助金を出している。そして漁船を大型化させるが、獲った魚を入れておく魚艙は必ず小さくさせる。現行の船よりも漁獲能力を小さくし、捕獲から資源を守ろうとしている。

一方、日本では使われもしない漁港の整備にやたらと金が注ぎ込まれている。水産予算の2/3は公共工事だという。つまり、漁業者向けの活きた予算ではなく、どこまでも地元のゼネコン対策費にすぎない。そして、新造船の計画時点では小さかった魚艙が、完成後には大きくなっていたりする。その分、ブリッジやサロン、ベッドルームが小さくなる。
06年に操業を開始した大型巻き網漁船「日本丸」は最新の機能を備えており、現在の日本では最高の漁船。しかし、ノルウェーの船に比べるとどうしても見劣りがするという。
若者に魅力を感じさせる船造りに金が投じられないようでは、日本の漁業に未来はない。


2007年10月12日(金)
第103回「21世紀のハウジング 居住政策の構図」 [独善的週評]
住田昌二著「21世紀のハウジング 居住政策の構図」(ドメス出版 2200円+税)



〈居住政策〉の構図
著者は大阪市立大教授から名誉教授、福山女子短大学長を経て現代ハウジング研究所主宰。前大阪府まちづくり審議会長などを勤めた住宅計画、住宅政策の大御所の1人。
したがって住宅関係の本といっても、その内容は専門的で堅い。
値段からいって、皆さんにお奨めするというわけにはゆかない。

住宅政策が専門家だから、過去の住宅政策の経緯についての賢察力はたしか。
戦後の住宅政策を「マスハウジング・システム」の時代であったと定義している。
しかし、この戸数至上主義が大きな節目を迎えた。
それは今から34年まえの1973年の住宅統計調査で、住宅のストック数がはじめて世帯数を上回ったからである。
その時のストックはかなり劣悪なものが多かったが、ともかくマスハウジング・システムの転換を図るべきであった。

しかし、本格的な転換が図られたのは2001年の小泉内閣の閣議決定。
1955年以来続いてきた公営住宅・公団住宅・住宅金融公庫の3本柱のうち公団と公庫の廃止が決まった。
もうひとつは1966年以来「住宅建設計画法」にもとづく住宅供給の「5ヶ年計画」が、8期40年間継続したのち2005年で廃止された。
そして、翌年には「住生活基本法」が公布された。
「住宅建設」から「住生活基本法」への転換は「量の住宅政策」から「質の住宅政策」への転換であり、「公」から「民」への転換であると見なされている。
しかし、筆者は「住宅政策」から「居住政策」への転換でなければならないと力説している。
「マスハウジング」から「マルチハウジング」へ。
スローガンとしては理解出来るが、その内容がわかりにくい。

日本の人口は、これから減少してゆく。
しかし、人口の減少は、即世帯数の減少とはならない。
人口問題研究所では世帯数がピークを迎えるのは2015年と予想している。
人口が減少しながら15年まで世帯数がふえるということは、1世帯あたりの人口が少なくなってゆくこと。
●1985年には夫婦子ども4人の核家族が40%を占めていたのが27%になる ●単独世帯は21%から急増して32%になる ●夫婦のみの世帯も21%へ増加する ●1人親と子の世帯も10%になる ●3世代住宅が半減して11%になる。
こうした大きな変化を前提に居住政策を建ててゆかなければならない。それには3つがキーポイントになると筆者は説く。

1つは質の住宅政策というのは福祉政策だということ。住宅政策はハコづくりシステムだった。まちづくりシステムは都市計画。これが日本はいいかげんだった。そして居住者のサービスは福祉政策。これと一体化した政策でないとマルチハウジングとは言えない。

2つは、これからのまちづくりは、小さな2ヘクタールを中心とした「まちなか住宅」づくりでなければならない。町を高密度化することではなく、3階建ての木造住宅を中心にして行くべきという。しかし、昔の町家を前提にしており、ランドプランニングの技術体系を知らない者の発言で、全面的に賛同するわけにはゆかない。

