菅 官房長官は午後の記者会見で、北朝鮮が核爆発で発生した電磁波で地上の通信や電力などの機能に障害を与える「電磁パルス攻撃」も可能だとしていることに関連し、万が一の場合に備え、政府全体として対策の検討を急ぐ考えを示しました。
北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、今月3日の核実験に先立って、
核爆発で発生した電磁波で地上の通信や電力などの機能に
障害を与える 「電磁パルス攻撃」も可能だ と伝えました。
これに関連し、菅官房長官は午後の記者会見で「攻撃が行われるといった万が一の事態に備えて、そうした場合でも国民への影響を最小限とするために、政府全体で必要な対策を検討していきたい」と述べました。 そのうえで、菅官房長官は「内閣官房を中心として、防衛省のほか、経済産業省や国土交通省といった重要インフラを所管する省庁などによって対応策を検討する。結論を速やかにまとめるのは当然だが、具体的に表に出すことは避けるだろう」と述べ、対策の検討を急ぐ考えを示しました。 「電磁パルス攻撃」をめぐっては、防衛省が来年度予算案の概算要求で、研究のための費用として14億円を計上しています。
防衛省によると、政府は97年に防護のための基礎研究を開始。
同省は2018年度予算の概算要求にも技術研究などとして14億円を盛り込んだが、現状は「大きな雷程度なら対応できる」(防衛省関係者)にすぎない段階という。防衛装備庁が昨年公表した中長期見通しでも、技術の解明は「おおむね10年後」とされた。 また、EMP攻撃対策を進めるには国民の理解を得る必要があるが、現状では国民の間で脅威との認識は薄い。 一般向けに武力攻撃などへの対応を解説した政府の「国民保護ポータルサイト」にも記述はなく、菅長官は7日の会見で「(国民への)情報提供を考えていきたい」と語った。
太陽の表面で「太陽フレア」と呼ばれる大規模な爆発現象が起きた影響で、8日午後から深夜にかけて電気を帯びた微粒子が地球に到達し、GPSや無線通信などに影響が出るおそれがあるとして、国立研究開発法人の情報通信研究機構が注意を呼びかけています。
太陽表面の爆発現象「太陽フレア」は、太陽の「黒点」と呼ばれる場所で起きている現象で、日本時間の6日午後9時前、大規模なものが発生しました。 情報通信研究機構によりますと、同じ規模の爆発は11年前の2006年に観測されて以降なかったということで、爆発で放出された電気を帯びた粒子が8日の午後3時ごろから9日の午前0時ごろにかけて地球に到達すると見られています。 これによって地球の磁場が乱れて、スマートフォンなどに使われるGPS=位置情報システムに最大で数十メートルほどの誤差が生じたり、無線通信が通じにくくなったりする影響が出るおそれがあるということで機構が注意を呼びかけています。今回の太陽フレアは人体には影響がないということです。
太陽フレアによる影響は過去にも起きていて、
1989年には カナダで大規模な停電が起きたほか、
2003年には 日本の人工衛星が故障したこともあり、
ふだんは見られないような低緯度地域で
オーロラが観測されることもあるということです。
国立天文台 「通常の1000倍の強さのX線」
太陽の活動に詳しい国立天文台の矢治健太郎さんは「今回の太陽フレアでは、通常太陽全体から出る1000倍の強さのX線が出たと見られている。よい影響では、南極や北極でオーロラが見えるが、マイナス面では、GPSの位置情報が狂ったりするおそれが考えられる。1989年3月にはカナダのケベック州で600万世帯の大停電も起きた。ただ、影響が出るまでには、通常2日から3日はかかるので注意喚起によってバックアップ体制をとるなどすることで最近は、大きな停電などは起きていない。太陽フレアに関する情報は研究機関などから発信されているので、注意してあらかじめ対策をとってもらいたい」と話しています。
「あす夕方~真夜中に注意」
太陽活動による地球への影響を予測する「宇宙天気予報」を出している情報通信研究機構の石井守室長は「太陽は今、活動が低下している時期だが、この時期にこれほど大きな爆発が起きたことには正直驚いた。あす夕方から真夜中にかけて短波通信やGPSに影響が出る可能性がある。最近は情報通信技術が非常に高度になっているので、想像していないところで何らかの影響が出る可能性もあり、注意が必要だ」と話しています。
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