3は、今までの「公共賃貸住宅」から市民参加の「社会住宅」へという提案。果たして・・・。




2007年10月05日(金)
第102回「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」 [独善的週評]
疋田 智著「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」(朝日新聞社1600円+税)



ヨーロッパやアメリカの都市を早朝に散策し、数知れないほど住宅の写真を撮ってきた。
夜は怖いダウンタウンでも、早朝は安心して歩ける。
念のために貴重品は部屋に置いて、カメラと小銭だけをもっての散歩。
どの国でも、歩道へ自転車が乗りこんでくることがない。だから安心して闊歩出来る。
ところが、去年ドイツで注意された。
歩道だと思って歩いていたところが自転車専用道路。
歩行者が自転車専用道路を歩くのは交通違反だという。
違反金はいくらかを聞くのを忘れたが、さすが自転車専用道路網の進んだドイツとかオランダならではと、妙に感心させられた。

ところが世界の先進国の中で、唯一日本だけが「自転車は歩道を走って良い」という法体系を持っている。
日本も戦前、戦後の一時期までは「自転車はどこまでも車両であり、歩道を走ってはならない」というのが規則だった。
これが1970年の法改正によって「自転車は許された歩道」に関しては通行が可能になった。
つまり「自転車歩道通行可」の標識のある歩道の場合に限って走って良いと・・・。
さて、皆さんはこの「自転車歩道通行可」の標識を見たことがありますか?
自動車免許更新の時にいろんな標識を覚えさせられるが、自転車の免許更新でないからこんな標識など覚える必要がない。したがって話にも試験にも出たことがない。

この著書でその標識のことを教えられ、急いで検索したら、ありました。
丸い青色の中に、親子連れと自転車が白抜きになった標識が・・・。
道交法第63条4に、この「自転車歩道通行可」のことが書かれている。
そして「自転車は歩行者の通行を妨げるときは、一時停車をしなければならない」と明記されており、もし違反した場合は「2万円以下の罰金または科料」と書かれている。
この道交法を知っている人はどれだけいるだろうか。

今から37年前、日本にもマイカー時代がやってきて、交通事故が急増した。
狭い車道での自転車と自動車の事故が増えた。
このため臨時の処置として、標識のある歩道に限り自転車が歩道を走れるようになった。
そして、警察庁交通局の統計によると2003年現在で許可されている歩道の総延長距離は63,601kmという。
ところが、この法律によって、ほとんどの日本人は「自転車はいつでも、どこでも歩道を走ってもよい」と盲信するようになった。
極論すると「歩道は歩行者のためにあるのではなく、自転車のためにあるのだ」と・・・。
「歩行者最優先」という意識がなく、2人乗りの若者が平気で歩道をわがもの顔で走り、ママチャリの前と後ろに幼児を乗せた若い母親が、無礼講で歩道を占拠。
このため、最近になって高齢化の進行とともに歩道での自転車による事故が急増して、社会問題化してきている。

群馬や新潟、茨城、栃木などの地方の都市の郊外に行くと、通学時間帯はどうかわからないが、広い歩道を歩いて人をほとんど見かけたことがない。したがって、時間帯に限って自転車が歩道を走る方が良いのかも知れないと思う。しかし、地方のビルダー仲間が都心の人混みを見てびっくりする。そして、歩道を傍若無人に走っている自転車に戸惑い、脅威を覚えるという。こちとら、毎日が脅威の連続。 最近では自動車よりも自転車の方がはるかに怖い。
したがってウオーキングには、もっぱら歩道のない裏道を選んで歩いている。
この本は、エコロジーな自転車を徹底的に見直し、問題点と方向性を考えさせてくれる好著。



2007年09月28日(金)
第101回 中崎隆司著 「なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか」                                                 彰国社1600円)

 この本はそれほど面白い本ではない。
いくつかの問題提起がなされているが、飛びつきたくなるものは少ない。
ただ、地域活性化ということで「地産地消の木造住宅づくり」に触れている箇所が引っかかった。その点だけを取り上げてみたい。

地域活性化の議論は地域の資源の活用から始まる。
地場産の木材が俎上にのってくる。
それが適切な価格でコンスタントに供給される体制があると、運搬エネルギーが削除され、森林を保全することで自然災害対策にもなる。
木材は二酸化炭素を吸収し固定する。木造住宅一棟当たりの建設時の炭素放出量は約5トンで、炭素貯蓄量は約6トン。
鉄骨プレハブに比べて炭素放出量は1/3、炭素貯蓄量は4倍という試算もある。

地場産の木材活用の試みは全国の地方公共団体や林業試験場、森林組合などで数多く展開されている。そして、地場の資源活用を図るためにさまざまな補助金や支援策が用意されている。地産地消の木造住宅づくりが各地で賑々しく囃したてられている。
しかし成功例は少なく、問題は解決されていない。

地場産木材の活用がうまく進まない1つの原因は、どこにもあるというような低品質の木材しかないというのが現実。
人工林のほとんどが画一的。一部を除いて高い品質や特徴のあるものがない。
戦後復興と高度成長期で木材が不足。国の推奨があったので全国で針葉樹の植林が行われた。山林所有者の欲の皮のツッパリが、甘い見通しに走った。
画一化は国の施策の間違いで、現在の山林はその被害者かもしれない。いずれにしろ、質より量を求めたので市場競争力を失ってしまった。

そして、安い外材にやられたというが、木造建築の構造材の競合相手は必ずしも外材だけとは限らない。コンクリートもあれば重量鉄骨、軽量鉄骨もある。地場の無垢材の手強い競合相手に集成材もある。
構造材の耐震性を補助してくれる構造用合板は、地場では造れない。
まして仕上げ材となると、地場が太刀打ちできない新しい素材や建材が大量に出回っている。

この流れを変えようと、地域循環型の資源活用が叫ばれている。
過疎化する地場だけでは地場の森林を消化することが出来ない。地域の循環だけでは解決出来ないのが森林なのだ。
優位性のない地場産木材を、地域を越えて活用されることを考え出してゆくしかない。

現在、注目されている建築家の建物には、必ず優秀な構造設計家が関わっている。
画期的な空間を創造するためには、ユニークだと言われる発想やアイディアを造形するには、新しい構造システムが求められている。
つまり、確かなエンジニアリングの背景を持ったデザインが広く評価されてきているということなのだ。
コンピューター解析能力の向上などにより、素材の特性を活かした構造システムが陸続と開発されてきている。強度が低い木材でも工夫次第では独自の空間構成が可能になってきている。
そうした構造設計と建築士、木材の加工業者が一体となり、木造建築や住宅の振興策を考えてゆかなければならない。それをプロモートするのが地方公共団体の仕事。



2007年09月21日(金)
第100回 富坂 聰著 「中国という大難」 (新潮社 1500円)

  トヨタ自動車関連本は、30冊は読んだ。ところが、毎年新しいトヨタ本が数冊出版される。
二番煎じが多いが、中には今まで知らなかった新事実や意外な側面を教えてくれるものがある。このため、いつまでたってもトヨタを卒業出来ないでいる。
中国も同じこと。
毎年なにやかやで数冊は読まされる。
その中で、この一冊は信じられない吸引力で引き込まれた。

この本は、単なるデーターとか、あるいは香港とか台北情報とか、中国のメディアとかネット情報をもとに書かれたものではない。徹底した中国の関係者の取材のもとに書かれている。
それだけに、評論家とか新聞記者の通り一遍の記述とは内容が異なる。
決してアンチ中国でもなければ、親中国でもない。
冷徹な醒めた目で中国の現実と対峙している。

6章からなっているこの本。
・山峡ダムが中国を滅ぼす ・汚職天国 ・13億人の市場という幻想 ・人民解放軍という闇 ・日中外交戦争 ・台湾海峡の危機。
このどれもが面白い。私のような浅学の徒には「なるほどそうだったのか」と目からウロコの記述にあふれている。
しかし、政治や経済、社会問題を取り上げるのはこの書評欄の趣旨に反する。
そこで、第1章の山峡ダムなど環境問題に絞って取り上げることにする。

02年の統計によると年間降雨量は上海を基点に750mmで北と南にきっちり分けられる。
750mmに達しているのは四川省、重慶市、湖北省だけ。北京を含めたほとんどが500mm以下。山西省、甘粛省、寧夏回族自治区、新疆ウイグル自治区は250mmにさえ達していない。
ちなみに日本の平均は1750mm。この日本の水準を達成しているのは23省5自治区、4市のなかのたった3省。湖南、福建、広東しかなく、全土の5%でしかない。
長江、黄河の大河を有する中国だが、細かい河川がない。
人体にたとえると太い動脈はあるが、毛細血管がないという状態。このため大地は深刻な血行不良に陥っている。
この乏しい水資源に、さらに水質の問題が重くのしかかる。
長い距離をゆっくり流れる河は水が汚れやすい。
水質汚染の原因は生活排水と工業廃水。工業廃水を規制すれば多くの企業が倒産し、失業者が社会問題化する。かくて中国の60%の淡水が重度の汚染、20%が中程度の汚染、15%が軽度な汚染におかされており、きれいな水は5%しかない。

このため、北京や天津では地下水を汲み上げすぎて、ひどいところでは2メートルも地盤が沈下している。来年の北京オリンピックを成功させるために、急遽組まれた「南水北調」という長江の水を北京へ運ぶ総工費6から7兆円にも及ぶ巨大プロジェクト。
この巨大プロジェクトが中国の水問題を解決してくれるのだろうか?
蔵玉祥環境保護所長は「やらなければならないことは水を節約し、再利用に必死に取り組むことと水資源を汚染させないこと。それなくして水を引っ張ってきてもムダだ」という。

そして「南水北調」と並ぶ国家プロジェクト「山峡ダム」。ダムに流れ込むゴミや流木の処理のために10年で5000億円以上も投じる計画。しかしこれが上海の水源を喪失させ、異常気候を起こすという懸念が叫ばれはじめている。また水の乏しい辺境地では住民の3人に1人が結核患者だという。中国経済は「石油」ではなく「水」で行き詰まる可能性が大だという。

















 ■ 鵜野日出男の独善的週刊書評 
◆ リ14書評01 鵜野日出男の独善的週刊書評への記事リンク 題名リスト100~176・176感想  
◆ リ21書評02 鵜野日出男の独善的週刊書評への記事リンク 題名リスト177~ 
◆ リ22書評03 鵜野日出男の独善的週刊書評への記事リンク
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     最近の記事
 ・ 水道光熱費が半減できた、お母さんの省エネ技とは ? 2009年01月31日
 ・ 美味しいご飯の感動の記憶。
 ・ 汚れの落ちない洗濯物には2槽式洗濯機が効く! 節水も!
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ・ 健12 癌を防ぐ、一日1粒のアーモンド健康法。 エドガー・ケイシー01
 ・ 健11 お薦め健康法 「生活習慣病に克つ新常識―まずは朝食を抜く! 」小山内 博
 ・  おコメのチカラ 2
   副題) おコメ食は、大腸がんを減らし、乳がんを減らし、心臓疾患・アレルギーを減らす。
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ・ 健14 鳥インフルエンザからの新型、もうじき登場…。でも免疫力アップで乗り切れる
 ・ 死直後だと痛覚が残る。臓器移植法の14歳以下の臓器提供可の改正に反対
 ・ 01つまの願い子育て。 里子を授かって里親になりたい。
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ・子供の勉強1  算数は100点の喜びを活かす科目
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ・家38 鵜野日出男さんに大工さんを目指す若者たちへの教科書を書いてほしい。
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・ 家47 一条工務店のi-cube03。 地震に強く、躯体は100年から200年の長い寿命
・ 家46 一条工務店のi-cube02。 最高の省エネ性能が健康で長寿へ。幸せの家
・ 家45 一条工務店のi-cubeは、最高水準の省エネの家。 今後の5つの課題とは

 ・家44 アメリカカンザイシロアリとヤマトシロアリ・イエシロアリ対策の家づくり
 ・家43 アメリカカンザイシロアリは、今後 大きな社会問題に。 2009年05月01日
 ・家42 タマホーム。 大手ゼネコンのマンションより耐震性があってエコで高性能。
 ・家41 木造なら、地震にとても強い ローコストの家は可能。
 ・家40 大半が最低の耐震等級1!大手ゼネコンの鉄筋コンクリートの建物(マンションなど)
      副題) 最低の耐震等級1で鉄筋コンクリの建物を建てる理由を説明してほしい。

 ・家39 太陽の光と 木々と 鮭と シロアリと。 乾燥した木は腐らない。築600年の家。
 ・家37 水道光熱費が半減できた、お母さんの省エネ技とは ?
 ・家36 なぜ、2万円を浮かせるために2000万をダメにするのかな?
 ・家35RC 鉄筋コンクリートの建物は耐震 等級3で。震度7でも大丈夫という誇りや自負を!
        副題) 愛ある建物
 ・家34RC 鉄筋コンクリート造り(RC造り)の建物を建てるときには、耐震等級3と外断熱と
        日射の遮光の3点が肝心!
 
 ・家33RC これからの新しいマンションの耐震性と省エネ性能は激変する!
        副題) マンションの性能は、日本の富そのもの。
 ・家32RC 鉄筋コンクリのマンションの多数は耐震性が最低の等級! (お金の知識⑪) 
        副題) 東京財団からの提言
 ・(お金の知識⑩)10 家が資産として100年残っていく時代の投資と家づくり  
 ・(お金の知識⑨)09 貯蓄のあとの投資を考える。大きな損を避ける。投機と家に注意。  

・ 家31 インスペクターの活躍と工務店のレベルアップ
・ 家30 ローコストの哲学。  ローンの金利が複利で何百万円も違う。(kappa さん)
・ 家29 脱衣室が寒いと 脳卒中や心筋梗塞で年間3000人が死亡。
・ 家28 鵜野 日出男さんにあてた書簡  2009年3月6日(金)
・ 家25 釘の種類を間違うと家の耐震性が30%減。 大工さん、しっかり! 
・ 家15 ツーバイフォーと 機関銃    ツーバイフォーの歴史
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     リンク集 家づくり
 ・ リンク01 家づくり系のリンク
 ・ リンク02 家づくり記事へのリンク

 ・ リ10 鵜野 日出男さんの今週の本音へのリンク集2001年~2008年
 ・ り13 ネットフォーラム(鵜野 日出男さん主宰)
 ・ リ11 大下達哉さんの記事へのリンク
 ・ リ15 太陽光発電と太陽熱温水器とエコキュートと省エネエアコン
 ・ リ16 木の記事・釘・ツーバイフォーの歴史・鵜野日出男さんの木の記事へのリンク
 ・ 家30 ローコストの哲学。kappa さんの「1000万円台のローコスト高気密・高断熱住宅って?」
◆ リ14書評01 鵜野日出男の独善的週刊書評への記事リンク 題名リスト1~176・176感想  
◆ リ21書評02 鵜野日出男の独善的週刊書評への記事リンク 題名リスト177~ 
◆ リ22書評03 鵜野日出男の独善的週刊書評への記事リンク 










.
すぐれた本の内容は、知識だけでなく視点や発想が豊かです。
そのため、10年20年経っても古くならず、時には発刊当時よりも内容の価値が増したりします。

よい書評は、これと同じで、年月が経っても値打ちがあります。
そして、書評は、すぐれた本に対する書評であることでの価値以外に、書評の書き手の視点や切り口が加わります。
よい書評は、多少不完全ではあるものの一つの作品です。

鵜野日出男さんの書物の選定眼にはいつも驚きます。
これはすごい…という読後感があります。
わたしてきに言えば、「当たり」の本です。それも大当たりがよくでます。


世の中に、一日に何万人も読者が訪れるような、有名な書評サイトがあったりしますが、鵜野日出男さんの書評記事はそれ以上に感じることがしばしばです。そして、鵜野日出男さんの書評には何味も違う部分があって、「家づくり」の視点であったり、「イノベーション重視」の視点であったり、「経営者」や「技術者」や「作家や編集者」の視点であったりしています。
だから、面白い。

いま、私の気がかりは2つあります。
一つは、私が再読するときに、便利に素早く目的の記事にたどり着けるようにしたいことです。そのため、記事の題名とリンクを集めたりしています。
もう一つの気がかりは、20年後にうちの子供たちが社会人となったときに鵜野日出男さんの書評の記事を読ませたいのですが(間違いなく、仕事力や発想力や企画力が身につきます)、そのときに、鵜野日出男さんの書評の記事や今週の本音がWeb上にあって、読めるかどうかです。

20年後に鵜野日出男さんがご存命でかくしゃくと活躍されていることが一番の望みですが、ひょっとすると、鬼籍に入られているかもしれません。 そのときに果たして、鵜野日出男さんの書評の記事や今週の本音がWeb上で、永代供養ならぬ、永代アップ状態で、後世の読者が読めるようになっているかどうか…。 それが心配です。
(その確証があれば、どれだけ有り難いことかと、一愛読者であるわたしは思います。また、うちの子たちが社会人となって興味が湧くときに読めるならうれしいです)

そのため、一部の記事を、当ブログ内に引用し、あるいは格納しておきたいと思っています。

わたしのブログは、うちの子に引き継ぎますから、彼らが維持してくれる限り、ずっと残ります。
孫に引き継がれるようにもするつもりです。

鵜野日出男さんの記事には、値打ちがあります。
今週の本音も、そして書評の記事にも、知識、情報、視点、発送、歴史がいっぱい詰っています。まるで、世界一の金の含有量を誇る菱刈金山のような鉱脈のように感じます。

この記事は、自分用の資料なのですが、何かの拍子にたどり着かれたかたが、鵜野日出男さんの記事に関心を持っていただける機縁となるのではないかと思い、広げています。


どなたか、あるいはどこかの企業が、
「鵜野日出男さんのWebでの記事は、50年100年と責任をもってアップするから安心を」と、宣言をしていただけないものでしょうか。

そうなれば、わたしはうれしいです。
それに、自分でスクラップする手間がかかりませんので助かります。
関連記事
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最新記事
全記事表示

全ての記事を表示する

ご来訪 ありがとうございます

いの 01

Author:いの 01
家づくり ローコストで堅牢、健康 ローコストで健康、子供の将来の社会のために提言
がメインです。   全記事表示

リンク
このブログをリンクに追加する
家づくりの急所
ステキな記事へリンク♪2
子育てマンガ日記 (おちゃずけさん)
今日も元気で♪月~金 連載
 単行本化が間近か?
パパはエンジニアン (金)連載
  おちゃずけさん
■ この簡単なしつけで成績が上がる
小学生のときから勉強好きにさせる法』 灘校を東大合格NO.1にした勝山 正躬
■ 見える学力、見えない学力
子供に学力の土台をしっかりつくる

 単行本 発売中!!お弁当の名作の数々
  『ママからの小さな贈り物』 みさよさん

 愛・祈り・そして音楽 三谷結子さん
■ 『 愛ある仕事 』 2009/02/04
  ※ ブログ内記事: 『 妻の 愛ある仕事
■ 「 やる気スイッチ 」  のんきぃさん

 ちかおばちゃんに訊いてみて
■ 全国学力テスト結果公表 ちかさん
北海道は、教育改革に対する機動性に乏しい。
秋田県の小学校、宿題忘れは居残し
■ トラウマ     おかんさん
なぜ2万円を浮かせるために…
■ ほんとにその通りになっていく
くまたさん ※ 子供を伸ばす話し方   褒める
■ ほんとにその通りになっていく?
あくびさん 言葉の力を使って大きく伸ばす
■ 東大合格生のノートはかならず美しい      morinokaoriさん
※子供を伸ばす上手な話し方 間をおくこと
■ 会社に行こう! おちゃずけさん
男の子がまっすぐ育つために…
■ どんぐり      おちゃずけさん
日本のどんぐり22種。そのまま…
■ 食育から乳がんまで 幕内先生
   あっちゃん   おコメのチカラ
■ ポケモンと辞書引き  あっちゃん
子供を 図鑑 好きにの秘策
■ じゃがいも研究~その3「らせんの秘密♪」 ゆっかりん♪ 「世界を変えた野菜 読本」は食育におすすめ
■ 貧血改善の為に・・。 香織さん
カフェインと貧血の関係上手にコーヒーを
■ すぐれもの     みい☆さん
ブドウ の風味が凝縮し 香り気高く すっきり鋭く甘い白ワイン
■ 剣道帳 夢に向かって1本!みさよさん
■ 『失敗は子育ての宝物』 みいさん
■ ( ̄。 ̄)ホーーォ。  香織さん
■ ハイハイ☆ルーム  ひまちょさん
■ やってしまった~! oriseiさん
■ 親が病気になったとき モウコハンさん
■  初・圧力鍋   みゆめ*さん
■ 道路がスケート場  かたくりさん
■ リンクの貼り方講座 むっちさん
スパイダーウィック家の謎@みかづきさん
「スパイダーウィック家の謎」の なぞの5巻…
■ 世界を動かした塩の物語 ゆらゆらゆるり
■ 世界を動かした塩の物語 morinokaori
鱈(たら) 世界を変えた魚の歴史
   は、食育にぴったり!

■ ノンタン・タータンあそび図鑑マグロさん
絵本「ノンタン がんばるもん」を 読んで
■ 「トトロを楽しもう♪  ゆっかりん♪さん
三びきのやぎのがらがらどん を読んで
■ パプリカのぬか漬け』 ぬかlifeさん
■ とろける生キャラメルの作り方なめっぴ
Special Thanks
サイト紹介: Sun Eternity
→移転改題  3ET
http://annkokunokizinn.blog116.fc2.com/
→移転 http://3et.org/
プログラミング開発日記やゲームレビューやPCの役立ち情報などのさまざまなことを紹介&ネタのサイトでお薦めです。
管理人の(旧annkoku)サンエタさんは共有プラグイン・テンプレートの作者です。
(旧作は作者annkokuで検索)
先日、Firefoxを勧めていただき大感謝。
● IE6をFirefoxへは正解! 早い。安定。お気に入りがタグつきで便利。
■ テンプ(新緑): annkokuさん
   『Nature_Mystery_2culm
■ テンプ(金字桜): Chakoさん
   『beige_sakura-black
   『beige_sakura-white
■ テンプ(清楚な台所): meecoroさん
   『 kitchen01・02 』
   『gohan』 『beach』 『simple02』
■ テンプ(さくら): 杏さん
   『 anzu-tp2_13
読みやすく 美しく 感謝しています。
FC2 便利で使いやすい。